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文化祭・その④
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文化祭2日目。
私の給仕は午後が担当だ。
昨日が予想以上に盛況だったので、色々と不足した分の買い出しに来ている。
「ねぇ、森田くん。生徒会長が買い出しに着いてきて良いわけ?
学校離れるの不味いんじゃない?」
「ん?まぁ、そんな時間かかる訳じゃないし、花音1人じゃ荷物全部は持てないだろ?
俺もクラスの事、全然ノータッチだったから、少しはやっとかないとな」
「爽太くんが着いてきてくれるって言ってたから、別に1人じゃなかったんだけど。まぁ、さっさと買って帰ればいいか!
森田くんも、少しはクラスに貢献したいって事だよね。
じゃあ、ちゃっちゃと終わらせよう」
私達は必要な物をメモを見ながら買い物カゴへ入れていく。
「…いつから爽太の事名前で呼んでんの?」
「ん?あぁ。昨日から。呼んでくれって言われたし」
「そういえば、昨日、一緒に文化祭まわってたんだってな?結構、目立ってたみたいだぞ」
「え?マジで?仕方ないかぁ…爽太くん目立つもんね」
「……付き合ってんの?」
「はぁ?んな訳ないじゃん。
爽太くんとまともに話すようになったのも、この文化祭が初めてだよ」
「…のわりに仲良いな」
「うーん。仲良しの定義が分かんないけど、普通じゃない?
それよりは森田くんとの方がよく喋ってると思うけど?」
「いや、それは生徒会だからだろ?」
「確かにそうだけど、それを言うなら爽太くんだって同じクラスだからだよ。
そこに大した違いはないと思うけど?
そんな事より、ホラ、さっさと会計に行くよ!」
「へいへい。悪かったな、変な事聞いて」
「別に。どうでもいいよ」
「…なんか、花音って変わってんな」
「何?悪口?」
「違うよ。普通、爽太みたいなのを皆好きじゃん。女子は」
「カッコいいなとは思うけど、好きかどうかは別じゃない?
別に私が普通と思われなくても良いけどさ。ってか普通ってなんだろうね?」
…まず乙女ゲームに転生している、この状況が普通じゃないしね!
「ごめん。なんかそこまで深く考えてなかったわ。
どうせ花音もカッコいい男が好きなんだろうなって単純に考えただけ。
まぁ、嫉妬だ、嫉妬」
「嫉妬?何で?」
「いや、何となく、花音と1番仲良いのって俺かな~なんて思ってたから」
「だから、さっき私言ったじゃん。森田くんとの方がよく喋るって。
自分が否定したくせに」
「ごめん、ごめん。
じゃあさ、俺の事『和也』って呼んでよ」
「え?嫌だよ」
心の中では『森田』って呼んでるけどな!
「何でだよ!いいじゃん!」
「なんとなく嫌。ちなみに誤解のないように言っとくと、私だってイケメンが好きな普通の女の子だから!」
「都合良い時だけ、普通ぶんなよ!しかも俺がイケメンじゃないみたいじゃん!」
「……イケメンだと思ってるの?」
「いや、なんでそこで可哀想な子を見るような目で俺を見るんだよ!」
…だって森田くんはモブだもん。攻略対象にはなれないんだよ…残念ながら
「あーもう!わかったよ!イケメンじゃなくて悪かったな!」
「アハハ。冗談だって。イケメン…だよ…見る人によっては」
「そのフォローが1番傷つくわ!」
私達はワイワイしながら買い物を済ませ学園に帰る。
まぁ、攻略対象じゃない分、森田くんと居るのは気が楽なのは確かだった。
2日目もうちのカフェは大盛況。
ちなみに爽太くんは学園の王子様、お姫様コンテスト(ゲームの中でもこんなイベントあったのかな?)で王子様に選ばれてた。
流石、メインヒーロー。
夕方になり、校庭では後夜祭が始まった。
私はその様子を暗い生徒会室の窓から見下ろす。
結局、生徒会で、後夜祭の準備があって、カフェは最後までは出来なかった。
こうやって後夜祭が始まれば、生徒会の仕事も一段落だ。
生徒会室の扉が開く。
「…あれ?坂崎さん?
ごめん、暗かったから、誰も居ないのかと思ってた。
後夜祭参加しないの?」
振り向くと本郷先輩が居た。
久しぶりの本郷先輩に胸が高鳴る。
「はい。なんだか少し疲れちゃって。
こうやって皆が楽しそうにしてるのを見てるのも良いなって」
「…電気も点けずに?」
「電気点けちゃうと、外が見えにくくなるから…」
「そっか。じゃあ点けない方が良いね」
そう言って、先輩は私が腰かけてる窓際の椅子に近付いてきた。
ちょっと!これって良い雰囲気じゃない?
