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第25話

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マギーが用意してくれた食事を取りながら、

「ねぇ、王妃って……何するの?」
と尋ねる。こちとら王妃初心者だ。王妃という人間が毎日何をして過ごしているのか、想像すら出来ない。

「何も」
お茶を注ぎながらマギーはこちらを見ずにそう言った。

「何も?」

「はい。何も」

「何もしないで、食べて寝るだけ?それが王妃の仕事なの?」
私がそう言うと、マギーはちらりとこちらを見た。

「普通の王妃はそうではありませんが、メリッサ様はそうです。王妃主催のお茶会も夜会でのダンスもなし。孤児院への慰問も、教会でのバザーもありません」

「何故?」

「……メリッサ様は王妃教育を施されておりません。侯爵のご令嬢ですから、それなりの振る舞いはもちろん出来ますが、陛下はメリッサ様のやりたくない事はしなくて良いと」

「どうして?」

「さぁ。知りたくば陛下に理由をお伺いしたらどうです?」
そう言ってマギーはこの話は終わりと言わんばかりに、

「食事が済んだらそこのベルでお呼び下さい」
と言って、さっさと部屋を出て行った。


私はテーブルの端から端まで上に置かれた食事に目を丸くした。

「何人前?私、どんだけ大食漢だと思われてるの?」

私は驚きながらも、その食事に手を付けた。

……く、苦しい……。お腹がはち切れそうだ。正直、今まで生きてきて『お腹いっぱい!』と思えるまで食べた記憶がない。何となくいつも物足りない……腹八分目ならぬ腹六分目ぐらいの食事で自分を満たしていた。それが腹四分目ぐらいになる時も良くあったが。

そんな生活をしていた自分が食事を残す事など考えられなくて、私は生まれて初めての経験を終え、豪華なドレスのまま、長椅子に寝転んだ。……苦しくて起き上がれそうにない……。

ゴロンと寝転んでも十分な広さの長椅子に寝そべりながら、天井を眺める。物凄く高い。今まで私が寝起きしていた部屋とは段違いだ。

私は何故……ここに連れて来られたのだろう。『身代わり』という言葉。何故王妃に身代わりが必要なのか。……わからない事だらけだ。

お腹が一杯になれば、次は眠くなる。本能の欲求に忠実な自分の体に苦笑した。
私は考える事を放棄して、そのまま瞳を閉じた。
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