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第137話
しおりを挟むその日の夜。
湯浴みを終え、お酒を飲んていたところに、テオが私の部屋を訪れた。
「あら?珍しいわね。入って」
「ステラ様……お酒飲まれるんですね」
部屋に入ってテーブルの上のお酒に目をやったテオは私にそう言った。
私はテオを長椅子へ案内して座らせる。
「意外?私もたまには飲むわよ。そんなに強い訳じゃないけど、社交には必要な時もあるし」
「ふーん……。俺も成人したら飲める様になりますかね」
「どうかしら?体質にもよるんじゃない?
はい、飲めないテオにはこれね」
と私がテオのグラスに果実水を注ぐ。
テオはそのグラスを手の中で遊ぶように揺らしながら、
「ステラ様は俺の事、子どもだと思っていますよね?」
と少し拗ねた様にそう言った。
「17歳の男の子って、微妙よね。少年と呼ぶには遅すぎるし、青年と呼ぶには少し早い様に思うのよ。
後1年で成人だから大人に近いといえば近いのだけど、大人って年齢だけで区切られるものではないでしょう?」
と私が言えば、テオは少し不思議そうな顔をした。
「歳だけ大人になってもね」
と私が少し苦笑すれば、
「あの人みたいな人ですね」
とテオは私の考えを読んだ様にそう言った。
……その通りだけど、私は曖昧に微笑むだけにした。
「で、テオは何か私に話したい事があったんじゃないの?」
と私が尋ねると、
「今日の件です。俺、出しゃばり過ぎましたか?」
とテオは心配そうだ。
「まさか!アイリスさんの事は元々、テオに任せてみようと思っていたの。でも、テオが既に考えてくれていたなんて思ってなかったから、少しだけ、驚いたのは確かだわ」
「俺の判断は間違ってると思いますか?甘いって思いますか?」
「いいえ。私も同じ様に思っていたわ。アイリスさんには領地に戻って貰いたかったし、出来る事なら自立して貰いたいとも思ってたもの。
それを手助けするのは、公爵様の遺志でもあるでしょうし。甘いと言われるなら、私もよ。彼女の借金まで肩代わりしたんだし。……でもね、彼女には感謝してるのよ、これでも」
「感謝?」
「ええ。テオを生んでくれたもの。私には出来なかった事よ」
そう言って私は一口お酒を飲んだ。疲れた体に染み渡る。
公爵様が亡くなって、ずっと働き詰めだ。少し休みたいと思うのは、我が儘だろうか?
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