21 / 68
第21話
しおりを挟む
私が不思議そうにそのドレスを見ていると、
「いつまでも下着姿で居たいのなら、私は構いませんが?」
とマギーが口にした。
「き……着ます」
私が小さくそう言うと、マギーは
「ではお手伝いさせていただきます」
とまた手早く私にドレスを着せていく。流れ作業の様に無駄な動きのないマギーに、私は感心してしまった。
しかし、貴族のドレスというのは、何故こんなに複雑なのだろう。絶対に一人では着られない服なんて、非効率極まりない。
私は着せられるだけなのに、疲労を感じて着替え終わる頃にはぐったりとしてしまった。
これなら仕事で朝から晩まで働いていた方がマシだと、心からそう思う。
私は着て来た物よりも、更に豪華なドレスの重さに辟易していた。
私がぐったりとしていると、
「あちらの長椅子に腰掛けてお待ち下さい」
とマギーから声が掛かる。
そしてマギーはまた扉の向こうに消えたかと思えば、先ほどまで私が着ていたドレスを身に纏った女性の手を引いて現れた。……あのメリッサと呼ばれていた女性は私の被っていた帽子も身に着けゆっくりと私に近づくと、
「……貴女、ジョシュとはどんな関係?」
と冷たい口調で私に尋ねた。
私は目の前に立つ女性を見上げる。……本当に私に良く似ている。特に……目が。珍しいと思っていたこの瞳の色。同じだ。
「別に……。何の関係もありません」
強いて言うなら『雇い主』だろうか?だが私は公爵家に連れて来られてから今の今まで、何の仕事も与えられていない。
言われるがまま。着せ替え人形の様に着飾らせたかと思えば、王宮に連れて来られて、また着せ替え人形だ。私の方が質問したい。『貴女は誰なの?』と。
「そう……。一つ貴女に言っておきたい事があるの」
メリッサと呼ばれた女性は、さっき公爵様の前で美しい涙を流していた人物とは思えない程の高圧的な態度で、
「勘違いしないでね。貴女は所詮身代わりなの。私の代役。陛下にとっても、ジョシュにとっても。貴女自体に存在価値はない。価値があるのはあくまでも私。それを忘れないで」
と私に言った。
私は彼女の言葉の半分も理解出来なくてポカンとしてしまう。いや、言葉が通じない訳ではない。彼女が何を言っているのか、その意味が全く分からずに困惑する。
身代わり?代役?この人は何を言っているのだろう。
「いつまでも下着姿で居たいのなら、私は構いませんが?」
とマギーが口にした。
「き……着ます」
私が小さくそう言うと、マギーは
「ではお手伝いさせていただきます」
とまた手早く私にドレスを着せていく。流れ作業の様に無駄な動きのないマギーに、私は感心してしまった。
しかし、貴族のドレスというのは、何故こんなに複雑なのだろう。絶対に一人では着られない服なんて、非効率極まりない。
私は着せられるだけなのに、疲労を感じて着替え終わる頃にはぐったりとしてしまった。
これなら仕事で朝から晩まで働いていた方がマシだと、心からそう思う。
私は着て来た物よりも、更に豪華なドレスの重さに辟易していた。
私がぐったりとしていると、
「あちらの長椅子に腰掛けてお待ち下さい」
とマギーから声が掛かる。
そしてマギーはまた扉の向こうに消えたかと思えば、先ほどまで私が着ていたドレスを身に纏った女性の手を引いて現れた。……あのメリッサと呼ばれていた女性は私の被っていた帽子も身に着けゆっくりと私に近づくと、
「……貴女、ジョシュとはどんな関係?」
と冷たい口調で私に尋ねた。
私は目の前に立つ女性を見上げる。……本当に私に良く似ている。特に……目が。珍しいと思っていたこの瞳の色。同じだ。
「別に……。何の関係もありません」
強いて言うなら『雇い主』だろうか?だが私は公爵家に連れて来られてから今の今まで、何の仕事も与えられていない。
言われるがまま。着せ替え人形の様に着飾らせたかと思えば、王宮に連れて来られて、また着せ替え人形だ。私の方が質問したい。『貴女は誰なの?』と。
「そう……。一つ貴女に言っておきたい事があるの」
メリッサと呼ばれた女性は、さっき公爵様の前で美しい涙を流していた人物とは思えない程の高圧的な態度で、
「勘違いしないでね。貴女は所詮身代わりなの。私の代役。陛下にとっても、ジョシュにとっても。貴女自体に存在価値はない。価値があるのはあくまでも私。それを忘れないで」
と私に言った。
私は彼女の言葉の半分も理解出来なくてポカンとしてしまう。いや、言葉が通じない訳ではない。彼女が何を言っているのか、その意味が全く分からずに困惑する。
身代わり?代役?この人は何を言っているのだろう。
123
お気に入りに追加
546
あなたにおすすめの小説
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。
貴妃エレーナ
無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」
後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。
「急に、どうされたのですか?」
「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」
「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」
そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。
どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。
けれど、もう安心してほしい。
私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。
だから…
「陛下…!大変です、内乱が…」
え…?
