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番外編

番外編・その37

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「もうドレスは無理。胸の下に切り替えがあって、スカートの部分は軽い素材でお願いね」

「乳母車なんだけど、双子仕様にして欲しいの。2人が並んで乗れるように。
でも、あまり重くなってはダメよ?コントロールが不自由になるわ」

「ベビーベッドはこんな感じでお願い。あとね、別にこんな感じでスイングするベッドを作って欲しいの。ユラユラ動くタイプのベッドね。出来るかしら」

「こうして…赤ちゃんを抱っこ出来る紐を作ってほしいの『スリング』って言うのよ。
肩の部分は少し厚めにして…幅も欲しいわ。なるべく圧力を分散したいの」



私の周りを取り囲む人々は、私からの一言一句を聞き逃すまいと、必死にメモを取る。
ある者は洋服のデザイナー、ある者は私が出資してタイヤを作り出したエンジニア、そしてまたある者は家具職人。

そして私とその者達とのやり取りを呆れた様子で眺めているマルコとナラとマリア…そしてジュリエッタだ。

「俺は『任せてくれ』と言ったんだけどな」
と言うマルコに、

「クロエ様は結局…じっとしていられない性分なんですよ」
と溜め息交じりに答えるナラ。

「こうなったクロエ様を止められる人などおりませんよ」
とマリアが肩を竦めれば、

「久しぶりにお会いしたけど…妊娠していても相変わらずパワフルね」
と目を丸くしているジュリエッタ。


ジュリエッタはドレスの仮縫いが仕上がったので、実際袖を通してみてサイズ直しが必要だからと、久しぶりに王都へと帰って来ていた。

妊娠した私にも会うのを楽しみにしてくれていたようなのだが、挨拶もそこそこに、バリバリと皆に指示を出す私を見て、驚きを隠せないようだ。


「さぁ、ジュリエッタ様、ドレスの試着をしましょうか?向こうのお部屋に用意してありますから」
とナラがジュリエッタに言うと、

「もう…。『様』は要らないって言ったでしょう?ナラはもう…家族なんだから」
とジュリエッタは少し口を尖らせた。

それに苦笑しながらもナラは、

「これはもう癖だと思って下さいませ。
呼び方がどうであれ…私もジュリエッタ様を大切な家族だと思っておりますから」
と答える。

それにジュリエッタも苦笑しながら、

「それもそうね。重要なのは呼び方ではないもの。さ!ドレス!ドレス!どんな風に仕上がったか楽しみだわ~!」
と手を叩いて喜んだ。

ジュリエッタとナラは別の部屋へ移動していく。

それを見送ったマルコ様も、

「クロエ!じゃあ俺も出掛けてくるよ。くれぐれも無理はするなよ?!」
と私の背中へ声をかけた。

私は振り返ると、

「行ってらっしゃい!気をつけてね」
と笑顔で手を振った。

そんな私に、

「無理はするな…って言うのが無理なのかな?」
とマルコ様は呟きながら、仕事へ向かうべく部屋を出て行った。

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