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第七章 パニックパニック!
雪隠休憩
しおりを挟む2時限目は、英語の授業。
この教師はけっこうまともな方で、勉強してないと出席カードをくれない。
さすがの俺もノートPCはしまい、真面目に授業を受けた。
まあリア充グループのミハイル、千鳥 力、花鶴ここあはグースカ寝ていた。
チャイムが鳴り、教師が去る。
尿意を感じた俺は、お花を摘みにいざ、お花畑へ!
廊下を歩いていると、制服組のグループが群れをなして行く手を阻む。
邪魔だわ~
この肉の壁どもが!
「悪いが通してくれないか?」
語気が強まる。
一人の男子が振り返って、俺の顔を覗き込む。
相手の身長は180センチ以上ありそうだ。
がたいもよく、筋肉の鎧でフル装備。
たぶん、部活のために日曜日だというのに、わざわざ登校する脳筋野郎だな。
「あ? なんか用?」
いきなりケンカ腰だよ。
制服組だからって威圧的なのはよくないと思うぞ、わしは。
「邪魔になっていると言っているんだ」
「あのさ、お前らこそ、俺たち三ツ橋高校の邪魔なんだわ」
両腕を組むと、俺の可愛らしいお花摘みを止めに入るガチムチ野郎。
気がつくと残りの数人も、俺に睨みをきかせ、何か言いたげだ。
「そうだよ! お前ら一ツ橋高校は、俺らの面汚しだよ」
なに便乗してんだ。
「俺らの校舎だべ? おめー達は遠回りでいくべ?」
どこの出身ですか?
「あのな……お前ら。学費は誰が払っている?」
俺は社会人兼高校生だぞ、えっへん。
「「「?」」」
3人共、顔を見つめ合わせると目を丸くしている。
数秒の沈黙のあと、腹を抱えて笑う。
「はっははは! なにいってんだこいつ。親が払うだろ、フツー」
体格のいいリーダー的存在のやつは、俺に指までさして笑う。
失礼なやつだ。
人に指をさしていいのは、某裁判のゲームのときだけだぞ。
「お前……いい根性しているな」
キレるスイッチが入ってしまった。
「あぁんっ?」
そちら様も同様のようで。
「俺の名は新宮 琢人。お前は?」
「タクトだ? オタクみてー」
なにこれ? 毎回、オタクいじりされるの?
名前でウケはとりたくないのに、ゲラゲラ笑ってしゃる。
「あー、ウケるわ。俺の名前は福間 相馬だぜ」
ニカッと笑う。
悔しいが清潔感あるイケメンだな。
身長も180センチ以上で体格もいい。
肌が少し日焼けしているし、活発そうな男子……ってイメージ。
オラってはいるが、女子ウケいいんだろうな、チキショウ!
「福間 相馬か……認識した。改めて言おう。そこをどけ。俺はこの一ツ橋高校の生徒であり、学費は自ら払っているんだ。文句があるなら、痴女教師の宗像先生に言え!」
「誰だ、そいつ?」
え? 知らないの?
あの変態教師を、環境型セクハラな生き物を。
「宗像 蘭先生だ」
「ハンッ、ババアくせー名前だな」
な、なんてことを! 俺は知らんぞぉ~
「何を言っている? 宗像先生はまだ20代だぞ」
一応、フォローしておく。
「アラサーじゃね? 四捨五入したら30代だろ? ババアじゃん、BBA」
NO~!
