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対決

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私達が休んでいると、銀髪の男性が歩いてきた。

「初めまして。レオナルドの同僚で近衛騎士団のサイモン・ロイドです。」

私も慌てて立ち上がり、挨拶する。

「こいつは、俺と一緒に王太子殿下の護衛をしてるんだ。ロイド侯爵家の三男だ」

「初めまして。レベッカ・ランバードです。主人がお世話になっております」

「いやーお美しい奥さんだな。
レオナルド、いつこんな美人と知り合ったんだ?」

「細かい事はいいだろ。
それより、どうした?
今日は非番だろ?なんで、制服を?」

「ああ。実は、色々あってな。急遽仕事になったんだよ。
で、王太子殿下がお前に少し話があるようだよ」

「そうなのか?今からか?」

「そうだ。
すみません。ちょっと、レオナルドを借りて行きます」

申し訳なさそうに、ロイド様が私に告げる。

「どうぞ。私の事はお気になさらずに。
レオ様、私、少しパウダールームへ行ってまいりますわ」

「レベッカ、1人は危ないよ。俺が一緒に行こう」

「廊下には護衛の方もいらっしゃいますし、大丈夫です。
それより、早く王太子殿下の元へ行って下さい」

「本当に大丈夫か?」

「はい。戻ったら、またここで休憩しておきますね」

「そうか。なるべくすぐに戻る。気をつけて」

「はい。では、ロイド様、失礼いたします」

そう言って、私はレオ様と別れ、パウダールームに向かう。

パウダールームは、ホールから然程離れておらず、廊下に出てもホールの音楽がうっすらと聴こえてくる。

私は手早く化粧を直し、パウダールームを後にした。
ホールへ向かう途中、前からとても派手な真っ赤なドレスの女性が歩いてくる。

綺麗な顔だけど、どこかキツそうな印象だ。気が強そう。

その方とすれ違おうとしたその時、急に、その派手美人から声を掛けられる。

「ちょっと。貴女がレオナルドの結婚相手?」

なんだか、高飛車な感じが鼻につく。

「はい。私がレオナルド・ランバードの妻ですが…失礼ですが貴女は?」

「ふぅ。私の事も知らないの?呆れた。
貴女、コッカス伯爵令嬢だったんですってね?夜会でも殆んど見た事ないのに、どうやってレオナルドを誑かしたの?」

…知らないから名前を聞いてるのに…答える気はないのかしら?
知らない私が悪いって事?

「無知で、申し訳ありません。
私は社交界に疎いものですから。
で、どちら様でしょう?」

「私はソフィア・ガンダルフよ。
流石、田舎令嬢ね。
私の事も知らないなんて」

「ああ、ガンダルフ侯爵令嬢様でいらっしゃったのですね。お噂はかねがね」

おっと、つい本音が。

「まぁ、私は有名だもの。貴女みたいな田舎者でも知ってるはずよね」

…まぁ、ある意味有名ですし。
レオ様と結婚したんですもん。色々聞いてるって思ってもらって結構ですけど?

「レオナルドも貴女みたいな、垢抜けない女のどこが良かったのかしら?
しかも結婚前に、妊娠するなんて。
貞操観念もないの?田舎者は自由なのね」

…扇子で口元を隠してらっしゃるけど、きっと笑ってらっしゃるのね。私の事。
ちなみに、ソフィア様に貞操観念を語られたくないわ。

「そうですね!私も聞いてみたいです!
レオ様が私の何処を好きになってくれたのか。
そういえば、聞いた事はなかったので。
でも、人を好きになるのは、理屈じゃありませんものね。
私のような田舎者で、夜会に足しげく通わずとも、運命の人に出会えるようですわ」

