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第十二章 遊園地はハプニングだらけ

おばけだぞ~

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 超絶恥ずかしい罰ゲームを終えると、俺とアンナはベンチを出た。

「次はどうしよっか?」
「そうだな……あれなんてどうだ?」
 俺が指差したのは入口にフランケンシュタインとミイラ男の人形が設置してあるお化け屋敷。

 と言っても、かじきかえんは対象年齢が低いため、二人の怪物もちょっと可愛らしいデザイン。

「え……あれに入るの?」
 顔色を変えて絶句するアンナ。
「ん? おもしろうじゃないか?」
「そ、そうだね…タッくんがそう言うならアンナ、がんばる!」
 両手で拳を作り、何かを決意する。
 そんなに覚悟決める必要ある? あーた、元々ヤンキーだったろ?
 もっと気張れよ。

「大事ないか?」
「だ、だいじょび!」
 今日日聞かないセリフだね。

 俺とアンナはお化け屋敷へと入っていた。
 外から見ても建物は小さく。中に入ると更に狭い入口があった。
 歩いて回るものばかりだと思っていたが、室内には二人乗りのコースターがあった。

「かじきお化け屋敷へようこそ! どうぞお乗りください!」
 ハロウィンで仮装しました! ってレベルのチープなミイラ男の仮面を頭につけた女性スタッフが俺たちを手招く。
 俺とアンナはそれに従い、座席に座るとシートベルトを閉めた。
 なんだろう……絶叫マシンなの? これ。

 スタッフが機械をコントロールするブースに入るとアナウンスが流れる。
「ほっほっほっ……若く可愛いカップルさん。よくぞ参られた」
 誰がカップルじゃ、ボケェ!

「さあ……深淵の闇に飲み込まれるがいい!」
 え? 中二病屋敷だったの?
「ひぃっ!」
 思わず悲鳴をあげるアンナ。
 今ので怖いか?
 俺は痛々しく感じたけど。

 ガタンとコースターがゆっくり動き出す。

 黒いカーテンが開かれ、暗い奥へと進む。
 お化け屋敷と言えば、自分で歩いて回るのがドキドキして楽しいものだが、これは自動的に進むから、まるで介護されているようで、腹が立つ。
 俺のテンションはだだ滑り。

「まあこんなもんか」
 かじきかえんだもんな。
 マジ恐怖だとおこちゃまが二度と来れなくなるトラウマを植え付けられる危険性がある。

 入ってもなんのことはない。
 ドラキュラの人形が口からプシューと白い息を吐きだして「食べちゃうぞ~!」
 と身体だけ前のめりに動く。
 けど、俺たちのコースターまでは届かない。
 超遠くない?
 
「いやあああ!」
 その時だった。
 アンナは血相を変えて俺に抱き着く。
「あ、アンナ?」
 なぜだろう……ないはずのふくらみが俺の肘にあたっている。
 微妙なプニプニ感。
 絶壁じゃない……これは未成熟。
 故に微乳だ!

「こ、こわい! 助けてぇ、タッくん!」
「は?」
 助けるも何もドラキュラさんは俺たちのところまで手が届かないよ?
 哀れな怪物くんじゃん。

「アンナ、こういうのダメなの! だから今はこうさせて!」
 必死に目をつぶって、視界を強制的にシャットアウトしている。
 そして、俺の左腕にグイグイと胸を押しつける。
 まあ正確にはしがみついているに過ぎないのだが……。
「わ、わかった……」
 役得!
 俺は別の意味でドキドキしていた。
 ああ、お化け屋敷最高!

「ぐわああ! 狼マンだぞぉぉぉ!」
 所々、ペンキが剥がれた狼男が左右にグルグルと動く。
 ただそれだけ。見ていて逆に可愛く思える。
 シュールだな。

「きゃあああ!」
 アンナの力が強まる。
 そして、俺はアンナの微乳を楽しむ。
「アンナ、大丈夫か?」
「ううん! ダメッ、怖い!」
 それでもヤンキーかよ?

 半周終えたところで、天井からプシュー! と白くて冷たいガスが俺たちを襲う。
 あー、気持ちいい。ちょっと暑かったからちょうどええわ。

「いやあああ! 気持ち悪い! なにこれぇ!」
 いちいち反応良いよな、アンナちゃん。
「ただのガスだろ」
「絶対に違うよ! おばけの息だよぉ!」
 へぇ、まだおばけ信じているんだ。可愛いじゃん。

 その後も似たようなシュールかつキュートなおばけ達が俺たちを出迎えてくれた。
 かなり古い人形みたいでけっこうボロボロなのが多かった。
 なんか可哀そうになって涙が出そう。
 このおばけたちも苦労したんだな……。

 と俺が哀愁を感じているのを知ってか知らずか。
 アンナは先ほどから一切目を開かず、悲鳴を上げている。
「いやあああ! 来ないでぇ!」
 来ないよ、ていうか、俺たちに近づけない仕様だよ。

 そうこうしているうちに、コースターは出口に到着。
 眩しい日差しがお出迎え。

 先ほどのスタッフがアナウンスを流す。
「どうだった~? 怖かったかい、お嬢ちゃん」
 ちょっと楽しそうだな、スタッフ~。
「はぁはぁ……」
 息切れするアンナ。
 そんなに疲れたの?

