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その63
しおりを挟む私は我に返り、直ぐ様殿下の側に寄る。
フェルト女史は先ほど図書室へ行くと、席を外したままだ。
殿下は怒りの為か立ち上がっている。
私は考え事をしていた為、この状況がどのようにして起こったのか理解していなかった事を悔いた。
私は
「殿下!いかがなさいました?」
と訊くも、殿下は、
「私はゲルニカになんて行かないわ!能面女!あんたまさかこの事を知っていたんじゃないでしょうね?」
と物凄い形相で睨んできた。
流石にここで、『知ってました』とは言えない雰囲気だ。
私は言い淀んでしまう。
しかし、その『間』で察した殿下は、
「…知ってたのね。騙したの?いつから?まさか、お父様やお兄様も知っていたんじゃないでしょうね?!」
もう、私が口を挟む暇もないぐらいに、殿下は捲し立てる。
「私は、アルティアの王女よ!何故そんな辺鄙な領地で過ごさなければならないのよ!絶対に嫌!!!」
と叫び声に近い拒絶の言葉を殿下が吐いた所で、
「安心しろ。ミシェル王女は『ゲルニカ』に行く必要はない」
と扉の方から声がした。
私達が振り向くと、そこには、クリス様と、アーベル殿下が立っていた。
ミシェル殿下は、
「どういう事?私はゲルニカに行かなくて済むの?!」
と若干喜んでいるが、私は表情は変わらないまでも、顔色は真っ青だ。
ミシェル殿下が『ゲルニカ』に行く必要がなくなると言うのは、ミシェル殿下がアーベル殿下の婚約者として相応しくないと判断されたと言う事だ。
これは…ミシェル殿下がベルガ王国から見離されたと言うこと。
この婚約を解消する…これは、どちらの有責になるんだろう。
どちらが悪いかで、ミシェル殿下がアルティアに帰ってからの立場が決まる気がする。
私はミシェル殿下の問いに答えるクリス様の言葉を待った。
「あぁ。ミシェル王女。貴女には『アルティア』に帰って貰う事になった。
良かったな。このベルガ王国を嫌っていた貴女だ。喜んで貰えるだろう?」
そうクリス様は言うと、部屋の中に入って来た。アーベル殿下も一緒に。
ミシェル殿下は何を言われているのか分からないのだろう、目を見開いて固まっている。
クリス様は続けて、
「今回のアーベルと、ミシェル王女との婚約関係は破棄されて貰う。ミシェル王女には、1週間後この国を発って貰う為、準備をお願いする」
と告げる。
この言葉で、やっとミシェル殿下は事態を把握したようだった。
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