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番外編
番外編・その27
しおりを挟む「セドリックもやっと身を固める覚悟が出来て良かったわ」
と私が帰りの馬車の中で言えば、
「まぁ…覚悟と言うより諦めた…ってのが近いだろうけど」
とマルコ様は呟いた。
「?」
私が不思議そうな顔をすると、
「クロエは分からなくて良いんだよ。
宰相も、幸せになると良いな」
とマルコ様は微笑んだ。
「そうね。デボラ様も素敵な方だったし、きっと幸せになるわ。
私もそれを祈ってる。元婚約者の誼みとしてね」
「クロエ…君にとって宰相ってどんな相手だった?」
「そうねぇ…。『同志』みたいなものかしら?
セドリックはデイビット殿下の願いを叶える為に宰相になったんだと思うの。
私もそれに巻き込まれたけど、今ではあの時のセドリックの提案に乗って良かったって思ってるわ。
デイビット殿下の望んだ未来を手助け出来たから。
それに…マルコにも出逢えたし」
と私が言えば、マルコ様は、
「あの時…なんで俺のプロポーズを受けてくれたの?」
と私に質問した。
実は私はマルコ様に自分の気持ちを素直に話した事がない。
『貴方は私の推しなんです』なんて恥ずかしくて今まで言えなかった。
「ねぇ、笑わないで聞いてね」
今ならサラッと真実を口に出来そうな気がする。
「もちろん」
「私ね、ずっとマルコの事が好きだったの。好き…というより憧れ?かしら」
この世界に『推し』って言葉は存在しない。
私のその言葉に、
「うそ…」
と呟いたきりマルコ様は固まった。
「嘘じゃないわ。ある日の夜会でね、貴方を初めて見たの。王宮での夜会だったから、近衛として護衛をしていたのね。
…ある男性が少し酔っていて…周りの人に絡んでその場の雰囲気が悪くなっていたの。
その時、マルコがその男性を連れて出たんだけど、その男性を頭ごなしに注意する訳じゃなくて…まるで友達みたいに話しかけて、凄くナチュラルにその人を会場から出したのよ。
その時のマルコの笑顔がとても素敵だったの。
もちろん私にはセドリックっていう婚約者が居たから、貴方とどうにかなりたいとか…そんな風に思っていた訳じゃないのよ?
でも、王宮での夜会に出る度に、ついマルコの姿を探していたわ。…名前もコッソリ調べちゃったし」
と私が笑うと、マルコ様の顔は真っ赤になった。
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