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第12話
しおりを挟む部屋で1人になる。と、途端にシーツの中で猛烈な後悔が襲ってきた。
あんなに心配して頂いたのに…何であんな態度を取ってしまったのだろう…。
生理中って、イライラしたり、なんか情緒不安定になる事もあったけど、自分がコントロール出来なくなるのは初めてかもしれない。
すると、扉をノックする音が聞こえた。
私は思い切り起き上がり、扉の方へ顔を向けると、
「…陛下?!」
とつい声をかけてしまった。
しかし、顔を覗かせたのは…
「クロエ様、お加減は如何ですか?…陛下でなくて申し訳ありません」
と少しニヤつきながら、ナラが部屋へと入ってきた。
私は、
「べ、別に、陛下を待っている訳じゃないわ。…体調は、随分と良くなったの。薬が効いたみたい。まだ少しふらつくけど」
と言ったのだが、言い訳に聞こえたかしら?
ナラは、
「体調が悪くない割りに、浮かない顔をしていますねぇ。…陛下と喧嘩でもしましたか?それで、反省中といった所でしょうか?」
と笑みを絶やさずに私に言った。
何で、私の気持ちがナラに伝わってるのかしら?そう思うが表情には出さないようにして、
「反省?何の事?私は別に…何もしていないわよ。反省するとしたら、今回たくさんの人に心配と迷惑をかけた事ぐらいだわ」
と私は強がった。
「はい、はい。まぁ、詳しい事は聞きませんけど。しかし陛下はすっかり肩を落としていらっしゃいましたよ。…仲直りして差し上げて下さいな」
とナラは呆れた様に言った。
…反省しているけど、素直に謝りたくない。だって、陛下はジュリエッタに甘過ぎるんですもの。わざわざ私とジュリエッタを比べなくても良くない?
「…わかってるわ。でも、陛下がジュリエッタに甘過ぎるから。だからあの娘も調子に乗ってしまうのよ。変な噂も出ているし、陛下にも、もう少しジュリエッタに厳しく接して貰わなくちゃ…いえ、もうジュリエッタに構わないで欲しいぐらいなのよ」
と私が捲し立てると、
「まぁ、まぁ。今のクロエ様のお話を聞いていると、まるでジュリエッタ様に嫉妬しているように聞こえますよ?」
とナラが笑う。
「し、嫉妬なんてしてないわ!もう!からかわないで!」
と私がむくれると、
「クロエ様、クロエ様は王妃として感情を隠すのがお上手ですけど、私の目は誤魔化せませんよ?」
と私にお茶を淹れながら、ナラは微笑んで、
「淑女として感情を表に出さない事を幼い頃から身につけていらっしゃったクロエ様には、素直になる事はもしかしたら、とても難しい事なのかもしれませんね。
でも、自分に嘘をつける人は、そうは居ません。少しずつで良いですから、自分の気持ちに耳を傾けてあげて下さいね」
と諭すように優しく私に言った。
私はじっとナラを見る。そこに私の欲しい答えがあるような気がして。
ナラはそんな私に、
「さぁ、これはユニ先生のブレンドしたハーブティーですよ。これを飲んで、また少し休まれて下さいね。
クロエ様、答えはクロエ様の中にあります。焦らなくて良いですから。陛下はいつまでも待って下さいますよ」
とお茶を渡しながらそう言った。
答えは私が持っている…。
そういえば、セドリックにも似たような事を言われた気がする。
私はハーブティーを一口飲む。心まで温まった気がした。
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