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番外編
番外編・その30
しおりを挟む私とデボラ様が部屋から出ると、廊下には少し硬い顔をした、セドリックが待っていた。
デボラ様の姿を見て、セドリックはホッとしたような表情になる。
「お待たせして申し訳ありませんでした」
と謝るデボラ様に、
「緊張しているのは、私も同じです。さぁ、行きましょうか」
とセドリックは、エスコートする為に腕を差し出した。
私の前を行く2人。
セドリックはサッと私に振り返ると、声を出さずに(ありがとう)と言った。
私はそれを見て頷く。
2人が先に行ったのを見送っていると、
「うちの奥様は女性まで魅了するのかな?」
と後ろから声がした。
「マルコ!迎えに来てくれたの?ありがとう」
と私が振り返って答えると、マルコ様は私の横に並び、私をエスコートする為に腕を差し出した。
「デボラ様、大丈夫そう?」
と訊ねるマルコ様に、
「ええ。結婚前には、何かと不安になるものよ。特にデボラ様は他国から来られたでしょう?でも、きっと大丈夫よ。セドリックが付いてるわ」
と私は笑顔で答えた。
「さあ、主役の2人が教会の扉に到着する前に、さっさと俺らも席に着こう」
と言うマルコ様の腕を取りながら、
「そうね。私が遅れたら、陛下に何て言われるか」
と私も笑いながら答えた。
式は厳かに、そして豪華に執り行われた。
少しぎこちないけれど、デボラ様も笑顔を見せる。
何故か私の隣に座る陛下が、
「自分の結婚式を殆んど覚えてない。勿体ない事をした」
と小声で私に話しかけてきた。この席順…なんだか解せないんだけど。
私も小声で、
「まぁ。私はよーく覚えておりますよ。
国民の前で挨拶する陛下を出来る限りお支えしなければ…と、そう覚悟を決めた、あの景色を」
と答える。
「…やはり勿体ない事をした」
とほんの少し寂しそうな笑顔になる陛下。
私は、
「あの時があって、今があります。
立場は変わっても、私が陛下をお支えする事に変わりはありません」
と小声で囁く。
陛下は、
「そうだな。これからもよろしく頼むよ」
と笑顔になる。
私はそれに頷いた。
すると、反対側の隣から、
「うちの奥様は、モテモテで困る」
とため息混じりのマルコ様の呟きが聞こえた。
私は黙って、彼の膝に置かれた手を握る。
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「こうしていつも誤魔化されるんだよなぁ」
とまたまた小声で呟いた。
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