24 / 490
第四章 オタク訪問
ミハイルVS現役JC
しおりを挟む『次は席内駅~ 席内駅~』
「あっ……」
ミハイルが困った顔で俺を見つめる。
「どうした?」
「オレの駅……」
「そうか。じゃあまた今度な」
「う、うん……」
ドアから降りる金色のミハイルこと、ショーパン男子の白い肌は夕焼けと共にオレンジがかる。
写真撮っときたい。
「じゃ、じゃあな! タクト……」
「おう」
そう手を振るミハイル。
なんで、そんな今にも泣きそうな顔で俺を見る?
そんなに俺ん家でポ●モンでもしたかったか?
プシューッ! と自動ドアの音が鳴る。
これで彼ともしばしのお別れだな……。
ん? なぜか胸がざわつく……この気持ちはさびしいのか?
俺は……。
「やだっ!!!」
その小さな細い手で軽々とドアは開く。
「ミハイル?」
思わず下の名前でよんでしまった。
「オレ、タクトに……」
「俺に?」
「べ、べんきょう習うんだ!」
「は?」
ギャラリーから歓声があがる。
「なにあの子? 超積極的! カワイイ!」
「うんうん。別れが惜しいんだよね……すっごくわかる いいな~」
と騒ぐのは、やはり三ツ橋高校の制服組JKか。
「お熱いよね~ 受けか攻めか、知らんけど、相棒は迎えにいけよ! って感じじゃね?」
「それな! ショタコンなのにマジ空気読めねーわ」
いや、なにが?
勝手にショタコン扱いしないでください。
『ご乗車の方はお早めにお入りください!』
車掌さんめっさ怒ってはるやん……。
「古賀! 早く戻れ! 他の乗客に迷惑だ」
「あっ……うん☆」
目を輝かせて、俺の元へと戻るヤンキー少年。
なにこの子、超カワイイんですけど。
抱きしめたいぜ、ちくしょう。
「わ、わりぃ……」
「俺は構わんぞ?」
「そ、そっか! なら……タクトん家に行ってもいいか?」
「何故そうなる?」
「だってべんきょう教えてくれるんだろ?」
「あ~、別にええけど?」
「約束な☆」
ニコニコ笑いながら、俺にピッタリとくっつくミハイル。
やばいよ~ いろんな意味で……。
元気になっちゃいそう!
「なにあの二人? もう事後じゃね?」
「うんうん、あの子ゾッコンじゃん! このあとむちゃくちゃ……」
しねーから!
お前ら腐ったやつらの席ねーから!
ガタゴト揺れること数分、席内駅から3駅ほど通過すると、俺の故郷『真島駅』が見えてきた。
真島とは、福岡市の東部にある住宅街だ。
それもギリギリ福岡市に入る地域で、真島駅も福岡市と福岡県の境目にある。
かなり中途半端な福岡市民といえよう。
だが俺はそんな真島という街が大好きだ。
ここで生を受け、ここで育ち、今の俺がいる。
感謝しかない。
『次は真島駅~!』
「おい、古賀おりるぞ?」
「……」
「古賀?」
スゥスゥと可愛らしい寝息を立てて、お昼寝中でちゅか?
電車内でお昼寝とは、お行儀がなってませんな。
チューしてみよっかな?
「ねぇねぇ、そろそろ攻めがチャンスじゃね?」
「いけ! いっちまえ!」
お前らの存在が『イキスギィ~』なんだよ。
「古賀、起きろ」
軽く肩に触れると、本当に華奢な骨格であることが確認できた。
こんな体格でどうやったらあんな馬鹿力が出せるんだ?
「う、う……ん、タクト?」
「真島駅だ、降りるぞ」
「うん☆」
ミハイルの手をとり、気がつけば真島駅のホームにおりていた。
その間、手は離さなかった。
こいつときたらまた何をしでかすか、わからんしな。
と、いうのは言い訳かもしらんが。
「チッ! あの攻めなってねーわ」
「こんのクッソチキンが!」
制服組も真島駅だったのか……。
去り際になんつーおみやげ捨てていきやがる?