…あなたには、まだいないようですけどね…なんて心の中で舌を出す。

「ふん。ただレオナルドに見る目がないだけじゃない」

「じゃあ、見る目のなかった、レオ様に感謝ですわ。
あ、そういえば、ガンダルフ侯爵令嬢様は、今日はどなたとご参加に?」
単なる興味ですけど

「…別に誰でもいいじゃない。貴女には関係ないわ」

「確かに!関係ありませんですわね。
失礼いたしました。婚約者の方が居ると聞いた事がなかったものですから、出過ぎた真似を」
…悪いとは思ってませんけどね。

「何よ。それって、私を馬鹿にしてるわけ?」

「とんでも御座いません。
ガンダルフ侯爵令嬢様程お綺麗なら、よりどりみどりでは御座いません事?
そんな方を馬鹿にするなんて、そんな事あるはずありませんわ」

…本当は馬鹿にしてますけど。

「貴女、言い方が嫌味ったらしいのよ。本当にこんな女を選ぶなんて、ランバード家の品位を疑うわ」

…さっきから、貴女の話し方も侯爵令嬢とは思えませんけどね。
貴女の言う品位って、何かしら?
でも、私の言う事が嫌味って事はわかってるのね。

「申し訳ありません。
そんなつもりはなかったんですのよ?
今後気をつけます。
ランバード家の嫁として」

「本当に癪に障る女ね。貴女みたいな女、モテないわよ?」

「?今更、たくさんの殿方に好意を持っていただきたいなんて、思っておりませんし。
私は、レオ様にだけ愛されてれば、幸せですので。
女の幸せって、そういうものではありませんの?
自分の愛する方から愛される事が幸せなのだと思ってましたわ。
恋愛小説なんかでも、1人の殿方に愛され、慈しまれるお話が人気ですもの。
王都では、違うのかしら?
田舎者にはわかりませんわ。
ガンダルフ侯爵令嬢様に今度教えていただきませんとね。」

そう、私はニッコリした。

「ちょっと、いい加減にしなさいよ!」

怒りに満ちた美人って、迫力あるなぁ~って思っていた所に、ソフィア様が手を振り上げたのが見えた。
あ、ぶたれちゃう?って思って目を瞑るも、衝撃はやってこない。

目を恐る恐る開けると、廊下にいた護衛の方に振り上げた手を掴まれているソフィア様が見えた。

「失礼ね!手を離しなさい!」

「王宮で、暴力沙汰とは。
不敬に当たりますよ?
手荒な真似はしたくありませんので、そのご婦人から離れて下さい。
ガンダルフ侯爵の元へお送りします」

「!わかったわよ!だから、手を離して!」

そうやって、私達が揉めていると、レオ様が走って向かって来る

「レベッカ!大丈夫か?!」

私に駆け寄って抱き締めると、ソフィア様から、距離を取る。

「はい。私は大丈夫です」

「ソフィア嬢!うちの妻に何をするんだ!」

「別にまだ何もしてないわよ!」

…確かに、ギリ殴られてませんね。

「ガンダルフ侯爵令嬢がランバード夫人に手をあげようとしておりましたので、拘束させていただきました。
まだ、未遂ですが、いかがいたしますか?」

そう護衛の方がレオ様に聞く。

私は
「レオ様、私は危害を加えられておりません。護衛の方も、ありがとうございました。あまり大事にしたくありませんので、このまま私達は帰りませんか?」

「レベッカ。それで良いのか?」

「はい、構いません。ガンダルフ侯爵令嬢様も、虫の居所が悪かっただけですわ。
八つ当たりしたくなる気持ちもわからなくはありませんので。」

ギリギリ、ソフィア様にも聞こえる声で言う。
私はあくまでもレオ様に話しかけてるだけですけど。

「!本当に、嫌な女ね!」

「ガンダルフ侯爵令嬢。
これ以上騒ぎを大きくするなら、陛下にも報告させていただきます。
此処が王宮である事をお忘れなく」

護衛の方がピシャッと言ってくれた。
ふふ。悔しそうですね。ソフィア様。

「では、我々はこのまま失礼しよう。ソフィア嬢、今日はレベッカに免じて許しておくが、2度目はないと思ってくれ」

そうレオ様は言うと、護衛の方にお礼を言って、私の肩を抱いたまま、王宮を後にした
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