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15 陰口の陰。

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買った服に着替えて、指定された場所へ向かうと馬車が用意されていた。

「リリシアーヌ様でございますね。お待ちしておりました」

別の馬車に乗り込むと、街から少し離れた屋敷に案内された。
すぐに人払いがされた。

「リシー、大丈夫だった?」
「うん、本当に後をつけられているとは思わなかった」

サフィーの手紙には、誰かがつけてくるかもしれないから、指示した場所で着替えてから指定した場所にきてほしいという話だった。

「あれは・・・殿下関係者?」
「たぶんね」

サフィーが肩をすくめた。

「一体、なにがしたいの?殿下は」

私が口を曲げる。

「それも含めて全部話すわ。約束通り嘘はなし」
「わかった」

神妙な顔をしたサフィーが話し始めた。

ナキッシュ殿下は人当たりが良く、生徒からの評判も良い。
将来国を支える大黒柱として、有望視されている。

ただし、サフィーが絡むと厄介なポンコツになる。

独占欲が強く、嫉妬深さが普通ではない。

対象は、男女問わず。

サフィーが婚約者となってからは、かなり落ち着き、周りを安堵させた。

それまでに有望な令息たちが牽制され、彼女と疎遠になっていった。
世話役のバーサルのような一部、例外を除いて。

「嫉妬って・・・サフィー、女性なら私以外にも付き合いあるし、男性限定なら私は関係ないじゃない」

「たぶん、お茶会をすっぽかしたせいかな」

サフィーによると、親交を深めるために月に2回ほど王宮でお茶会を開いたり、出かけたりするのが恒例だったが、それを全部お断りしていたらしい。

「ずっと一緒なのも息が詰まるし。今はリシーとお話したり、遊んでいた方がずっと楽しいのですもの。それに正式には婚約者は内定段階なのに縛られたくないじゃない」

そう言って、フフフと笑った。


「でも、そんなこと言ってもわかってくれないだろうし、下手にリシーに手を出されても困るじゃない?
あなたの悪口を言っておけば、大人しくなるかなと思ったのだけど」

サフィーが首を傾げる。

「いや、それって逆に”そんな悪い女を婚約者の側においておきたくない”ってならない?」
「・・・あ、その可能性もあったかも・・・」
「この考えなし!」

つまり、知らない間に殿下から妬まれ、私に嫉妬でチョッカイ出さないようにするため、わざとサフィーは悪口を言っていたってこと?

「もちろん、本気でリシーのことを悪くなんて思ってないわよ?」

くらくらする。
この人たち、正気か?
正気なんだろうな。常識が違うだけで。


「まだ、怒ってる?」
「怒ってないけど・・・ちょっと気になってることはある」

私は昨日の出来事をサフィーに話す。

茶店で殿下と相席になったこと。
サフィーから、私を守りたいと言われたこと。
何かあったら、自分に連絡してほしいと魔道具に勝手に連絡先を登録されたこと。

「全く、あの人は・・・」

サフィーが呆れている。

「それ、囲い込みを狙ってるんだと思うわ。茶店も計画的な待ち伏せ。」
「なにそれ?たまたま満席で、相席になっただけだと思ったけど」
「あなたが行く店は知っていたはずだし、満席じゃなかったとしても、理由をつけて同席させられたはずよ」


え、何それ。
引く。



そこまでする?
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