真島は、腐りはてた街に成り下がってしまったのかもしらんな。
「タクト……手」
「ん?」
まだ手つないだままだった……てへぺろ♪
「悪い」
「ううん……」
なぜ顔を赤らめる?
今日ってそんなに暑かったか。
真島駅から出ると、商店街へ向かう。
駅近辺にはさまざまな居酒屋が並ぶ。
きったない個人店から大手チェーン店。ほかにもさまざまな店舗が細々ある。
初見の方々は、迷路のように感じるかもしらんな。
「まじまだ~ ひっさしぶり~☆」
背伸びして空気を吸い込むミハイル。
「ただの真島だがな」
「なんか前に来たときより……だいぶ店変わった?」
「ああ、ここも時代でな。大手チェーン店に殺された街だ」
「そ、そうなのか!?」
「奴らは怖いぞ? くせの強いレンタルビデオショップ、旨いがクッソ固いパン屋、マダムたちが嗜む衣料店、やっすいのに尋常ないぐらいのスキルを持つ理髪店……全てが奪われた」
限りなく実話だ。
「それって……ただ単に売り上げがわるかったとかじゃないのか?」
クッ! ミハイルのくせして、鋭いじゃないか!
「だが未だに残っている店もたくさんあるぞ!」
手のひらを掲げる。
『真島商店街』
ボロボロに錆びた門構えがある。
車一台通るのがやっとな道路に、びっしりと店が並ぶ。
主に居酒屋と不動産屋が多く、他には洋菓子店や和菓子店などがある。
メインストリートを歩きだすと、ミハイルは上下左右を丹念に見つめる。
いや、ただの廃れた商店街なんだが?
なんかちょっと地元民的に恥ずかしいわ。
「おもしろいな、まじまって!」
「そうか?」
だが、言われると心地よいものだ。
「タクくん~!」
甲高い声が響き渡る。
「この声は……」
嫌な予感がした。
前を見れば、セーラー服のツインテールが全速力で走ってくる。
制服を着用しているくせに、宗像先生に負けず劣らずなメロンがバインバインと左右に揺れている。
キンモッ!
「タクくん! おっかえり~」
甘えた声を出すと思いっきり、抱きしめられる。
巨大すぎる乳の谷間に俺は沈められた……。
息ができない、ここは深海か!?
「なんだ! おまえ! タクトになにすんだよ!?」
「およ? 私のことですか?」
「ふごごご……」
ジタバタすればするほど、少女のアームロック……じゃなかったハグが強まる。
「はなせ! タクトが苦しそうだろ!」
見えんがもっと言ってやってくれ、ミハイル。
乳が気持ち悪いんだよ、鳥肌たってきた。
「ええ? どうしてです? 『かなで』はいつものハグで遊んでいるだけですけど?」
「タクトで遊ぶな! いいから離せ!」
ミハイルが力づくで救出してくれた。
やはり伝説のヤンキー、金色のミハイルなだけはある。
この『バカ巨乳』から力で勝つとは。
「あっ……タクくん……」
気がつくと、俺の頭はミハイルの薄っぺらい胸に抱えられていた。
なにこれ? 超気持ちいい!
あ~ ずっとこのままでいたい。
「タクト、ダチなのか? あの子?」
「いいや。全く持って知らんな」
「ヒッド~い! 毎晩いつも同じ布団で寝ている関係でしょ?」
オエッ!
「ね、寝ているだと! お、お前……ちゅ、ちゅー学生に何をしているんだ!?」
急に投げ捨てられた俺氏。
「なにを勘違いしているんだ、古賀」
「だって……この子が」
「ふむ、自己紹介しろ。かなで」
なんだよ……もう少し絶壁海峡を味わいたかったのに!
「ハイ、おにーさま♪」
なーにが兄さまだ!
