43 / 50
母さん⑴
しおりを挟む
最寄りの駅から3つ離れた、映画館やゲームセンターなどが入っている大きなショッピングモールの近くに来ていた。このショッピングモールには、父さんや勇と3人で買い物に来たこともある。
篠田先生と話をすると決めてから、貰った名刺に書かれていたメールアドレスに、メールを送っていた。先生からはすぐに連絡が来て、土曜日の昼過ぎに会う約束をして、場所は先生から指定された。
先生に連れられて、5分ほど歩いているが、このショッピングモールが目当ての場所ではないらしい。歩きながら、小学生の頃の話を幸也と先生がしていて、オレはたまに相槌を打ったりする程度だった。
幸也が一緒に来てくれて、本当に良かった……。
先生はある建物の前で立ち止まり「ここ」と言う。
「えー?歌でもうたうの?」
幸也がビックリした声を出したが、オレも同じ思いだった。
そこはカラオケBOXだった。
「個室で話したいときは、意外といいんだよ」先生はそう言うと中に入っていく。
土曜日ということもあり、カラオケBOXはそこそこ人が来ていたが、予約していたようで、待つことなく部屋に案内された。
「ソフトドリンクは、飲み放題だから好きなの頼んでな」
オレは烏龍茶、幸也はジンジャーエール、先生はアイスコーヒーを頼む。オレと幸也は隣同士に座り、先生は幸也を挟んで90度の位置の横の椅子に座った。
「えっと、コウ……話を聞く前に言っておくけど、今回俺は医者の立場でなく、小学校の時の先生として聞くから、もし医者として関わってほしいなら、俺じゃない方がいいから、他の医者を紹介するよ」
何が大きく違うのかよくわからなかったけど、オレは篠田先生に話を聞いて欲しかった。
「いや。篠田先生がいいです。医者としてでなくても」
「わかった。あと、ユキも軽い気持ちでここにいるなら、初めから聞かない方がいいよ。深い話になるだろうし……」
オレはチラッと幸也の様子を伺う。
「大丈夫です。幸司と僕はしんどい時はシェアしていこうって決めたんです。だから、どんな話でも最後まで聞いて受け止める覚悟があります」
幸也がそう言うと、先生はニコッと笑ってうなづいた。先生の話を聞いて、オレの方が深く考えず幸也を巻き込んでしまったかもと思ったけど、幸也が何の迷いもなく話す姿を見て、オレも覚悟を決めないと、と改めて感じた。
「先生、オレ……今、あんまり調子良くなくて……たぶん、勇と一緒に住むようになってから……勇のことは好きなんだ。だけど時々、勇と一緒にいるのはしんどくなる……」
「うん」
「勇が失敗してるのを見ると、昔の自分を重ねてしまうこともあって……」
先生に体調が悪いのかと聞かれて、何て答えていいのか言い淀む。また、漏らしてしまっているとは言いずらかった。先生はそんなオレの様子に気づいたように、苦笑して話題を変えた。
「メールには、お母さんのことちゃんと考えたいって書いてあったけど、お母さんはどんな人だったんだ?」
今まで、母さんのことはあまり考えないようにしていたから、改めて聞かれると少し悩んでしまう。
篠田先生と話をすると決めてから、貰った名刺に書かれていたメールアドレスに、メールを送っていた。先生からはすぐに連絡が来て、土曜日の昼過ぎに会う約束をして、場所は先生から指定された。
先生に連れられて、5分ほど歩いているが、このショッピングモールが目当ての場所ではないらしい。歩きながら、小学生の頃の話を幸也と先生がしていて、オレはたまに相槌を打ったりする程度だった。
幸也が一緒に来てくれて、本当に良かった……。
先生はある建物の前で立ち止まり「ここ」と言う。
「えー?歌でもうたうの?」
幸也がビックリした声を出したが、オレも同じ思いだった。
そこはカラオケBOXだった。
「個室で話したいときは、意外といいんだよ」先生はそう言うと中に入っていく。
土曜日ということもあり、カラオケBOXはそこそこ人が来ていたが、予約していたようで、待つことなく部屋に案内された。
「ソフトドリンクは、飲み放題だから好きなの頼んでな」
オレは烏龍茶、幸也はジンジャーエール、先生はアイスコーヒーを頼む。オレと幸也は隣同士に座り、先生は幸也を挟んで90度の位置の横の椅子に座った。
「えっと、コウ……話を聞く前に言っておくけど、今回俺は医者の立場でなく、小学校の時の先生として聞くから、もし医者として関わってほしいなら、俺じゃない方がいいから、他の医者を紹介するよ」
何が大きく違うのかよくわからなかったけど、オレは篠田先生に話を聞いて欲しかった。
「いや。篠田先生がいいです。医者としてでなくても」
「わかった。あと、ユキも軽い気持ちでここにいるなら、初めから聞かない方がいいよ。深い話になるだろうし……」
オレはチラッと幸也の様子を伺う。
「大丈夫です。幸司と僕はしんどい時はシェアしていこうって決めたんです。だから、どんな話でも最後まで聞いて受け止める覚悟があります」
幸也がそう言うと、先生はニコッと笑ってうなづいた。先生の話を聞いて、オレの方が深く考えず幸也を巻き込んでしまったかもと思ったけど、幸也が何の迷いもなく話す姿を見て、オレも覚悟を決めないと、と改めて感じた。
「先生、オレ……今、あんまり調子良くなくて……たぶん、勇と一緒に住むようになってから……勇のことは好きなんだ。だけど時々、勇と一緒にいるのはしんどくなる……」
「うん」
「勇が失敗してるのを見ると、昔の自分を重ねてしまうこともあって……」
先生に体調が悪いのかと聞かれて、何て答えていいのか言い淀む。また、漏らしてしまっているとは言いずらかった。先生はそんなオレの様子に気づいたように、苦笑して話題を変えた。
「メールには、お母さんのことちゃんと考えたいって書いてあったけど、お母さんはどんな人だったんだ?」
今まで、母さんのことはあまり考えないようにしていたから、改めて聞かれると少し悩んでしまう。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
お兄ちゃんはお医者さん!?
すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。
如月 陽菜(きさらぎ ひな)
病院が苦手。
如月 陽菜の主治医。25歳。
高橋 翔平(たかはし しょうへい)
内科医の医師。
※このお話に出てくるものは
現実とは何の関係もございません。
※治療法、病名など
ほぼ知識なしで書かせて頂きました。
お楽しみください♪♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる