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番外編

番外編・その8

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「お久しぶりですわね。マダム。何のご用でしょうか?」

「マダムだなんて…他人行儀な…。どうしてお母様と呼んでくれないの?」

私の嫌味とも思える物言いに気づいているのか、気づいていないフリをしてるのか…。

相変わらずの美しさを保ったままの、元母親はニッコリと微笑むと、

間、留守にしてごめんなさいね。
貴女も慣れない侯爵の仕事に加えて、王宮で陛下の片腕として働いているんですってね?!王妃でなくなったのは残念だけど、陛下から一目も二目も置かれる存在なんて、お母様も鼻が高いわ。
それに、ヴィヴォン商会も持ち物なんでしょう?その噂は隣の国にまで及んでいたわ…素晴らしいじゃない!
でも、そんなに忙しくしていれば、体に良くないわ。
お母様が戻って来たから、もう安心して?貴女をしっかりと支えてあげますからね」

…この人の口もよく動く。
勝手な事を言う母に呆れながら、

「まず…。私がやっている事はお父様とほぼ同じ。
王宮で役職を拝命し、その傍ら侯爵領の領地経営。そんな事、王宮で働き、領地を持つ貴族であれば、皆同じようにしています。私が特別なのではありません。
それに…私は貴女が父を支えている姿など、見たことも聞いたこともありませんけど?
そんな貴女が私を支える?冗談も程々にして下さいな」
と私は自分の口元を扇で被った。

「な?!貴女が知らないだけよ!私はきちんとお父様を支えていました!」

と少しムキになる姿を見て、痛いところを突かれたのだな…と分かる。
人間とは、言われたくないことを口にされると逆ギレする生き物だ。

「それに商会はオーヴェル侯爵家の持ち物ではありません。
会長は私の夫である、マルコ・オーヴェルです。私は個人的に出資をしているだけ。
経営は全て夫に任せておりますから、貴女が口を出す権利はありませんのよ?」


「貴女…私の許可も得ずに、伯爵家の三男と結婚したんですってね?リッチ伯爵なんて、そこそこの家柄じゃない。このオーヴェル侯爵家には相応しくないわ。
そんな相手と結婚したなんて…貴女、社交界で笑い者になるつもりなの?」

…今、この女、マルコ様をディスりましたよね?許さないわよ?

「笑い者…私を笑いたい者には笑わせておけば良いのです。そんな者達と付き合っていても自分が卑しくなるだけです。
…あぁ、貴女も笑いたいのなら是非そうなさって?貴女のご実家…アントン伯爵家に正式に抗議を出すまで。私の夫の素晴らしさは私が分かっていれば良い事。他の者がどう言おうと、痛くも痒くも御座いませんわ」
と私が言えば、

「ちょっと!何故実家が出てくるのよ?!」
と元母は顔を強張らせた。
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