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その135
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私達が結婚式を挙げる日は、突き抜けるような青空の良く晴れた日だった。
「シビル様~。大変、お綺麗で、こざいます~」
仕上げのベールを私に被せると、デイジーは手を叩いて私を褒めてくれた。
婚約者になってからと言うもの、スキンケアや、ヘアケアに並々ならぬ努力をしてくれた2人には感謝しても感謝しきれない。
お陰で私は、どこから見ても貴族令嬢と言っても憚られないような見た目になった。
中身はあまり変わりはないし、なんなら今だ表情は乏しい。
しかしこの無表情の中にも感情は表れているらしく、クリス様だけは、
『今日は何か良い事があったのか?嬉しそうだな』
とか『腹が減ってるんじゃないのか、機嫌が悪そうだが?』
と微妙な変化に気づいてくれるようになった。
ちなみにお腹がすくと機嫌が悪くなるのは、私の短所だと思う。
私が自分のドレス姿を鏡で確認していると、
「シビル!」
と控え室の入り口から懐かしい声がした。
私は振り返り、
「お母様!それに、ローリーも!」
「お姉さま!」
と私の可愛い妹が駆け寄ってきて、
「お姉さま…とっても綺麗!お姫様みたい!」
と笑顔をみせると、ローリーの後ろから
お母様が、
「シビル…本当に結婚するのね…おめでとう」
と目を潤ませた。
「お母様も、ローリーも久しぶり。元気だった?」
と私が訊ねると、
「貴女が頑張ってくれたお陰で、私達はなんの憂いもなく生活が出来ているわ。ヨレックも騎士を辞めて、領地経営を今、学んでいる所よ」
とお母様が答えれば、
「私も、婚約者が決まったの」
とローリーが顔を赤らめた。
「まぁローリーに婚約者が?」
「ええ。同じ伯爵家だけど、とても歴史の古い家柄の方でね。年齢はローリーより2つ上でもうすぐ15歳になる方よ。とても穏やかで優しい方なの」
とお母様が答えた、続けて、
「貴女が、ベルガ王国の王太子妃になるという事で、ヨレックにもローリーにも釣書がたくさん来たの。王太子妃の生家っていう事で縁付きたい家がとても多くて…まさか、私達が選ぶ立場になるなんて、思ってもみなかったわ」
とお母様は苦笑した。まさか私の結婚が、そんなところにまで影響しているなんて、考えた事もなかった。
私はローリーに、
「ローリーはその婚約者の方…気に入っているの?」
と訊く。
私の生家だから…というだけで釣書を送ってきた家なんて…という気持ちが少し湧いてくる。
「テリー様は、すっごく優しいの。いつも私を優先して下さるし、私のくだらないお喋りにも、何時間でも付き合って下さるし…私、テリー様が大好きなの」
とローリーはますます顔を赤くして俯いた。
お母様は、
「シビルの心配は分かるわ。でも、あの方は大丈夫よ。お父様も私も貴女達より長く生きているんだから、ちゃんと為人をみてるわ」
…お父様の人をみる目はあんまり信用できないのだけど…という言葉は一応飲み込んだ。
私は、
「ローリーがそのテリー様を好きなら…私は何も言わないわ。ローリー…幸せになってね」
と私は妹の頭を撫でる。
ローリーは嬉しそうに頷いた。
「ところで、お父様とお兄様は?」
「…2人は王太子殿下にご挨拶に行ったわ。緊張のご対面ね」
私は兄が心配になる。お父様は1度クリス様に会ってるけど…お兄様…大丈夫かしら?
「シビル様~。大変、お綺麗で、こざいます~」
仕上げのベールを私に被せると、デイジーは手を叩いて私を褒めてくれた。
婚約者になってからと言うもの、スキンケアや、ヘアケアに並々ならぬ努力をしてくれた2人には感謝しても感謝しきれない。
お陰で私は、どこから見ても貴族令嬢と言っても憚られないような見た目になった。
中身はあまり変わりはないし、なんなら今だ表情は乏しい。
しかしこの無表情の中にも感情は表れているらしく、クリス様だけは、
『今日は何か良い事があったのか?嬉しそうだな』
とか『腹が減ってるんじゃないのか、機嫌が悪そうだが?』
と微妙な変化に気づいてくれるようになった。
ちなみにお腹がすくと機嫌が悪くなるのは、私の短所だと思う。
私が自分のドレス姿を鏡で確認していると、
「シビル!」
と控え室の入り口から懐かしい声がした。
私は振り返り、
「お母様!それに、ローリーも!」
「お姉さま!」
と私の可愛い妹が駆け寄ってきて、
「お姉さま…とっても綺麗!お姫様みたい!」
と笑顔をみせると、ローリーの後ろから
お母様が、
「シビル…本当に結婚するのね…おめでとう」
と目を潤ませた。
「お母様も、ローリーも久しぶり。元気だった?」
と私が訊ねると、
「貴女が頑張ってくれたお陰で、私達はなんの憂いもなく生活が出来ているわ。ヨレックも騎士を辞めて、領地経営を今、学んでいる所よ」
とお母様が答えれば、
「私も、婚約者が決まったの」
とローリーが顔を赤らめた。
「まぁローリーに婚約者が?」
「ええ。同じ伯爵家だけど、とても歴史の古い家柄の方でね。年齢はローリーより2つ上でもうすぐ15歳になる方よ。とても穏やかで優しい方なの」
とお母様が答えた、続けて、
「貴女が、ベルガ王国の王太子妃になるという事で、ヨレックにもローリーにも釣書がたくさん来たの。王太子妃の生家っていう事で縁付きたい家がとても多くて…まさか、私達が選ぶ立場になるなんて、思ってもみなかったわ」
とお母様は苦笑した。まさか私の結婚が、そんなところにまで影響しているなんて、考えた事もなかった。
私はローリーに、
「ローリーはその婚約者の方…気に入っているの?」
と訊く。
私の生家だから…というだけで釣書を送ってきた家なんて…という気持ちが少し湧いてくる。
「テリー様は、すっごく優しいの。いつも私を優先して下さるし、私のくだらないお喋りにも、何時間でも付き合って下さるし…私、テリー様が大好きなの」
とローリーはますます顔を赤くして俯いた。
お母様は、
「シビルの心配は分かるわ。でも、あの方は大丈夫よ。お父様も私も貴女達より長く生きているんだから、ちゃんと為人をみてるわ」
…お父様の人をみる目はあんまり信用できないのだけど…という言葉は一応飲み込んだ。
私は、
「ローリーがそのテリー様を好きなら…私は何も言わないわ。ローリー…幸せになってね」
と私は妹の頭を撫でる。
ローリーは嬉しそうに頷いた。
「ところで、お父様とお兄様は?」
「…2人は王太子殿下にご挨拶に行ったわ。緊張のご対面ね」
私は兄が心配になる。お父様は1度クリス様に会ってるけど…お兄様…大丈夫かしら?
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