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第5話

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その夜、

「君の妹を侍女に?」
と陛下は私の隣に休みながら私の顔を見る。

「はい。公私混同のようで誠に申し訳ありません。どうも、ジュリエッタが良くない事に巻き込まれているようなのです。
相手の意図がはっきりと掴めるまで、身柄を保護する意味で…と言いますか、身柄を拘束する意味で、この王宮に置くよう、オーヴェル侯爵に頼まれました。
ついでに、行儀も身に付けさせたいのだと言う事で…」

陛下にジュリエッタのあの性格について話をしなければ、何の事を私が言っているのか、不思議に思うだろう。

「拘束…とは穏やかでないな」
と陛下は目を丸くする。

「陛下、私は今まで、あまり自分の家族についてお話した事はありませんでしたが…私は実の家族と上手くいっておりません」
と、私は自分の事について話始めた。

一通り聞き終えた陛下は、

「クロエとオーヴェル侯爵の関係があまり良くない事は薄々勘づいていたよ。クロエと結婚する事になるまで、彼の口からクロエの名前を聞いた事は殆んどなかった。妹であるジュリエッタ嬢の話は聞いた事があったがな。元々彼は饒舌な方ではないから、私もそこまでは気にしていなかったが…オーヴェル侯爵夫人とも、妹とも…とは…。クロエ…よくひねくれなかったな」
と言った。

「私は充分ひねくれておりますわ。でも、それは家族のせい…という訳ではなく、自分の性質です。
と、まぁ、今言ったように、妹のジュリエッタと私は正反対の性格な上に…お互いを苦手に思っております。
今回の件は私にとっても非常にストレスの溜まる案件です。一刻も早くオーヴェル侯爵には、ジュリエッタを引き取って貰いたいのですが…頭が痛いです」
と私は溜め息をついた。

「ジュリエッタ嬢がそのような少女だとは…思っていなかったよ。折角の機会だし、クロエの妹君だから仲良くしたいと思っているのだがなぁ。難しいかもしれんな。
しかし…私はクロエを尊敬するよ。私は昔、兄上と比べられるだけで、すぐに凹んでいたが…その環境で育っても、ここまで素晴らしい女性になるのだからな」
と陛下は私に微笑む。…え?褒め殺し?

「ちゃんと聞いて下さってましたか?私はしっかりひねくれております。でも、そんな自分を気に入っておりますの」
と私が笑うと、

「私もそんなクロエが好きだよ」
と陛下がサラリと言った。

私は不意打ち過ぎて、つい顔を赤くしてしまう。
そんな私を見て、

「おや?少しは意識して貰えてるかな?」
と少しからかう様な口調で陛下は言った。

私は、そんな自分を誤魔化すように、

「知りません!もう、寝ます!」
とシーツを頭まで被り、陛下に背を向けて目を閉じた。

…何なのよ、もう!

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