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穴があったら入りたい
しおりを挟む「お兄様、条件とは?」
「この結婚について、私が黙認しておく条件だよ。
父上や母上にこの事を知られたくはないだろう?
ランバード伯爵夫妻だって、この結婚が嘘や偽りでまみれた物だと知ったら悲しむんじゃないのか?」
「お兄様…脅しですの?」
「ベッキー!そんな人聞きの悪い。
私は週に1回はベッキーを補充したいだけだ。
私のそんな些細な望みも叶えては貰えないのかい?」
「……レオ様…」
私はレオ様にお伺いをたてる。私1人で決める事は難しい。
「…わかった。その条件を飲もう。
そのかわり、俺達の結婚には口を挟まないで貰おう」
「良いのですか?」
私がレオ様に尋ねると
「…仕方ないだろう。ここら辺で妥協しなければ」
「レオナルド殿から許可も出たね。
ベッキー、これからは毎週、私と晩餐だ。楽しみだね。
あ、あとその日はうちに泊まってもらうよ?夜遅くに帰すのは危険だからね」
「お兄様!後からそんな事を仰るなんてズルいです!」
私は抗議するが
「私はベッキーの為を思って言ってるんだ。
レオナルド殿がベッキーの事を大切に思ってるなら、これぐらい当たり前だと思ってるはずだよ?
なぁ、レオナルド殿?」
レオ様は苦虫を潰したようなお顔で
「………仕方ない…」
と声を絞り出した。
「ほら、ね?ベッキーと久し振りに一緒に寝られるね」
「は?一緒に寝る?」
レオ様が剣呑なお声でお兄様に詰め寄ります
「そうだよ。私とベッキーは、いつも一緒に寝ていたんだ。
ベッキーと一緒じゃなきゃ、ゆっくり眠れなくてね。
留学に行って帰ってきたらベッキーは結婚してるし、もうずっとベッキーと一緒に寝てないんだから、私はすっかり寝不足だよ」
「お兄様!それは、家族以外内緒の約束だったではないですか!」
「ん?レオナルド殿も結婚したからには家族だろう?何かおかしな事を言ってるかな?」
「お兄様!それは詭弁というものです!」
私が慌てていると、
「アレックス殿!コッカス邸に泊まる事は許可するが、同衾については許可出来ない!」
レオ様も慌ててらっしゃいます。
私は今までお兄様と一緒のベッドで寝ていた事がばらされて、かなり恥ずかしい…穴があったら入りたい…。
「許可?レオナルド殿の許可は求めてないよ。
大丈夫、私はベッキーの横で眠りたいだけだから。安心したまえ」
…お兄様はこうなると、誰の話も聞かなくなるので、私は早々に諦めた。
しかしレオ様は尚も食い下がる。
「いや、成人した男女が2人、例え兄妹でも同衾はおかしいだろう!」
「レオナルド殿…これは私達兄妹のルールなのだから、世間一般なんてどうでも良いんだよ。
それにさっきも言ったように、君の許可は求めてないんだ」
2人が言い争っているのを、何とも言えない気持ちで眺めていると、フェルナンデスが入室してきた。
「レオナルド様、王宮より使いの者がおみえです。こちらを」
と言って、封書を手渡した。
レオ様はそれにサッと目を通すと
「殿下より呼び出しだ。アレックス殿、きっと貴殿の元にも通達されているはずだ。ここから共に向かおう」
「わかった。私は馬で来ている。そのまま向かう」
「俺も支度をしてすぐに追いかける」
2人は頷き合うと席を立つ。
「レベッカごめん、急に王宮へ向かわなければならなくなった。
今日のバザーの話はまた今度ゆっくり聞かせてくれ」
「はい。もちろんです」
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夕食を共にできなくてごめんね」
「いえ。お仕事ですもの。気をつけて行ってらっしゃいませ」
アレックスお兄様は直ぐに王宮へ。
レオ様は支度を終えると、その後を追った。
2人を見送って、自室に戻る。
バザーから帰ってきて、着替えも何もしていなかったが、とても疲れた。
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ベッドに寝転がると、さっきのレオ様の言ってた事を思い出す
…レオ様が私を愛してる?女嫌いのレオ様が?
確かに、嫌われてはないと思っていたけど、愛されてるとは思ってなかった。
そう言われて、私は…素直に嬉しいと感じている。この気持ちは……。
私も恋愛をした事がないので、正直、まだよくわからない。レオ様を好意的に思っている事は確かだ。これは恋?それとも家族としての情?
…あ~!決定的に経験値が足りない!
私はその内疲れから、眠気が訪れる。
…そう言えば、レオ様、さっき何かを言いかけてたけど、何だったのかしら?その答えを導き出せないまま、私はいつしか眠りについた。
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