「先輩は後夜祭、参加しないんですか?」
「僕も少し疲れちゃってね」
3年生は文化祭は自由参加だ。受験で忙しいから
「受験勉強、大変なんですか?」
受験の話はタブーかな?とは思ったが、今は他の話題が見つからなかった。
「そうだね。でも勉強ばっかりでも息が詰まるから、適当に息抜きしてるよ」
良かった…雰囲気は悪くない
「そうですよね。メリハリは必要ですね」
「ふふっ。そうだね。
坂崎さんは生徒会どう?森田が困らせてるんじゃない?」
「正直言うと、結構大変だなって思ってます。
でも、やってなかったら経験出来てない事も多いと思うので」
「そうか。何事も経験って事だね。
坂崎さんは卒業後ってどうするの?大学進学?」
…正直、何も考えてなかった。
だってこのゲームは卒業式の日にエンディングを迎えるのだから。
その後ってどうなるんだろ?ここはゲームであってゲームじゃない。
どんなエンディングを迎える事になっても、私の人生はここで続いていくのだろうか?
ならば、今後の事も考えなければならない。
…え?パラ上げの他に受験勉強もしなきゃダメなの?私は目の前が真っ暗になった。
「…坂崎さん?大丈夫?」
私は先輩の声にハッとする
「あ、すみません。ちょっとボーッとしちゃって。卒業後の事…何も考えてなくて」
「そうか。坂崎さんは夢とかあるの?」
夢?夢は本郷先輩とハッピーエンドを迎える事だけど。
ハッピーエンドを迎えた後は?本郷先輩と付き合って…その後は?
「…夢は…お嫁さん?ですかね?」
「え?そうなの?お嫁さん?」
「いや…いずれって事で。アハハ。子どもみたいでしたね」
「いや、いいんじゃない?お嫁さん。
…坂崎さんは好きな人いるの?」
…貴方です!って言えたらどんなに良いか。でも、こんなタイミングで告白なんて、乙女ゲームとしては絶対ダメだよね?
「いえ。今は居ないですかね」
「そっか…森田じゃないんだ?」
はぁ?!また何故森田?
私の給仕は午後が担当だ。
昨日が予想以上に盛況だったので、色々と不足した分の買い出しに来ている。
「ねぇ、森田くん。生徒会長が買い出しに着いてきて良いわけ?
学校離れるの不味いんじゃない?」
「ん?まぁ、そんな時間かかる訳じゃないし、花音1人じゃ荷物全部は持てないだろ?
俺もクラスの事、全然ノータッチだったから、少しはやっとかないとな」
「爽太くんが着いてきてくれるって言ってたから、別に1人じゃなかったんだけど。まぁ、さっさと買って帰ればいいか!
森田くんも、少しはクラスに貢献したいって事だよね。
じゃあ、ちゃっちゃと終わらせよう」
私達は必要な物をメモを見ながら買い物カゴへ入れていく。
「…いつから爽太の事名前で呼んでんの?」
「ん?あぁ。昨日から。呼んでくれって言われたし」
「そういえば、昨日、一緒に文化祭まわってたんだってな?結構、目立ってたみたいだぞ」
「え?マジで?仕方ないかぁ…爽太くん目立つもんね」
「……付き合ってんの?」
「はぁ?んな訳ないじゃん。
爽太くんとまともに話すようになったのも、この文化祭が初めてだよ」
「…のわりに仲良いな」
「うーん。仲良しの定義が分かんないけど、普通じゃない?
それよりは森田くんとの方がよく喋ってると思うけど?」
「いや、それは生徒会だからだろ?」
「確かにそうだけど、それを言うなら爽太くんだって同じクラスだからだよ。
そこに大した違いはないと思うけど?
そんな事より、ホラ、さっさと会計に行くよ!」
「へいへい。悪かったな、変な事聞いて」
「別に。どうでもいいよ」
「…なんか、花音って変わってんな」
「何?悪口?」
「違うよ。普通、爽太みたいなのを皆好きじゃん。女子は」
「カッコいいなとは思うけど、好きかどうかは別じゃない?
別に私が普通と思われなくても良いけどさ。ってか普通ってなんだろうね?」
…まず乙女ゲームに転生している、この状況が普通じゃないしね!