「あっ、センパイ!」
甲高い声が聞こえた。
制服組の男子もその声を辿る。
福間たちの背後に、一人のJKが立っていた。
「こんなとこにいたなんて、奇遇ですね♪」
笑顔で駆け寄るJK。
なんだ福間の知り合いか。
「おう、奇遇だな」
嬉しそうに笑う福間。
俺をチラ見して、勝ち誇った顔をしている。
ハイハイ、リア充。爆ぜろ。
「この前は、よくも私の裸を見てくれましたね!?」
福間たちを通り過ぎ、俺の胸を人差し指で突っつくJK。
よく見れば、ボーイッシュなショートカットに校則違反のミニスカ。
こいつは……。
「お前、赤坂 ひなたか?」
「あ、新宮センパイ。また私のこと忘れてたでしょ? ひどーい」
ミハイルくんとアンナちゃんでお腹いっぱいで、あなたという存在を消去していました。
「す、すまん。赤坂……なんか用か?」
「この前のこと、私、忘れませんから!」
「なにを顔を真っ赤にしているんだ? 熱でもあるのか?」
そういうと、胸の前で拳をつくり、顔を更に赤くする。
「だ、だって私のパ、パ、パ……」
「パンティーだろ?」
ダンッ!
「いってぇ!」
また俺の上履きを汚したな! 暴力JKめ!
「なにをする、赤坂!」
「セクハラ先輩! エッチ! ヘンタイ!」
言葉責めって嫌いじゃありません。
「おい、赤坂。こいつと知り合いか?」
なにやら不機嫌そうな顔で、こっちを眺める福間。
「あ、福間先輩。いたんですか?」
それ一番言っちゃダメなやつ。
「いたよ……ところで、赤坂。今日は部活か?」
「はい、ですよ」
「なあ……ちょっと、いいか?」
「いいですけど?」
赤坂はきょとんした顔で福間を見上げる。
福間が黙って、俺に首で「早くいけ」とサインを出す。
なんじゃ? 口説くんけ?
しゃあないのう、じゃあわしは雪隠休憩じゃ。
「あっ、新宮先輩! 今度あったら責任とってくださいよ!」
「なにをだよ……」
ため息をついて、俺はその場を離れようとした。
その時だった。
「なあ赤坂、お前……あのオタクに裸を見られたのか?」
そんな名前じゃねぇ!
「え!? べ、別に。福間先輩には関係ないでしょ……」
歯切れが悪いぞ、赤坂。
まるで俺が盗撮犯みたいじゃないか。
あれは事故だったろ。
「関係ないことないだろ! 俺の可愛い後輩に……」
可愛いって告白に近いじゃん、バカじゃん。
不穏な空気が漂う。
俺はその場から去ろうと足を進める。
「だから一ツ橋は嫌いなんだ。生徒もバカ。教師もただのババア」
聞き捨てならなかった。
だが、今日の俺は急いでいた。小説の作成も控えている。
くだらない、相手にしてやるべき存在でもない。
リア充の戯言だと言いながらも、歯を食いしばった。
「だーれが、ババアだって?」
肩まで伸びた髪が、窓から流れる風と共に揺れる。
鋭い眼つきは獲物を狩る百獣の王のそれと同じだ。
「え? だ、誰だ。あんた?」
その女は身長180センチもある福間より背が低いのに、巨人のように感じる。
「私は一ツ橋のババアでBBAの宗像 蘭ちゃんだぁ~」
二つの大きなメロンがブルンブルン! キモッ!
不敵な笑みを浮かべている。
こ、こえええ!
聞こえてたんだ。
「ひ、一ツ橋の先生なら、関係ないっしょ?」
「大ありだぁ~ いいだろう、この機会に、みっちりと女性のすばらしさを教えてやる」
そう言うと宗像先生は、福間の襟元を掴み引きずって連れ去る。
「や、やめてぇぇぇ!」
「うるさい! 黙って私についてこい! 誰が30代はババアだ? 女は死ぬまで女だ、コノヤロー! 校舎でイチャイチャしやがって、クソ野郎が!」
「「「……」」」
沈黙で福間先輩を見捨てる赤坂とモブ男子ども。
「南無阿弥陀仏」
俺は手を合わせて、福間先輩が天国にいけるように祈った。
みんなを救ってくれた、それが福間 相馬!
忘れないぜ、この恩を。
この後、めちゃくちゃお花を摘んだ。
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