とりあえず結婚してみますか？

提案

「妊娠については…とりあえず後で考えるとして、それって結婚するふりでは駄目なんでしょうか？実際しなくても…」

「確かに、そうかもしれませんが、ソフィア嬢だけでなく、両親にもそう言ってしまったので…」

「でも、伯爵夫妻なら、事情がわかっているのですし、話をすれば嘘も理解していただけるのでは？」

「そうなんですが、俺が爵位を継ぐとなれば、いずれ結婚しなくてはいけません。そうなったら、本当に相手を探している時に、ガンダルフ侯爵にもばれてしまうでしょう。
そうなったら嘘もばれてしまいます。せめて、ソフィア嬢が他の誰かと結婚するまでは、俺には相手が必要なのです。
しかも、妊娠してるとまで言ってしまったからには、ソフィア嬢が結婚するまで、産まれてこない事を不自然に思われるかもしれません。最悪、子どもは流産してしまった…という事に出来るかもしれませんが、出来る事なら俺はもう実際に結婚して、ソフィア嬢の恐怖から逃げ出したい。」

…どんだけ、トラウマなんだろう。ソフィア様。

「ランバード様のお気持ちはわかりましたが…」

「コッカス伯爵令嬢、あなたが望むなら、いずれ離婚してもかまわない。ソフィア嬢が結婚して、その恐怖が去れば…」

「いえ、私は別にそれを望んでいるわけではありません。でも、ランバード様は女性が苦手なんですよね？
私と結婚する事はいずれにせよ苦手な相手と一緒にいる事になりますが…」

「いや、そんな事は…」
ランバード様が何か言いかけたが、

「あ、でも別に一緒にいなくても、結婚して同居するだけで良いんですもんね？」

「いや、あのー」
ランバード様の言葉を無視して私は続ける。

「あ、でも伯爵夫妻にも嘘をつくとなると、伯爵夫妻の前では、仲良くした方が…」

「まぁ、その方が助かるが…」

「ちなみに、夜会等に出席するご予定は？伯爵家を継がれるとなれば、社交も必要になりますよね？」

「あ、ああもちろん…」

「じゃあ、そういう場では、きちんと夫婦を演じなくてはなりませんけど…ランバード様はそれで大丈夫なんでしょうか？」

「それは、もちろん。こちらから、お願いしているわけだから…」

「とにかく、契約結婚だとしても、きちんとルールを決める必要がありそうですわね」

と私はまるっとランバード様の言葉を無視したまま、ニッコリと微笑んだ。