スカートの裾を左右に広げると、姫様のように頭を軽く下げる。
「私、新宮 かなでと申します。よしなに」
「え……どういうこと?」
「つまり俺の妹だ」
残念なことにな。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
寝込みを襲われて、快楽堕ち♡
すももゆず
BL
R18短編です。
とある夜に目を覚ましたら、寝込みを襲われていた。
2022.10.2 追記
完結の予定でしたが、続きができたので公開しました。たくさん読んでいただいてありがとうございます。
更新頻度は遅めですが、もう少し続けられそうなので連載中のままにさせていただきます。
※pixiv、ムーンライトノベルズ(1話のみ)でも公開中。
魔王(♂)に転生したので魔王(♀)に性転換したら何故か部下に押し倒された
クリーム
恋愛
女学生がファンタジー世界の魔王(♂)に転生(憑依)してしまったので、魔法で性転換したら、部下(♀)まで男体化してついでに唇まで奪われてしまったという話。
ツンデレ一途悪魔(女→男)×天然無表情魔王(女→男→女)
初っぱなで性転換してるのでほぼ普通の男女恋愛ものです。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
完璧な姉とその親友より劣る私は、出来損ないだと蔑まれた世界に長居し過ぎたようです。運命の人との幸せは、来世に持ち越します
珠宮さくら
恋愛
エウフェシア・メルクーリは誰もが羨む世界で、もっとも人々が羨む国で公爵令嬢として生きていた。そこにいるのは完璧な令嬢と言われる姉とその親友と見知った人たちばかり。
そこでエウフェシアは、ずっと出来損ないと蔑まれながら生きていた。心優しい完璧な姉だけが、唯一の味方だと思っていたが、それも違っていたようだ。
それどころか。その世界が、そもそも現実とは違うことをエウフェシアはすっかり忘れてしまったまま、何度もやり直し続けることになった。
さらに人の歪んだ想いに巻き込まれて、疲れ切ってしまって、運命の人との幸せな人生を満喫するなんて考えられなくなってしまい、先送りにすることを選択する日が来るとは思いもしなかった。
寵妃にすべてを奪われ下賜された先は毒薔薇の貴公子でしたが、何故か愛されてしまいました!
ユウ
恋愛
エリーゼは、王妃になる予定だった。
故郷を失い後ろ盾を失くし代わりに王妃として選ばれたのは後から妃候補となった侯爵令嬢だった。
聖女の資格を持ち国に貢献した暁に正妃となりエリーゼは側妃となったが夜の渡りもなく周りから冷遇される日々を送っていた。
日陰の日々を送る中、婚約者であり唯一の理解者にも忘れされる中。
長らく魔物の侵略を受けていた東の大陸を取り戻したことでとある騎士に妃を下賜することとなったのだが、選ばれたのはエリーゼだった。
下賜される相手は冷たく人をよせつけず、猛毒を持つ薔薇の貴公子と呼ばれる男だった。
用済みになったエリーゼは殺されるのかと思ったが…
「私は貴女以外に妻を持つ気はない」
愛されることはないと思っていたのに何故か甘い言葉に甘い笑顔を向けられてしまう。
その頃、すべてを手に入れた側妃から正妃となった聖女に不幸が訪れるのだった。
完結 お飾り正妃も都合よい側妃もお断りします!
音爽(ネソウ)
恋愛
正妃サハンナと側妃アルメス、互いに支え合い国の為に働く……なんて言うのは幻想だ。
頭の緩い正妃は遊び惚け、側妃にばかりしわ寄せがくる。
都合良く働くだけの側妃は疑問をもちはじめた、だがやがて心労が重なり不慮の事故で儚くなった。
「ああどうして私は幸せになれなかったのだろう」
断末魔に涙した彼女は……
王妃の鑑
ごろごろみかん。
恋愛
王妃ネアモネは婚姻した夜に夫からお前のことは愛していないと告げられ、失意のうちに命を失った。そして気づけば時間は巻きもどる。
これはネアモネが幸せをつかもうと必死に生きる話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる