お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶

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第139話

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「はぁ………」

「ため息ですか?何かありました?」
とアーロンに尋ねられる。

「うーん……やっちゃったなぁ……と思って」

「珍しいですね、奥様が落ち込んでいるのは。相手は察するに……テオドール様ですか?」

何で、アーロンにバレたんだろ?って言うか私が落ち込むのってそんなに珍しいの?

「どうしてそう思うの?」

「奥様が1番気を使っている相手だからですよ」
……なるほど。そう見えているのか。

「だって……私には子どもも居ないし、正直どうやって接するのが正解なのか、わからないの。
それにテオって母親からも父親からもあまり構って貰えていなかったでしょう?私では役不足だと思うけど、家族としての愛情……みたいなものを感じて欲しいと思っちゃって……」
と私が言えば、アーロンは私の顔を見て少し苦笑した。
……え?私、変な事言った?

「奥様のその気持ちを否定するつもりはありませんけどね……無理に奥様がテオドール様の母親になる必要はないんですよ。
それより、いつまでもテオドール様を子どもとして扱うのではなく、1人の人間として扱ってあげたら良いのだと、私は思いますよ。テオドール様もそれを望んでいらっしゃるのではないですかね?」

「……昨日、テオにもそう言われたの『私の息子じゃない』って。『子ども扱いしないで』とも言われたわ。私、知らず知らずの内にテオのプライドを傷つけていたのかしら?赤の他人のくせに……出しゃばり過ぎたのかもしれないわね」

アーロンに言われて私はすっかり落ち込んでしまった。
私はあくまでもテオの父親のパートナー。彼とは赤の他人だ。そんな私が彼の家族として簡単に認められるなんて思った私が烏滸がましかったのだと。
そんな私に、

「奥様……テオドール様が言いたかったのは、そんな意味ではなくてですね……っと、私がこれ以上言うのはテオドール様に申し訳ないので、口にはしませんが……」
と歯切れの悪いアーロンに、

「アーロン、テオから何か聞いてる?もし何か知っているなら……」
と私が言えば、アーロンは困った顔をした。

「いや……別に知ってるとかでは無くてですね……見てれば分かるというか……」
とアーロンが私に詰められて、しどろもどろになっている所へ、廊下の護衛から声が掛かった。

「奥様、王宮よりお手紙でございます」
と立派な蝋封の手紙をアーロンへ寄越した。

開封したアーロンから手渡された手紙には、

「アルベルトが私との面会を承諾したそうよ。早速会いに行って来るわ」

アルベルトとの面会許可証が入っていた。

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