なんでも相談所〈よろず屋〉で御座います!~ただしお客様は妖怪に限る~

初瀬 叶

文字の大きさ
上 下
36 / 55

case 鬼 ⑮

しおりを挟む

「ここが…ONIGASIMA…鬼がたくさんいるんですよね…」

「何を当たり前の事を。さぁ、行くぞ、兵六さんが待ってる」

「兵六さん?」

「あぁ、連絡したら、紫電の邸で待ってるってさ」

私達は、紫電の邸へ向かう。
ONIGASIMAは私が思うよりずっと近代的だった。

鬼達は、私達が珍しいのだろう、ジロジロと眺めているが、妖怪である事がわかっているので、警戒は怠っていないようだ。

人間がこの島に来る事はない。この島へ入れるのは貞光の血をひく帝だけなのだから。


紫電の邸は昔ながらの日本家屋でかなり立派だ。まるで大蔵の家のよう。

立派な門の前で私達が名乗ると門番は邸から1人の鬼を連れてきた。

鬼にしては小柄だろう。2mぐらいの背丈のがっちりとした鬼が私達を迎えてくれた。

「私の名は雨月。紫電様に仕える者です。大蔵八雲様、凛様でいらっしゃいますね。当主がお待ちで御座います。どうぞこちらへ」

私達が案内されたのは広く立派な応接間だった。
そこには、

「よう!待っとったぞ!」
と軽く手を挙げた兵六さんと、禍々しい紋様に顔中が覆い尽くされた大きな鬼がいた。

これが紫電だろう。きっとこの紋様が無ければ見惚れてしまう程の美丈夫だ。

「私が紫電だ。待っていた。話をしよう」

私達が座布団に座ると、直ぐ様さっきの雨月がお茶を持ってきた。

先に口を開いたのは紫電だ。

「昨日、兵六殿より話を聞いた。私のこれは『呪い』らしいな」

「はい。先日、紫苑さんの姿を拝見させて頂きました。間違いないと思います。
しかし、貴方の様に体中全てを覆い尽くされれば、死に至っていてもおかしくないと思うのですが…」
と私が答えると、

「確かに。この島で死んだ鬼達はこの紋様が体中、所狭しと浮かび上がっておった。きっと私ももう少しで死ぬ運命であろう」
紫電は自分の命であるのに、まるで他人事の様に淡々と語った。

兵六さんは、

「紫電の妖力は普通の鬼の数倍はあるからな。普通ならとっくに死んどるじゃろう。それに、こいつもこうやっておるが、今は話すのが精一杯じゃ。そのせいでこの島の結界も揺らいでおるわ」

「紫苑さんも、紫電さんに何かあれば結界がどうなるかと、心配していました」
と私が答えれば、

「結界は私の妖力で形成されているからな。
この呪いは…多分鬼の妖力を吸い取り増殖していくタイプなのであろう。
病かと思っておったが、呪いと言われる方が説明がつく」
淡々と話しているが、紫電さんの手は微かに震えている。
もしかすると、既に限界が近いのかもしれない。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

便利屋ブルーヘブン、営業中。~そのお困りごと、大天狗と鬼が解決します~

卯崎瑛珠
キャラ文芸
とあるノスタルジックなアーケード商店街にある、小さな便利屋『ブルーヘブン』。 店主の天さんは、実は天狗だ。 もちろん人間のふりをして生きているが、なぜか問題を抱えた人々が、吸い寄せられるようにやってくる。 「どんな依頼も、断らないのがモットーだからな」と言いつつ、今日も誰かを救うのだ。 神通力に、羽団扇。高下駄に……時々伸びる鼻。 仲間にも、実は大妖怪がいたりして。 コワモテ大天狗、妖怪チート!?で、世直しにいざ参らん! (あ、いえ、ただの便利屋です。) ----------------------------- ほっこり・じんわり大賞奨励賞作品です。 アルファポリス文庫より、書籍発売中です!

護堂先生と神様のごはん

栗槙ひので
キャラ文芸
 亡くなった叔父の家を譲り受ける事になった、中学校教師の護堂夏也は、山間の町の古い日本家屋に引っ越して来た。静かな一人暮らしが始まるはずが、引っ越して来たその日から、食いしん坊でへんてこな神様と一緒に暮らす事になる。  気づけば、他にも風変わりな神様や妖怪まで現れて……。 季節を通して巡り合う、神様や妖怪達と織り成す、ちょっと風変わりな日々。お腹も心もほっこり温まる、ほのぼの田舎暮らし奇譚。 2019.10.8 エブリスタ 現代ファンタジー日別ランキング一位獲得 2019.10.29 エブリスタ 現代ファンタジー月別ランキング一位獲得

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

おにぎり屋さんの裏稼業 〜お祓い請け賜わります〜

瀬崎由美
キャラ文芸
高校2年生の八神美琴は、幼い頃に両親を亡くしてからは祖母の真知子と、親戚のツバキと一緒に暮らしている。 大学通りにある屋敷の片隅で営んでいるオニギリ屋さん『おにひめ』は、気まぐれの営業ながらも学生達に人気のお店だ。でも、真知子の本業は人ならざるものを対処するお祓い屋。霊やあやかしにまつわる相談に訪れて来る人が後を絶たない。 そんなある日、祓いの仕事から戻って来た真知子が家の中で倒れてしまう。加齢による力の限界を感じた祖母から、美琴は祓いの力の継承を受ける。と、美琴はこれまで視えなかったモノが視えるようになり……。 第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました。

後宮浄魔伝~視える皇帝と浄魔の妃~

二位関りをん
キャラ文芸
桃玉は10歳の時に両親を失い、おじ夫妻の元で育った。桃玉にはあやかしを癒やし、浄化する能力があったが、あやかしが視えないので能力に気がついていなかった。 しかし桃玉が20歳になった時、村で人間があやかしに殺される事件が起き、桃玉は事件を治める為の生贄に選ばれてしまった。そんな生贄に捧げられる桃玉を救ったのは若き皇帝・龍環。 桃玉にはあやかしを祓う力があり、更に龍環は自身にはあやかしが視える能力があると伝える。 「俺と組んで後宮に蔓延る悪しきあやかしを浄化してほしいんだ」 こうして2人はある契約を結び、九嬪の1つである昭容の位で後宮入りした桃玉は龍環と共にあやかし祓いに取り組む日が始まったのだった。

いつもの帰り道で

時和 シノブ
キャラ文芸
道に落ちた物を観察することが趣味の女子大学生の真美は、道端でボロボロの巾着袋を見つける。 真美は、その巾着袋を一度は交番に届けるのだが…… *表紙画像はFhoto AC様よりお借りしています。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー

汐埼ゆたか
キャラ文芸
准教授の藤波怜(ふじなみ れい)が一人静かに暮らす一軒家。 そこに迷い猫のように住み着いた女の子。 名前はミネ。 どこから来たのか分からない彼女は、“女性”と呼ぶにはあどけなく、“少女”と呼ぶには美しい ゆるりと始まった二人暮らし。 クールなのに優しい怜と天然で素直なミネ。 そんな二人の間に、目には見えない特別な何かが、静かに、穏やかに降り積もっていくのだった。 ***** ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。 ※他サイト掲載

処理中です...