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16 百発百中のハニトラが九十九発になった日。

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とどのつまり、ナキッシュ殿下は私に嫉妬してサフィーから引き離したかっただけ?

「ナッシュは、私が絡むと見境ないところがあるから」

ちょっと照れたように笑う。

何、このカップル。
心底大迷惑。

「この計画、穴だらけじゃない?
私が今みたいに、殿下を信じないでサフィーに確認を取ったら、おじゃんになるようなものだよ?」

サフィーが少し驚いて、クスリと笑った。

「ナッシュは、あなたの性格を読み違えたようね」

殿下がこのようなことをしたのは、今回が初めてではないらしい。
サフィーが殿下よりも、他の人と仲良くなるたびに同じようなことをしでかしていた。

ご令嬢たちは、彼の腹黒さに気が付くことなく、彼の思い通りになった。
そして、サフィーから離れていく。

そうだよね。
婚約者に内緒で連絡取り合うようなことしたら、後ろめたい。
しかも、王族のイケメンに心配されてる段階で、脳内お花畑になるだろうし。

ただし、王子の駒になって、サフィーに再び近づいてくる令嬢を彼女が受け入れるわけがない。
そんな女性は、殿下にとっては用済み。

どこにもいけない令嬢たちはフェードアウトしていくことになる。

えぐいわ。


殿下の誤算は、私の恋愛対象に殿下が入っていないこと。

まさかの転生要素がプラスに働いた・・・?

「正直、驚いたわ。あれでもこの国ではトップクラスの男よ?
見た目だけで、普通のご令嬢ならなびくわよ」

人の好みは十人十色。
うさん臭さが滲み出ている、口先だけの腹黒王子は無理。

暗に普通じゃないと私がディスられている気もするけど。

「私とリシーが和解したことを知ったら、新しいことを企んでくるでしょうね。」

「数回お茶会をすっぽかしたくらいでここまでする?
茶店の貸し切りも、監視をつけるのも私相手にやりすぎじゃない?」

私が殿下より優れているものなんて、何一つないわけで。

立場だけ見ても、断然有利なんだからどーんと構えていればいいじゃないか。

あ、サフィーが視線をそらした。

「何か隠してるの?」

「大した事じゃ・・・ないよ?たぶん」

吐け、すべて吐き出しやがれませ!

「お茶会も数回じゃなくて・・・・ここ数か月一度も行ってなくて・・・」
「え?」
「それに、隣国皇太子夫妻がお見えになるパーティに出席予定だったのだけど・・・体調不良で欠席しちゃった。」


それって・・・結構重要な外交だったのでは?
まさか、婚約者がいるのに、殿下はボッチで参加?

「いつあったの?」
「ほら、二人で湖に遊びに行った日」

あの日は楽しく遅くまで・・・・参加できるわけないよね。

「何やってくれてるのよ!」

「だって、リシーと遊ぶ方が私には重要だったんだもの。
ああいう行事は、主役である王太子夫妻と外交メンバーがそろっていれば後はなんとかなるものだもの」

なんか、少しだけ殿下が可哀そうになってきた。

「何も言ってこないから気にしてないと思っていたけど、意外と根に持たれてたのかしら」

コロコロと笑う。

「ナッシュってば、心が狭いわね。困ったものだわ」

困った原因は間違いなく、サフィーだよ!

「間違いなくサフィーが悪い。少しは自重したら?」
「えー?誰かの命が失われるわけでも、国が亡びるわけでもないのに、どうして自分のしたいことを我慢しなければいけないの?」

頬をふくらませる。
そういうレベルじゃないと、我慢をしないのか・・・サフィーよ。

どんどんややこしいことに巻き込まれてる気がする。



平和な日常よ、どこいった?
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