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第9話 家庭教師。深まる疑惑。
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紹介されたのは騎士団長の三女で、4歳になる女の子だった。
名前はミア。
少し内気な子だった。
最初は逃げ回るように距離を置かれていたが、根気強く笑顔で接しているうちにそんなこともなくなった。
「先生が来てくださる日を、あの子はいつも楽しみにしているんですよ」
隣の部屋では、ミアが課題に取り組んでいる。
しばらく待っている間、ミアの母テアからお茶のお誘いを受けた。
「少しでもお役に立っているならば、こんな嬉しいことはありません」
微笑みながら、お茶をいただいた。
「そういえば、開拓の話を聞かれました?」
テアが言う開拓とは、この国の西への開拓のことだ。
この国の西部はまだまだ未知数であり、年に数回大がかりな調査部隊を送り込んでいる。
新種の生物や、薬草、鉱物資源などの発見が目的である。
「発見されたのは、結構大きなルビー鉱山だったらしいですわ」
「そうなんですか。すごいですね」
「今回配られる特別報酬で、ミアを海辺の街に連れて行こうかと主人と話をしてるんです。
あの子は、まだ海をみたことがないので・・・」
アリシアは、課題としてミアに”初めてみた海”の感想を書いてもらうのもいいかもしれないと考えた。
「先生も、旦那様と旅行などには?」
「いえ、恥ずかしながらそんな余裕もなくて・・・」
「でも、今回の特別報酬はいつもより多いと思いますよ?」
(?)
アリシアの頭の隅に、何かがひっかかった。
「そうなんですね」
「子どもがいるのも良いですけど、いないうちに二人で楽しむのも素敵だと思いますわ」
テアの言葉に微笑みながら、アリシアは引っかかりについて考えていた。
たどり着いた考えが、黒いシミとなって胸の内に広がっていく。
(特別手当があったなんて聞いていないわ・・・)
テアの話からして、今までも何度かあったのではないだろうか。
「私はよくわからないのですけど、騎士団と宮廷勤めでは、特別手当に差があるのでしょうか?」
アリシアが首をかしげる。
「どうでしょうか?
幼馴染が給与事務に携わっているのですけど・・・最低でも毎回お給料の1~2か月分と聞いてますわ」
「そうなんですね。私は詳しく知らなくて・・・聞いてもよろしかったのですか?」
「それは普通に公開されている情報ですわ。大丈夫ですよ」
「よかった、安心しました」
そこまでで、ミアがアリシアを呼びにきた。
お茶の時間は終わり、アリシアはミアの元に戻った。
「先生、具合悪いの?」
「いいえ、大丈夫よ。」
ミアが心配そうにアリシアを見る。
そう答えながらも、胸の内側に取れない硬いしこりのようなものをアリシアは感じていた。
名前はミア。
少し内気な子だった。
最初は逃げ回るように距離を置かれていたが、根気強く笑顔で接しているうちにそんなこともなくなった。
「先生が来てくださる日を、あの子はいつも楽しみにしているんですよ」
隣の部屋では、ミアが課題に取り組んでいる。
しばらく待っている間、ミアの母テアからお茶のお誘いを受けた。
「少しでもお役に立っているならば、こんな嬉しいことはありません」
微笑みながら、お茶をいただいた。
「そういえば、開拓の話を聞かれました?」
テアが言う開拓とは、この国の西への開拓のことだ。
この国の西部はまだまだ未知数であり、年に数回大がかりな調査部隊を送り込んでいる。
新種の生物や、薬草、鉱物資源などの発見が目的である。
「発見されたのは、結構大きなルビー鉱山だったらしいですわ」
「そうなんですか。すごいですね」
「今回配られる特別報酬で、ミアを海辺の街に連れて行こうかと主人と話をしてるんです。
あの子は、まだ海をみたことがないので・・・」
アリシアは、課題としてミアに”初めてみた海”の感想を書いてもらうのもいいかもしれないと考えた。
「先生も、旦那様と旅行などには?」
「いえ、恥ずかしながらそんな余裕もなくて・・・」
「でも、今回の特別報酬はいつもより多いと思いますよ?」
(?)
アリシアの頭の隅に、何かがひっかかった。
「そうなんですね」
「子どもがいるのも良いですけど、いないうちに二人で楽しむのも素敵だと思いますわ」
テアの言葉に微笑みながら、アリシアは引っかかりについて考えていた。
たどり着いた考えが、黒いシミとなって胸の内に広がっていく。
(特別手当があったなんて聞いていないわ・・・)
テアの話からして、今までも何度かあったのではないだろうか。
「私はよくわからないのですけど、騎士団と宮廷勤めでは、特別手当に差があるのでしょうか?」
アリシアが首をかしげる。
「どうでしょうか?
幼馴染が給与事務に携わっているのですけど・・・最低でも毎回お給料の1~2か月分と聞いてますわ」
「そうなんですね。私は詳しく知らなくて・・・聞いてもよろしかったのですか?」
「それは普通に公開されている情報ですわ。大丈夫ですよ」
「よかった、安心しました」
そこまでで、ミアがアリシアを呼びにきた。
お茶の時間は終わり、アリシアはミアの元に戻った。
「先生、具合悪いの?」
「いいえ、大丈夫よ。」
ミアが心配そうにアリシアを見る。
そう答えながらも、胸の内側に取れない硬いしこりのようなものをアリシアは感じていた。
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