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21 積み。その先。

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セシル嬢を傷つけることが、どうしてサフィーのためにつながるの?

意味がわからない。

「私は復帰して間もないセシル嬢が、社交界や学園になじめるよう、学園長から頼まれてサポートしていた。
婚約者をさしおいて、何度もエスコートしていたことが彼女としては面白くなかったのだろう。」

エスコートって一回だけじゃなかったのか。
それをサフィーは知らなかったってことは、相当回数ブッチしてるな。

「婚約者である彼女をないがしろにしていた私も悪かったんだ。
ついつい、彼女の心の広さを過信して、甘えすぎてしまった」

悲し気に目を伏せる。

なるほど、茶番ってこういうのを言うのか。

「だが、傷つき弱っているサフィアス嬢の心に付け入り、彼女に気に入られるため、嫌がらせや殺人未遂を犯すとはな。あきれたよ」

誰?それ?
サフィーの心は、ミスリルやアダマンタイトより強いよ。



このシナリオをまとめると、

殿下とセシル嬢の親密な関係に傷つき、嫉妬するサフィー。
傷心なサフィーに取り入るために、勝手に嫌がらせをし、セシル嬢を殺そうとした私。


これによって、解消された婚約を元に戻し、目障りな私を陥れることが目的。

さっきから”婚約者”をしつこいくらい連呼しているのも、周りに婚約継続を印象付けて外堀を埋める気なのだろう。

困ったな。
やってないことを証明するっって・・・悪魔の証明じゃない。

こちらを見る皆さんの視線が痛い。

真実、知らない人から見たら

学園の正義である権力者の王子が言ってる。
セシル嬢、見た目がか弱そうでかわいい。
リリシーヌ、地味。究極ボッチ。

勝てる気がしない。

こういう時に役に立ちそうなサフィーもいない。

・・・つんだ。

「身に覚えはありません」

殿下をまっすぐみつめ、背筋をのばし、こぶしを握り締める。
気持ちで負けたら終わりだ。

「殿下は、私に何をお望みなのですか?」

「そうだな」

考えるそぶりをする。

「幸いにも、未遂でケガ人がでたわけでもないからな。とはいえ、このまま許されることでもない。
学園を辞めてもらい、修道院へ・・・」

「お待ちくださいませ」

講堂の入口から、凛とした声が聞こえた。

そこには艶然と佇む姿があった。

「フィー・・・」

殿下が絞り出すように彼女の名前を口にした。

「殿下、私の親友に手を出すなど、少し戯れがすぎましてよ」

口元は笑っているけど、目は笑ってない。


(これは怒ってるな…)


心の中で、合掌した。
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