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その3
しおりを挟む「私は今まで、王女付の侍女になった事もありませんし、今、専属でお付きの侍女の方もいらっしゃるのに…」
「貴女は器用になんでもこなせるし、直ぐに王女付の仕事も出来るようになるわ。
それにね…今のミシェル王女に付いている侍女は皆…辞退してしまったから、そこを気にする必要はないの」
「辞退…ですか…」
「ええ。なんだか皆、都合よく結婚が決まったり、退職が決まったり。
まぁ、仕方ないわよね。全く歓迎されていない所へ、しかもミシェル王女様と一緒なんてね。
でも、これは貴女にも悪い話じゃないの」
「…と言いますと?」
「ベルガ王国へ行ってくれたら、お給料は此方からも、ベルガ王国からも出る事になるわ。実質2倍よ?此方からの給料に関しては、貴女が望むならご実家へ送ります。それと、今、ご実家の抱えている借金は、全てお支払するとの事よ。どう?」
…はっきり言えば、破格の待遇だ。
…それだけ成り手がないという事だろうが。
その条件に私は、
「やります!やらせて下さい!」
とやや食いぎみに返事をしていた。
「良かった。貴女ならそう言ってくれると思っていたの。
では、明日からミシェル王女付の侍女として働いてもらいます。
そして来月にはベルガ王国へ出発よ。
それまでに1度、ご実家に帰れるように休暇を取ると良いわ。
今後はなかなかご家族に会う事は難しくなるだろうから」
…そう言われると、家族との別離を寂しく思う気持ちが沸き上がる。
でも、私がこの仕事を引き受ければ、妹は良い所へ嫁ぐ事が出来るようになるかもしれない。
私は寂しい気持ちを圧し殺し、明日からの仕事について考えるようにした。
翌日、私は早速ミシェル王女付の侍女となった。
今まで王女付になった事は無いため、今から約1ヶ月で仕事を覚えなければならない。
しかも、今は侍女は8人居るが、ベルガ王国への道中は1人で全ての仕事をしなくてはならない。
ベルガ王国に着けば、向こうからも侍女を着けて貰えるだろうが、獣人へ差別的な目を向けているミシェル王女様がそれを受け入れるとは考えにくかった。
そうなれば、ずっと私1人がミシェル王女様のお世話をしなくてはならない。
よくよく考えると、給料2倍ぐらいでは割りに合わない気がしてきた。
早速、私はミシェル王女付きの侍女の方々に挨拶をした。
「シビル・モンターレです。
今日からミシェル王女様付の侍女になります。王女付になるのは初めてで、わからない事も多いかと思います。
ご指導よろしくお願いいたします」
頭を下げた私に、
「私はミシェル王女様付きになって1番長い、ロレッタ・バルドーよ。今日から私が貴女の指導を致します。よろしくね」
早速私はロレッタ様に教わりながら1つ1つの仕事をこなしていく。
しかしまだミシェル殿下にはお会いしていない。
もうすぐお昼過ぎだと言うのに、ミシェル殿下のお支度をしなくても良いのだろうか。
「…さて、そろそろ殿下のお目覚めの時間かしらね?シビル、覚悟は良い?」
「覚悟?」
「…貴女、反射神経は良い方かしら?」
「さぁ…どうでしょうか…今まで考えた事もありませんでしたが、体を動かすのは好きな方です」
「そう。なら大丈夫かしらね。では行きましょう」
そう言ってロレッタ様は殿下の寝室へと向かう。
私はその後を、今言われた言葉の意味を考えながら付いて行った。
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