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手紙

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「レオ様、お帰りなさいませ」

「ああ、ただいま」

そう言ってレオ様は私を抱き締める。
なんだか今日は疲れてるみたい。

疲れている所申し訳ないが、今日返ってきたお父様からの手紙について報告しないといけない。
お兄様を説得して欲しいと書いた例の手紙の返事だ。

「レオ様、実はお父様からお手紙の返信がありまして、アレックスお兄様の件なのですが…」

「説得出来なかった…という内容だろ?」

「どうしてそれを?」

何故、手紙の内容を知ってるのか、私が不思議に思っていると

「今日、王宮でアレックス殿に会ったよ」

「王宮で?どうしてそんな所にお兄様が?」

「詳しい事は夕食で話そうか。
とりあえず、着替えてくるよ」

そう言って、レオ様は部屋に戻っていく。やっぱり疲れているようだ。背中に哀愁が漂っていた。



夕食時、お兄様が王宮で、しかも王太子殿下の側近として働く事になった事を聞いた。

「まさか、お兄様が殿下の側近なんて…」

「学園を卒業する際にも打診したらしいが、その時には断られたと殿下も仰ってた。
今回、王都で暮らす事になったから引き受けたらしい」

「…そんなお話があった事すら知りませんでした」

…ルイス殿下の事といい、王太子殿下の事といい、お兄様はいくつ私に隠し事をしてるのかしら?

「俺も少し前に殿下に聞いて知ったばかりだったが、まさかアレックス殿の『アテ』があるの『アテ』が王太子殿下とは思わなかったよ。お陰でこれからは同僚として働く事になった」

…レオ様のお疲れの原因がまさか自分の兄だとは思わなかった。

「お父様も、『仕事を見つけてきたようだし、諦めろ』と書いてましたけど、まさか殿下の側近だとは書いてませんでしたわ」

きっとお父様は知ってらっしゃったと思うけど

「確かに、そんな仕事を決めて来たなら、お義父上も説得する事は難しいだろう」

「そうですね。……でもレオ様、お仕事やりにくくありませんか?」

「いや、それについては仕事はきちんとされる方だから、心配はしてない。
ただ、敵を見るような目で見られてはいるけどな」

「…ご迷惑おかけします…」

「レベッカが気にする事はない。
逆にこれを機会にアレックス殿からレベッカを任せられると思って貰えるように、信頼を勝ち取ってみせるよ」

そうレオ様は言って笑ってくれた。
…多分、かなり難しいと思います…という言葉は飲み込む事にする。

「それと、もう1つ…お父様からの手紙に書いてあった事があって…」

「もう1つ?」

「はい。実はソフィア様…ガンダルフ侯爵から釣書が届いたと」

「え?あの女から?どっちに?アレックス殿か?サミュエル殿か?」

「アレックスお兄様に、です。
サミュエルお兄様は次男ですし…伯爵を継ぐわけではないので、除外されたんでしょう」

「侯爵からだと、コッカス伯爵が断るのは難しいのではないか?」

「はい。なので、1度会うようにお兄様へ言ったらしいです。
お兄様も王都に来ているので、ちょうど良いと。お父様としては、1度も会わずに断るのは難しいと感じたらしくて」

「でも、会ったら余計に断り難くないか?」

「ガンダルフ侯爵からは会って気に入らなければ、断ってくれても良いと言われているそうですわ」

「建前としてはそうだろうが…それにアレックス殿は……結婚する気はないのだろ?」

「そうですね。お兄様は会っても断ってしまうはずです。多分」

「まぁ、年齢的には釣り合いも取れてるし、嫡男だし、おまけに顔も良い。しかも婚約者もいないとなれば、狙われて当然だな」

「今までは領地にしか居ない兄は範疇になかったんだと思います。ソフィア様が田舎に引っ込むなんて考えられないでしょうし。
多分、本当に相手がいらっしゃらないのでしょうね。
まだお兄様が王宮で働き始めた事は知らないはずですから」

「そうだろうな。あの派手好きな女が領地に大人しく引っ込んでるとは思えない。
いよいよ、歳上の後妻しか相手が見つからないのかもしれない。少し前には隣国の貴族にまで釣書を送っていたと聞いたからな」

「うちの領地にはソフィア様を満足させる物はありませんもの」

「まぁ、アレックス殿があの女と結婚する事はないと思うが、断る時に揉めないと良いな」

「はい。そうですね。すんなり諦めて頂けると助かります」



私達はその時、断る事ばかりに気をとられ、ソフィア様とアレックスお兄様を会わせる事の危険性を全く考えていなかった。
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