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第117話
しおりを挟む「あのアルベルトとか言う男と揉めてましたよ」
と言うソニアに、
「あら、アイリスさんも随分と大胆になったわね。ソニアが一緒なのにユニタス商会へ行ったの?」
と私は驚いてみせた。
「見たいワンピースがあるから……と。でも、私は店の外で待たされました」
「でも、揉めてる声が外まで聞こえてきた……と」
「はい。『またお金の無心か』と男の方が言えば、『なら預けた宝石を返せ』と言い争っていました。異母兄妹なんですよね?2人は」
と殊更小声になったソニアに、私も少し顔を近づける様にして、
「証拠はないけど、多分ね。でも預けた宝石って……何かしら?」
と私が尋ねれば、
「さぁ……?」
とソニアも首を傾げて固まった。
ギルバートにでも調べさせるか……。
そんな中、私は王宮へと呼ばれた。私を呼んだ張本人は……
「ステラ様、どうぞ」
と少しやつれてはいるが笑顔のパトリシア様だ。
「お加減は如何ですか?少し食べれる様になったと聞いたので、苺を持って参りました。パトリシア様、お好きでしたよね?」
と私がツヤツヤの真っ赤な苺を入れたカゴを見せれば、パトリシア様は殊更明るい笑顔になった。
殿下によれば、危機は脱したという。私はその報告に心から安堵した。
少し元気になったパトリシア様から会いたいとの手紙を受け取った私は一も二もなく王宮へと駆け付けたという訳だ。
「自分の体なのに、自分の思い通りにならなくて……辛かったわ」
と言うパトリシア様の手を私は握る。
「困難を乗り越えたのですから、きっと強いお子様である筈です。パトリシア様もあまり無理をせず」
「王妃陛下には『妊娠は病気ではないんだから、流産の危険がなくなったのなら、早く公務に復帰するように』と言われたのだけど、まだ怖くて」
と俯くパトリシア様に、
「こんな時こそ殿下を頼って良いのでは?今はパトリシア様のお体を第一に考えませんとね」
と私が微笑めば、
「ずっと……男児でなければ、そう思っていたの。でも今は健康に生まれてきてくれるなら、どちらでも良いと思えるわ」
とパトリシア様も微笑んだ。
「会える日が楽しみですね」
「ええ。とっても」
そう言ったパトリシア様の顔はまるで聖母の様だった。
「そうだわ。この前は王太后様への贈り物、ありがとうございました。昨日、早速王太后様もお見舞いに来て下さって、お礼を言われたわ」
「王太后様もパトリシア様の事を大変心配しておいででしたから、元気そうな顔を見れて、さぞやお喜びだったでしょう」
「王太后様には本当に可愛がっていただいてるの。有り難いわ。あ、この前贈った絵もサロンに飾ったのですって。是非、ステラ様にも見ていただきたいと仰っていましたわ」
「まぁ、それは是非見てみたいですわ。王太后様の宮へお邪魔しようかしら?」
なーんて笑っていたら、直ぐ様、王太后様から本当に呼び出されてしまった。
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