お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶

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第175話

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「それとね、あと1つ陛下にお願いした事があるの」

「お願いですか?」
とアーロンが私に尋ねる。

「ええ。実は領地でね、テオの眼鏡が壊れてしまって」
と言う私の言葉にテオが反応する。

「あの時は必死で。眼鏡が壊れた事にも最初は気づいていなかったので」

「お陰で助かったわ。でも、護衛達がね、テオを見てびっくりしていたのよ。口には出さなかったけど……疑っているんじゃないかしら?」

『ひょっとして公爵様の隠し子?』と思ったとしても、私に尋ねる勇気はないだろうし。

「あと半年もないぐらいですが……もう使用人には言ってしまいますか?本当の事を」
とのアーロンの言葉に、私は

「それも考えたんだけどね。1番の問題はあの遺言書よね。テオが18にならなきゃ効力を発揮しない。今、テオは平民でしょう?それが不味いって事よね?もしテオの命を狙う者が現れて、万が一の事が起こった場合、テオが平民だと厳罰にならない可能性がある」
私が顎に手を当てながら話すと、アーロンは同意を表すように頷いた。

「そこでね。テオを私の養子にしようと思うの」
と言う私の言葉に即座に反応したのはテオだった。

「嫌です!」

「え?何で?私の養子になれば、貴族になれるわ。いざという時の為に保険をかけておくのよ」

「それても嫌です!」

何でそこまでテオが拒絶するのか分からすに、私はちょっぴり悲しくなかった。私と家族になるのは……嫌なのかしら?

「テオ……。あ!もしかして……テオが公爵を継いだ後の事を心配してる?私が……図々しくここに残ろうとしているとか、そんな事を心配してるの?
大丈夫よ。テオが18になって、公爵を継いだ暁には、直ぐに養子縁組は解消したって構わないわ。テオが望む様にして良いの。私はここの財産を狙ってる訳ではないのよ?」

流石に『家族になりたくないの?』と口に出して尋ねる事は出来なかった。前に……家族になろうって約束したのにな……。

すると、

「そんな事を心配してるわけじゃないけど……でも、ダメなんです」
とテオは困った様にそう言った。

「テオドール様はそんな事を言っているのではなく……ゴニョゴニョ……」

「アーロン何か言った?」
アーロンが何か小さな声で言っているが、聞こえない。意見があるなら、ちゃんと言ってよ!
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