「すまない、アンナ。怖がらせたみたいだな」
「ううん……取り乱してごめんね」
 ちょっと涙目じゃん。
 アンナ=ミハイルの弱点、ゲットだぜ!

 俺とアンナはお化け屋敷をあとにした。

 さすがのアンナもかなり疲弊していたようなので、次は軽めの遊具を選んだ。
 その名も『スーパーチェアー』
 実にシンプルな遊具で、中心に高い柱があり、円を描くようにチェーンで繋がれたイスがたくさんある。
 要はこれに乗って、グルグル回るだけというとこだ。
 ただ少し高く上昇するが。

「これなら怖くないだろ?」
「そうだね☆ 楽しそう!」
 アンナの気分も上々。

 俺たちは早速、イスに乗り込む。
 ちょうど、二席ずつ並んでいて、仲良く隣りに座った。

 スタッフの注意がスピーカーから流れる。
「動き出すと大変危険ですので、暴れたり、前の席を蹴ったりしないでください。しっかりチェーンを手に持ちお楽しみください」
 言い終わるとブザーが鳴り、ガクンと動き出す。
 ゆっくりイスは回り出し、時計回りに回転を始める。
 自然と地面から足が上がる。

「うわぁ、気持ちいい☆」
 爽やかな風を感じて、気持ちよさそうにするアンナ。
 俺も笑っているアンナを見て、満足だった。
「ああ、確かにこれは気持ちいいな」
 互いに見つめあって、喜びを分かち合う。
 
「この時が一生、続けばいいのに……」

 アンナが聞こえるか聞こえないかぐらいの小声で呟いた。

「え!?」
 俺が聞き返すとアンナは「なんでもない」と笑っていた。

「それではただいまから更に高く上がりますので、お気をつけて!」
 スタッフの声がスピーカーから流れると共に更に回転が強まり、身体は斜めになるぐらい上昇する。
 チェーンも回転しだし、俺とアンナは互いにお見合いするような形になった。
「ははは! タッくんが見える!」
「そうだな!」


 と俺たちが楽しんでいると下が何やら騒がしい。
「なんだ?」
 遊具下にはたくさんのギャラリーができていた。
 主に男。
 スマホを構えて、こちらを見上げている。

「へへへ、パンチラゲット!」
「パンモロだろぉ~ これだからスーパーチェアーはやめられないぜ!」
「ぼ、ぼかぁ、ブルマの方が良かったなぁ」
 ファッ!

 よく見るとアンナのスカートが強い風でめくれていた。
 それが下から丸見えということなのだ。
 まずい!
 いろんな意味で危険だ!
 モッコリパンティがバレては何かとヤバイ!

「アンナ! スカートがめくれているぞ!」
「え?」
 アンナはキョトンとしていて俺の慌てぶりに驚く。
「スカート! パンティだよ!」
「パン……いやあああ!」
 やっと気がつくと彼女は必死にスカートを抑えて、パンモロを回避した。
 まあ中身が男だからスカートの危険性に気がつかなかったんだろうな。

「んだよ! 隣りのやつ邪魔しやがって!」
「クッソカワイイぜ、あの子」
「ブルマ、ブルマ、ブルマ……」
 お前ら全員クズだな!

 その後アンナは顔を真っ赤にさせて、終始黙り込んでいた。
 せっかく楽しんでいたのに可哀そうだな。

 スーパーチェアーは静かに回転を止めた。

 イスから降りるとアンナは地面を見つめたまま、黙って出口へ向かう。
 俺は慌てて彼女のあとを追った。

「アンナ、大変だったな……」
 振り返った彼女は涙を流していた。
「ひっく……いろんな男の人に見られちゃったよ……」
 男同士だからよくね?

「ま、まあ男という生き物はそんなヤツが多いからな」
 かくいう俺もな!
「タッくんにしか見られたくなかった……」
「え?」
「アンナってまた汚れちゃった?」
 そんなこと、俺に聞かれましても。

 修正するには俺がスカートの中を確認すればいいのでしょうか?
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