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自己紹介

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とりあえず、私達は場所を移動した。

私が大声を上げたばかりに、通りにいた人達から、ジロジロと見られる羽目になったからだ。

ここは王都で人気のカフェらしい。その奥まった半個室のスペースに、私達はいた。

「改めて、自己紹介を。近衛騎士をしております、レオナルド・ランバードです。ランバード伯爵家の次男です。第1王子の護衛をしております。」

「ランバード伯爵家の方でしたか。私は、レベッカ・コッカス。コッカス伯爵家の長女です。」

「コッカス伯爵家…南方に領地があるコッカス伯爵家ですね。」
ランバード様はそう言うと、「何度か、フィリップ王子の視察で訪れた事があります。果物が特産物として有名ですよね。」
と、第1王子の名前を口にした。

「はい。マンゴーや、パイナップルなどを栽培、加工して特産物としています。
最近はオリーブの栽培も手掛けております。他は何もない田舎ですけど…良くご存知でしたね。」
私はそう答えた。

「 勿論です。視察の際に伯爵にもご挨拶をさせていただきました。その時にご長男のアレックス様にはお会いしましたが、ご令嬢がいたとは…申し訳ありません。勉強不足でした。」

「いえ。私はほとんど領地に引きこもっておりますし…社交もほとんど…王都にも数える程度しか…」

「学園へは?」
このデルタ王国には貴族が15歳から18歳まで通う学園がある。
もちろん、強制ではないが、嫡男であれば領地運営のノウハウを。次男や三男であれば騎士や文官を目指し勉強する為に学園に通う。
令嬢であれば、淑女になる為に、あるいは他の貴族との社交、人脈作りの為、通う事が多い。
ランバード様が疑問に思うのも無理はない。

「学園には通わず、家庭教師についてもらっていました。」そう私が答えると、
「今更だが…その…年齢を聞いても?」
「18歳でごさいます」
クスっと笑いながら、答えた。
そして
「この歳ですが、婚約者はいませんわ」と重ねて答えた。

「!!!あ、重要な事を!そこを考えてなかった」と物凄い勢いでランバード様は反省をし始めた。
「ウフフ。婚約者もいなさそうな女に見えましたかしら?」
私が笑いながらそう言うと
「いや、その、コッカス伯爵令嬢が魅力的でないとか、そう言うことではなく…」
そう言われるとは私も思ってなかった。
私の眉毛がピクリと上がる
「あ、そのそういう事ではなく、その可能性をまったく失念していたというか…もう少し歳が若く見えたというか…」
ん?思ったより年増だったと言いたいのかしら?
確かに私は童顔で、歳より若く見られる事の方が多いけど…眉毛が益々ピクピクする。
それを悟ったのか、余計にしどろもどろになりながら言い訳するランバード様。
口をひらけば、ひらくほど墓穴を掘っていく
「その、あの、あれだ!男っ気がないというか、色気?がないと言うか…」いや、それもう悪口ですよね?
と心の中で盛大にツッコミを入れる。

私には婚約者になる男性がいるような色気を感じないと、そうおっしゃりたいのかしら?と、そう言いたい、言いたいが、悲しいかな、男っ気がないのも、色気がないのも事実なので、言わずにランバード様を睨む事にした。

「うっ!!!」ランバード様は不味いと思ったのか、口を手で隠した。顔色は青くなっている。
「も、申し訳ない。とんだ失礼を…俺、いや私が言いたいのは…」
と言いかけた所で、私は
「いや、もう結構です。自分の事は自分が1番わかってますので…ところで、話を進めませんか?私の色気については、とりあえず置いておきましょう。」
ランバード様はますます、青くなった。
その顔を見て少しだけ溜飲が下がる。でも、もうこの事は話題にしたくない。
私は「とにかく、ランバード様はご結婚がなさりたいのですよね?失礼ですが、婚約者の方は?」と聞いてみた。

「俺…いや私にも婚約者はおりません。
」そう答えたランバード様に

「では、他に頼める方は? 恋人とか…他のご令嬢で。」
正直、私は領地に引きこもっており、王都での話などに疎いが、ランバード伯爵家といえば、なかなか歴史もあり、領地も豊かな家だ。
次男と言うことで、爵位は継げないかもしれないが、第1王子の護衛として、近衛騎士をしているなら、エリートだし、このまま行けば騎士爵を叙爵される事は想像に難くない。
武勲を挙げればもっと上の爵位も狙えるかもしれない。
第1王子のフィリップ殿下は人となりも立派で優秀、正紀の息子でもありこのままいけば、王太子に1番近い人物だ。
その側近ともいえる護衛であれば、かなりの優良物件である事は間違いない。
見知らぬ私なんかに声をかけなくとも、よりどりみどりではないか?と私は思ったのだが…

「私には恋人も頼める方もおりません。というか、ご令嬢とこんなにも話をしたのも初めてです。」
と少し顔を赤らめた。

「え?どういうこと?」
心の声が思わず口に出ていた。言葉遣いが素に戻ってしまった事を言い訳しようと思ったがランバード様はそこについては華麗にスルーして
「俺…私は、実は女性を少々苦手としておりまして…次男でもありますし、結婚についても全く考えていなかったのです。」
俯きながら、ランバード様はそういうと、少し冷めてきたであろう紅茶を口にした。
「あのー、先程から言い直されておりますが、俺で構いませんよ?」
さっき、私も失礼な口の聞き方をしたばかりなので、そう言うと
「あーすみません。つい癖で。じゃあ、お言葉に甘えて。」とお話を始めました。
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