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第161話
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「コビーさんが帰って、アーロンさんがふと思い出したんです……ビルさんの奥さんがヴァローネ伯爵領の出身だった事を」
私はすっかりテリーを疑っていたので、ビルの名前が出て少し驚いてしまった。
「……確かに。昨晩もその話をビルとした所です」
とギルバートは顎を擦った。
「それで……本当はビルさんが横領の黒幕なのでは?とアーロンさんが言い始めて、居ても立っても居られなくなってしまったんです。もしステラ様が鉱山へ視察に行った事で、ビルさんが自棄になったりしたら……ステラ様に何か危害を加える様な真似をしたら……と。アーロンさんは王都の屋敷を留守にする訳にはいかないし……私しか動ける者は居ませんでした。そしたら……悪い予感が当たって……」
「だから、ギルバートにビルの事を聞いたのね。あの火事の時、ビルがどういう行動を取っていたか」
と私が言えば、テオは頷いた。ギルバートは、
「ビルの奥方は今、娘の出産の手伝いにヴァローネ伯爵領へ戻っているんです。娘が嫁いだ相手も農作物の不作で暮らしは厳しいと。でも、ビルはヴァローネ伯爵を責めていましたよ。領主としての務めを果たしていないとね。泊めて貰ったからとか、付き合いが長いからと庇っている訳ではありません」
と私に言った。
「では……やはりテリーが?」
と言う私に、
「実は火傷を負った護衛をあそこに残して来たのはわざとです。火傷はかなり軽いものなんですが、ちょっとだけ大袈裟に包帯を巻いて。テリーを見張らせています」
とテオは言った。
「でも……うちの護衛が寮に残っているのに、テリーは動くかしら?」
と言う私に、
「それはわかりません。出来れば尻尾を掴みたいんですけどね」
とテオは口を結んだ。
私達はこの宿屋に一泊する事にした。
テリーの動きが気になる私がそう提案すると『危なくないですか?』とテオはとてつもなく嫌そうな顔をした。
その夜………
「テオ、貴方寝ないで見張るつもり?」
と、私の部屋の扉を守る様に廊下で仁王立ちしているテオへ顔を出して声を掛けた。
「宿屋の玄関と勝手口には護衛を置きましたが、部屋に配置出来る者がおりませんので、私が」
「こんな時にムスカが居ないのって不便ね」
と私が言うと、
「私じゃ頼りにならないって事ですか?」
とテオが口を尖らせた。その顔が可愛らしくて、つい私は吹き出してしまう。するとテオは、
「……私は面白くないですけど?」
とますます不貞腐れたのだった。
私はすっかりテリーを疑っていたので、ビルの名前が出て少し驚いてしまった。
「……確かに。昨晩もその話をビルとした所です」
とギルバートは顎を擦った。
「それで……本当はビルさんが横領の黒幕なのでは?とアーロンさんが言い始めて、居ても立っても居られなくなってしまったんです。もしステラ様が鉱山へ視察に行った事で、ビルさんが自棄になったりしたら……ステラ様に何か危害を加える様な真似をしたら……と。アーロンさんは王都の屋敷を留守にする訳にはいかないし……私しか動ける者は居ませんでした。そしたら……悪い予感が当たって……」
「だから、ギルバートにビルの事を聞いたのね。あの火事の時、ビルがどういう行動を取っていたか」
と私が言えば、テオは頷いた。ギルバートは、
「ビルの奥方は今、娘の出産の手伝いにヴァローネ伯爵領へ戻っているんです。娘が嫁いだ相手も農作物の不作で暮らしは厳しいと。でも、ビルはヴァローネ伯爵を責めていましたよ。領主としての務めを果たしていないとね。泊めて貰ったからとか、付き合いが長いからと庇っている訳ではありません」
と私に言った。
「では……やはりテリーが?」
と言う私に、
「実は火傷を負った護衛をあそこに残して来たのはわざとです。火傷はかなり軽いものなんですが、ちょっとだけ大袈裟に包帯を巻いて。テリーを見張らせています」
とテオは言った。
「でも……うちの護衛が寮に残っているのに、テリーは動くかしら?」
と言う私に、
「それはわかりません。出来れば尻尾を掴みたいんですけどね」
とテオは口を結んだ。
私達はこの宿屋に一泊する事にした。
テリーの動きが気になる私がそう提案すると『危なくないですか?』とテオはとてつもなく嫌そうな顔をした。
その夜………
「テオ、貴方寝ないで見張るつもり?」
と、私の部屋の扉を守る様に廊下で仁王立ちしているテオへ顔を出して声を掛けた。
「宿屋の玄関と勝手口には護衛を置きましたが、部屋に配置出来る者がおりませんので、私が」
「こんな時にムスカが居ないのって不便ね」
と私が言うと、
「私じゃ頼りにならないって事ですか?」
とテオが口を尖らせた。その顔が可愛らしくて、つい私は吹き出してしまう。するとテオは、
「……私は面白くないですけど?」
とますます不貞腐れたのだった。
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