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55話
しおりを挟む「見つけた!見つけたよ」
とチアキが嬉しそうに私の手を握る。
バイトで着替えをしているロッカーでチアキは少し興奮気味に私に告げた。
私も丁度チアキに話があったのでバイトの後にゆっくりとファミレスで話をする約束をして、バイトに励む。
今日は土曜日。お客様が多い書き入れ時。無駄話をしている余裕は私達になかった。
「あ~~疲れたねぇ」
と大きく伸びをするチアキ。今日は特別お客様が多かった気がする。
「本当ね。でも、お客様の笑顔を見ると頑張れる気がするわ」
と私が言えば、
「マイラちゃんは良い子だよね。そういえば…あいつはどうしてる?最近はメッセージ送っても返信ないんだけど。大学はちゃんと行ってくれてるのかな?」
最初の頃は、私やチアキに勉強を教わっていた殿下も、今は自力で頑張っていた……というより、最近はまともに顔も合わせていない。
「大学にはちゃんと通っているみたいです。…大学の友人の方に聞きました」
「え?!あいつに友達なんて出来たの?コミュニケーション能力低そうなのに?っていうか…『聞いた』って…マイラちゃん、あいつと話してないの?」
チアキは少し心配そうな顔をした。
「実は……今日チアキにお話しようと思っていたのは…私、あの部屋を出て行こうと思っているんです」
と私が言えば、
「え?……何かあった?あいつと。……まさか、襲われた…とか?」
とチアキは声を潜める。
「いえ。そんな事はありません。でも最近殿下は部屋に戻って来ていないのです」
「何処にいるの?」
「先程お話したご友人の所で寝泊まりしているみたいです。たまに、帰る事はありますが、言葉を交わす事も殆んどありません」
「やっぱり…何かあったんだ」
「私……ハヤトが好きだったんです。命に代えても助けたいと思う程には大切に思っていました。……その事を殿下にお話して…殿下はそれから私を避けるように」
「でも、それって自業自得じゃんね。自分が今までマイラちゃんを蔑ろにしていたのが原因だし、例えそれがあのハロルドって奴に吹き込まれた事だとしても、好きな女を大切に出来ない奴なんて嫌われて当然でしょ?」
とチアキは呆れた様に言う。続けて、
「でも…こんな美人のマイラちゃんに好かれるなんて…お兄ちゃん、やるじゃん」
と笑った。
「ハヤトは私を尊重してくれましたので。でも、そのせいで殿下は自分の部屋に帰って来れなくなったんです。それならば、私が出て行こうと思って。私は所謂居候の立場でしかありませんし、私が出て行くのが筋かと」
と私が言えば、チアキは、
「居候ってのはちょっと違うと思うけど、あいつと別々に暮らすってのは賛成。マイラちゃんにあいつが変な事しないとは限らないし」
と真面目な顔で私に言った。
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更新が滞ってしまって申し訳ありませんでした。
これからも更新頻度は少し落ちるかもしれませんが、最後までお付き合い頂けると嬉しいです。
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