「ごめん。なんかそこまで深く考えてなかったわ。
どうせ花音もカッコいい男が好きなんだろうなって単純に考えただけ。
まぁ、嫉妬だ、嫉妬」
「嫉妬?何で?」
「いや、何となく、花音と1番仲良いのって俺かな~なんて思ってたから」
「だから、さっき私言ったじゃん。森田くんとの方がよく喋るって。
自分が否定したくせに」
「ごめん、ごめん。
じゃあさ、俺の事『和也』って呼んでよ」
「え?嫌だよ」
心の中では『森田』って呼んでるけどな!
「何でだよ!いいじゃん!」
「なんとなく嫌。ちなみに誤解のないように言っとくと、私だってイケメンが好きな普通の女の子だから!」
「都合良い時だけ、普通ぶんなよ!しかも俺がイケメンじゃないみたいじゃん!」
「……イケメンだと思ってるの?」
「いや、なんでそこで可哀想な子を見るような目で俺を見るんだよ!」
…だって森田くんはモブだもん。攻略対象にはなれないんだよ…残念ながら
「あーもう!わかったよ!イケメンじゃなくて悪かったな!」
「アハハ。冗談だって。イケメン…だよ…見る人によっては」
「そのフォローが1番傷つくわ!」
私達はワイワイしながら買い物を済ませ学園に帰る。
まぁ、攻略対象じゃない分、森田くんと居るのは気が楽なのは確かだった。
2日目もうちのカフェは大盛況。
ちなみに爽太くんは学園の王子様、お姫様コンテスト(ゲームの中でもこんなイベントあったのかな?)で王子様に選ばれてた。
流石、メインヒーロー。
夕方になり、校庭では後夜祭が始まった。
私はその様子を暗い生徒会室の窓から見下ろす。
結局、生徒会で、後夜祭の準備があって、カフェは最後までは出来なかった。
こうやって後夜祭が始まれば、生徒会の仕事も一段落だ。
生徒会室の扉が開く。
「…あれ?坂崎さん?
ごめん、暗かったから、誰も居ないのかと思ってた。
後夜祭参加しないの?」
振り向くと本郷先輩が居た。
久しぶりの本郷先輩に胸が高鳴る。
「はい。なんだか少し疲れちゃって。
こうやって皆が楽しそうにしてるのを見てるのも良いなって」
「…電気も点けずに?」
「電気点けちゃうと、外が見えにくくなるから…」
「そっか。じゃあ点けない方が良いね」
そう言って、先輩は私が腰かけてる窓際の椅子に近付いてきた。
ちょっと!これって良い雰囲気じゃない?
「先輩は後夜祭、参加しないんですか?」
「僕も少し疲れちゃってね」
3年生は文化祭は自由参加だ。受験で忙しいから
「受験勉強、大変なんですか?」
受験の話はタブーかな?とは思ったが、今は他の話題が見つからなかった。
「そうだね。でも勉強ばっかりでも息が詰まるから、適当に息抜きしてるよ」
良かった…雰囲気は悪くない
「そうですよね。メリハリは必要ですね」
「ふふっ。そうだね。
坂崎さんは生徒会どう?森田が困らせてるんじゃない?」
「正直言うと、結構大変だなって思ってます。
でも、やってなかったら経験出来てない事も多いと思うので」
「そうか。何事も経験って事だね。
坂崎さんは卒業後ってどうするの?大学進学?」
…正直、何も考えてなかった。
だってこのゲームは卒業式の日にエンディングを迎えるのだから。
その後ってどうなるんだろ?ここはゲームであってゲームじゃない。
どんなエンディングを迎える事になっても、私の人生はここで続いていくのだろうか?
ならば、今後の事も考えなければならない。
…え?パラ上げの他に受験勉強もしなきゃダメなの?私は目の前が真っ暗になった。
「…坂崎さん?大丈夫?」
私は先輩の声にハッとする
「あ、すみません。ちょっとボーッとしちゃって。卒業後の事…何も考えてなくて」
「そうか。坂崎さんは夢とかあるの?」
夢?夢は本郷先輩とハッピーエンドを迎える事だけど。
ハッピーエンドを迎えた後は?本郷先輩と付き合って…その後は?
「…夢は…お嫁さん?ですかね?」
「え?そうなの?お嫁さん?」
「いや…いずれって事で。アハハ。子どもみたいでしたね」
「いや、いいんじゃない?お嫁さん。
…坂崎さんは好きな人いるの?」
…貴方です!って言えたらどんなに良いか。でも、こんなタイミングで告白なんて、乙女ゲームとしては絶対ダメだよね?
「いえ。今は居ないですかね」
「そっか…森田じゃないんだ?」
はぁ?!また何故森田?
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