上 下
8 / 490
第二章 壊れたラジオ

夢見る少女☆ じゃなかった少年。

しおりを挟む

「ね~え、タッくん……タッくんてば……」
 目の前には一人の少女がいる。
「たっくん、起きてよ☆」
「ああ、ミーちゃんか……おはよう」
 俺がミーちゃんと呼ぶ彼女は緑の瞳を輝かせ、金色の髪はポニーテールにして大きな赤いリボンでまとめている。
 しかも、かわいらしいフリルのエプロンをかけている。
 これで猫耳つければ、最高かよ。

「おはよ☆ 朝ご飯できたよ?」
「もうそんな時間か」
「顔を洗っておいでよ。私、リビングで待ってるね☆」
 そう言うと彼女は俺の頬に軽くキスをする。

「お、おう……」
 俺は戸惑いながらも、言われるがままに歯磨きと顔洗いを済ませ、リビングに着く。

「うん! スッキリしたね☆ 今日もタッくんはタッくんだね☆」
「そういう君はミーちゃんだな」
「「ふふふ」」
 見つめあって互いを確認するとイスに座る。

「今日もあっついね~」
 そう言って彼女はエプロンを隣りのイスにかけると、胸元があいたキャミソール姿になった。ちなみにイチゴ柄。
 パタパタと襟元で仰ぐ。その度に透き通った美しい白肌が垣間見える。
 もう少しで胸が見えそうだ。
「……」
 俺が呆然と彼女を見つめていると、「タッくん、早く食べないとお仕事遅れちゃうよ」と朝食を早くとるように促される。

「あ、いただきます」
「どうぞ☆」
 テーブルに並べられたのはホットサンド、サラダ。コーヒー。
 ホットサンドに手をつけると、俺好みの卵の味付けだということがわかる。甘いやつ。

「おいしい?」
 彼女は俺のことを愛おしそうに両手で頬づいて眺めている。

「ミーちゃんは食べないのか?」
「私はあとがいい」
「なんで?」
「だって、タッくん。今からお仕事でしょ? 帰ってくるまで長いこと会えないじゃん、寂しいから目に焼き付けときたいの」
「そ、そうか……」

「ほら……ケチャップついてるよ」
 ミーちゃんは俺の口元からケチャップを細い指で拭う。
 それを自身の桜色の唇に運んだ。
「間接キス☆ って、もうこんなのじゃときめかない?」
「……」

「ねぇ、タッくん……私のこと、今でも愛している?」
「もちろん……だよ、君ほどかわいい子はこの世で見たことがない」
「もう!」
 そう言うと彼女は頬をふくらませた。
「なんだ?」
「なんだじゃないでしょ? 私の質問に答えてない! もう一度聞くよ? 私のこと愛している?」
 むくれる彼女に俺は苦笑する。
「すまない……言い忘れていたよ。俺はミーちゃんを世界で一番愛している」
「嬉しい☆」
 そう言うと彼女はテーブル越しに俺の唇を奪った。
「ん……」



「だぁぁぁぁぁ!」
 なんだ今のクソみたいな夢は!?
 俺がなぜ、あんなやつと……。
 あいつは……あいつは、まごうことなきヤンキーで正真正銘の男の子!
 古賀こが ミハイル。
 俺は「やりますねぇ~」の動画を見すぎた影響が出たのか? と自身を疑った。


 スマホを見ると午前3時を示していた。
 もう少しでアラームが鳴るところだ。
「仕事、行くか……」
 俺はアラームを解除すると、簡単に着替えを済ませ、家族を起こさないように静かに家を出た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

女子に虐められる僕

大衆娯楽
主人公が女子校生にいじめられて堕ちていく話です。恥辱、強制女装、女性からのいじめなど好きな方どうぞ

トリビアのイズミ 「小学6年生の男児は、女児用のパンツをはくと100%勃起する」

九拾七
大衆娯楽
かつての人気テレビ番組をオマージュしたものです。 現代ではありえない倫理観なのでご注意を。

転職してOLになった僕。

大衆娯楽
転職した会社で無理矢理女装させられてる男の子の話しです。 強制女装、恥辱、女性からの責めが好きな方にオススメです!

女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男

湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。 何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。

二十歳の同人女子と十七歳の女装男子

クナリ
恋愛
同人誌でマンガを描いている三織は、二十歳の大学生。 ある日、一人の男子高校生と出会い、危ないところを助けられる。 後日、友人と一緒にある女装コンカフェに行ってみると、そこにはあの男子高校生、壮弥が女装して働いていた。 しかも彼は、三織のマンガのファンだという。 思わぬ出会いをした同人作家と読者だったが、三織を大切にしながら世話を焼いてくれる壮弥に、「女装していても男は男。安全のため、警戒を緩めてはいけません」と忠告されつつも、だんだんと三織は心を惹かれていく。 自己評価の低い三織は、壮弥の迷惑になるからと具体的な行動まではなかなか起こせずにいたが、やがて二人の関係はただの作家と読者のものとは変わっていった。

入社した会社でぼくがあたしになる話

青春
父の残した借金返済のためがむしゃらに就活をした結果入社した会社で主人公[山名ユウ]が徐々に変わっていく物語

処理中です...