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第142話
しおりを挟む「だが……何故かその妹を……母の違う妹を友人はいつしか家族として認識する様になった。
我が儘で馬鹿な娘だったが。それでも愛しく思っていたんだ。
そしてその内その娘が抱える秘密にも友人は気がついた。
年月が経ち、彼は思った『この娘はいずれその男に捨てられる』と。友人の母親の様に。
そして彼はますます金を稼ぐ事に執着した。
彼は稼いだ金を元に店を立ち上げた。そして、悪い事からも足を洗おうとしたんだ。だが、無理だった。彼を支配していた男から逃げる事は不可能だったらしい」
「その、貴方の『ご友人』は妹さんが独りになった時に自分を頼れる様に真っ当な人間になろうとしたのね。店を持ち商いをする。そんな普通の人間になろうと努力したのね。
その為にはお金が必要だったと……そう言いたいのかしら?」
「………友人はそう思っていたのかもしれない」
「ねぇ、どうして『男に捨てられる』と思ったの?母親の姿と重ねたから?」
「その男が結婚したからだ。その上相手が優秀ときた。……捨てられるだろ。普通」
「そうかしら?その男性はご友人の妹さんを捨てるなんて事はしなかったと私は思うわ。残念ながら……その男性はもうこの世に居ないみたいだけど」
「それこそ、どうなっていたかなんて分からないだろう?故人に尋ねる事は出来ない」
「そうね。でも、その男性の事を貴方より知っている私が言うんだもの。貴方より信憑性は増すでしょう?
ねぇ、この話を私に聞かせたという事は、その友人の代わりに妹を守れと言う事かしら?
……大丈夫よ、悪いようにはしないから」
と私が微笑めば、アルベルトは少しホッとした様な表情を浮かべた。
「友人も喜ぶよ」
「そう。なら安心してと、そう伝えて。
それと、もう一つ貴方に訊きたい事があったの。良いかしら?」
と私が首を傾げれば、
「あと一つだけなら」
とアルベルトは答えた。
「領地に眠っているのは……お母様?」
そう私が訊ねればアルベルトは、
「母親の願いだったんだ。最愛の人の側で眠りたい……と」
と口の端を上げた。
「……趣味が悪いわね。そこには奥さんも眠っているのでしょう?」
「あの世で今頃揉めてるんじゃないか?いい気味だ」
とアルベルトは笑った。
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