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第22話
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「メリッサ様、ジョシュ様が首を長くしてお待ちですよ」
マギーの声にメリッサと呼ばれた女性がハッとしたかの様に声を上げた。
「そうね!ジョシュは今までずっと私だけを待っていてくれたんだもの。これ以上待たせちゃ悪いわね」
そう言ってにっこりと笑う。紅い口が弧を描くが私はそれを恐ろしいものの様に見ていた。
マギーに促され私から離れて行くメリッサを見送る。その後ろではマギーが私にほんの少し頭を下げた。その顔は私に憐憫の情を抱いているかの様な表情だった。
と、ここで私は今後自分がどうしたら良いのかを何も聞かされていない事に気づく。
こんな豪華なドレスを着せられ、豪華な長椅子に座らされ、広い部屋にポツンと一人。心細さに泣きたくなるが、この化粧が落ちるのも腕を振るってくれた、公爵家の侍女長とリタに申し訳なく、それも出来ずにいた。
暫くすると、マギー一人が戻って来た。
そして彼女はこう言った。
「お待たせいたしました。ご自分のお部屋に戻りましょうか、メリッサ様」
と。
「な、何?!わ、私の名前はニコ……」
怖い。さっきのメリッサという女性に言われた言葉と相まって、自分を他の名で呼ばれた事に恐怖を覚えた。ここで、頷いてはいけない。私の本能がそう告げていた。
しかし、それを遮って、マギーは続ける。
「貴女はメリッサ様です。このレインズ王国の王妃、メリッサ・レインズ。名を呼ぶのが不快なら妃陛下と呼びましょうか?」
マギーの顔は至極真面目で、冗談を言っているとは到底思えない。そして私はその時思い出していた。この国の王妃が『メリッサ』という名前だった事を。
私達平民にとって、王妃の名前が何であろうとどうでも良かった。だから今の今まで失念していた。
悪名高き王妃『メリッサ・レインズ』
国のお金が無くなったのは、この女性が原因だと皆が口々に言っていた。
『王妃ってのはアレだな。何の役にも立たぬのに、金だけ湯水の様に使う。あいつの為に俺等は税金を払ってるんじゃねぇんだよ!』
『本当だよ。跡継ぎも産んでないっていうじゃないか』
『その理由を知ってるか?体型が崩れるのはイヤ!って言ってたらしいぜ?』
『じゃあ何のために王妃になったんだ?この世の贅を独り占めする為か?』
『いやぁ、全くだ。食事も口に合わなきゃ、全て捨てるらしい。ほら北レインズ地方の小麦。あそこの上質な小麦は全て王族に取られちまってるのも、あの王妃のせいだとよ。あの小麦で作ったパンしか口にしないんだと!』
『はぁ~。貧乏な者達が飢えて苦しんでるってのにかい?』
『全くその通りだよ。小麦を作ってる農家の奴らなんて、全く自分達の口に入らないって嘆いていたよ。根こそぎ持っていかれるらしい』
『それに王妃は自分の小遣い欲しさに、孤児院への寄付も止めたっていうじゃないか』
『どんだけ強欲なんだって話だよ』
……客達が酒に酔ってそう話していたのを思い出す。あの時は酔っ払いの言う事だと話半分に聞いていたのだが。
マギーの声にメリッサと呼ばれた女性がハッとしたかの様に声を上げた。
「そうね!ジョシュは今までずっと私だけを待っていてくれたんだもの。これ以上待たせちゃ悪いわね」
そう言ってにっこりと笑う。紅い口が弧を描くが私はそれを恐ろしいものの様に見ていた。
マギーに促され私から離れて行くメリッサを見送る。その後ろではマギーが私にほんの少し頭を下げた。その顔は私に憐憫の情を抱いているかの様な表情だった。
と、ここで私は今後自分がどうしたら良いのかを何も聞かされていない事に気づく。
こんな豪華なドレスを着せられ、豪華な長椅子に座らされ、広い部屋にポツンと一人。心細さに泣きたくなるが、この化粧が落ちるのも腕を振るってくれた、公爵家の侍女長とリタに申し訳なく、それも出来ずにいた。
暫くすると、マギー一人が戻って来た。
そして彼女はこう言った。
「お待たせいたしました。ご自分のお部屋に戻りましょうか、メリッサ様」
と。
「な、何?!わ、私の名前はニコ……」
怖い。さっきのメリッサという女性に言われた言葉と相まって、自分を他の名で呼ばれた事に恐怖を覚えた。ここで、頷いてはいけない。私の本能がそう告げていた。
しかし、それを遮って、マギーは続ける。
「貴女はメリッサ様です。このレインズ王国の王妃、メリッサ・レインズ。名を呼ぶのが不快なら妃陛下と呼びましょうか?」
マギーの顔は至極真面目で、冗談を言っているとは到底思えない。そして私はその時思い出していた。この国の王妃が『メリッサ』という名前だった事を。
私達平民にとって、王妃の名前が何であろうとどうでも良かった。だから今の今まで失念していた。
悪名高き王妃『メリッサ・レインズ』
国のお金が無くなったのは、この女性が原因だと皆が口々に言っていた。
『王妃ってのはアレだな。何の役にも立たぬのに、金だけ湯水の様に使う。あいつの為に俺等は税金を払ってるんじゃねぇんだよ!』
『本当だよ。跡継ぎも産んでないっていうじゃないか』
『その理由を知ってるか?体型が崩れるのはイヤ!って言ってたらしいぜ?』
『じゃあ何のために王妃になったんだ?この世の贅を独り占めする為か?』
『いやぁ、全くだ。食事も口に合わなきゃ、全て捨てるらしい。ほら北レインズ地方の小麦。あそこの上質な小麦は全て王族に取られちまってるのも、あの王妃のせいだとよ。あの小麦で作ったパンしか口にしないんだと!』
『はぁ~。貧乏な者達が飢えて苦しんでるってのにかい?』
『全くその通りだよ。小麦を作ってる農家の奴らなんて、全く自分達の口に入らないって嘆いていたよ。根こそぎ持っていかれるらしい』
『それに王妃は自分の小遣い欲しさに、孤児院への寄付も止めたっていうじゃないか』
『どんだけ強欲なんだって話だよ』
……客達が酒に酔ってそう話していたのを思い出す。あの時は酔っ払いの言う事だと話半分に聞いていたのだが。
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