ーーーーーーーーーーーーー
ここは、どこ?
さっきまで内乱が…
「エレーナ?」
陛下…?
でも若いわ。
バッと自分の顔を触る。
するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。
懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!
もう一度だけ。
しらす
恋愛
私の一番の願いは、貴方の幸せ。
最期に、うまく笑えたかな。
**タグご注意下さい。
***ギャグが上手く書けなくてシリアスを書きたくなったので書きました。
****ありきたりなお話です。
*****小説家になろう様にても掲載しています。
会うたびに、貴方が嫌いになる
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
長身の王女レオーネは、侯爵家令息のアリエスに会うたびに惹かれた。だが、守り役に徹している彼が応えてくれたことはない。彼女が聖獣の力を持つために発情期を迎えた時も、身体を差し出して鎮めてくれこそしたが、その後も変わらず塩対応だ。悩むレオーネは、彼が自分とは正反対の可愛らしい令嬢と親しくしているのを目撃してしまう。優しく笑いかけ、「小さい方が良い」と褒めているのも聞いた。失恋という現実を受け入れるしかなかったレオーネは、二人の妨げになるまいと決意した。
アリエスは嫌そうに自分を遠ざけ始めたレオーネに、動揺を隠せなくなった。彼女が演技などではなく、本気でそう思っていると分かったからだ。
【完結】堅物な婚約者には子どもがいました……人は見かけによらないらしいです。
大森 樹
恋愛
【短編】
公爵家の一人娘、アメリアはある日誘拐された。
「アメリア様、ご無事ですか!」
真面目で堅物な騎士フィンに助けられ、アメリアは彼に恋をした。
助けたお礼として『結婚』することになった二人。フィンにとっては公爵家の爵位目当ての愛のない結婚だったはずだが……真面目で誠実な彼は、アメリアと不器用ながらも徐々に距離を縮めていく。
穏やかで幸せな結婚ができると思っていたのに、フィンの前の彼女が現れて『あの人の子どもがいます』と言ってきた。嘘だと思いきや、その子は本当に彼そっくりで……
あの堅物婚約者に、まさか子どもがいるなんて。人は見かけによらないらしい。
★アメリアとフィンは結婚するのか、しないのか……二人の恋の行方をお楽しみください。
番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ
紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか?
何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。
12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
誰の代わりに愛されているのか知った私は優しい嘘に溺れていく
矢野りと
恋愛
彼がかつて愛した人は私の知っている人だった。
髪色、瞳の色、そして後ろ姿は私にとても似ている。
いいえ違う…、似ているのは彼女ではなく私だ。望まれて嫁いだから愛されているのかと思っていたけれども、それは間違いだと知ってしまった。
『私はただの身代わりだったのね…』
彼は変わらない。
いつも優しい言葉を紡いでくれる。
でも真実を知ってしまった私にはそれが嘘だと分かっているから…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる