69 / 95
帰国⑶
しおりを挟む
「えっ?」
先生が素っ頓狂な声を上げる。今日、佑輔さんと会ったと話した時だ。あの後も、ディナータイムが始まるまで泰輔さん達の休憩時間もダラダラと居座ってしまった。
「で、今回は何で帰国したんだ?何か言ってた?」
「一緒に来ていたリアムくんのためみたい」
ご飯を食べ終わって、ボクらが話をしている時、リアムは大人しく持ってきていた薄い本のようなものを見ていた。言葉もわからないだろうし、話に入るのは難しいのだろう。そもそも人見知りも強そうだった。
何を見ているのかとトイレに立った時に、側に寄って覗いて見ると、見覚えのある絵が目に入る。
「あ、これ……」
ボクの声に驚いて、リアムは体を硬直させた。
「あ、ごめん。でも、これ精霊シリーズだよね。あ、えーっと、これ、シン?」
今度はゆっくり、声のトーンを落として話すけど、途中で言葉わからないかと気付き、本の中のキャラクターを指さして、聞いてみた。リアムが顔をボクを見上げて、初めて目が合う。そこで外国の子どもというよりも、日本など東洋人の面影があることに気づく。
「マノ、サン、シッテル、デスカ?」
ボクがリアムに声をかけているのを聞いて、隣にいたテオが間に入ってきた。
「あ、はい!精霊シリーズ、ボクも大好きで、全部読んでます。この映画も見ました。あ、これパンフレットだったんだ。あちらでも上映してるんですね……」
嬉しくなってしまって、早口で捲し立ててしまう。声をかけてくれたテオさんをポカンとさせてしまった。
「真野くん、そんなに早口でだったら、テオでもわからないよ。もう少しゆっくり喋ってやって」
佑輔さんに笑われてしまい、顔が熱くなる。そしてさっきよりもゆっくり2人に話しかけた。
「精霊シリーズ、ボクも好きです。この映画も見ました」
テオは理解したように笑って頷き、まだポカンとしているリアムに通訳してくれる。リアムの顔がパッと明るくなり、ボクの顔をマジマジと見つめ、何かを思い出したようにカバンの中から1冊の文庫本を取り出した。それは、見覚えのある表紙絵の描かれた精霊シリーズの1巻目だった。驚いたことに日本で出版された日本語で書かれてあるものであった。
「ボクもコレ、持ってます。あれ?……でも日本語?」
「あーこいつの父親は日本人なんだよ」
リアムの父親は、リアムが小学生になる前に、勝手に日本に帰国してそれっきりになっているらしい。この本は、父親が好きだったもで、唯一父親が残していったもののようだ。日本語は読めないけど、父親からお話として聞いていて好きになって、英訳されているものは、全て読んでいると教えてくれた。
「だから、今回の帰国はリアムくんの好きな精霊シリーズの聖地巡礼みたいですよ」
「父親を探しに来たとかではなくて?」
「10年も音信不通みたいですし、探すのは難しいみたいです」
あの後、リアムとは仲良くなって次の休みに一瞬に原画展に行くことになった。以前に実と行ったところだ。ボクは何回でも楽しめる人なので、誘われた時快諾した。佑輔さんからは、その時先生も連れてきてと言われていて、それを先生に伝えると「はぁー」大きなため息をつかれてしまった。
先生が素っ頓狂な声を上げる。今日、佑輔さんと会ったと話した時だ。あの後も、ディナータイムが始まるまで泰輔さん達の休憩時間もダラダラと居座ってしまった。
「で、今回は何で帰国したんだ?何か言ってた?」
「一緒に来ていたリアムくんのためみたい」
ご飯を食べ終わって、ボクらが話をしている時、リアムは大人しく持ってきていた薄い本のようなものを見ていた。言葉もわからないだろうし、話に入るのは難しいのだろう。そもそも人見知りも強そうだった。
何を見ているのかとトイレに立った時に、側に寄って覗いて見ると、見覚えのある絵が目に入る。
「あ、これ……」
ボクの声に驚いて、リアムは体を硬直させた。
「あ、ごめん。でも、これ精霊シリーズだよね。あ、えーっと、これ、シン?」
今度はゆっくり、声のトーンを落として話すけど、途中で言葉わからないかと気付き、本の中のキャラクターを指さして、聞いてみた。リアムが顔をボクを見上げて、初めて目が合う。そこで外国の子どもというよりも、日本など東洋人の面影があることに気づく。
「マノ、サン、シッテル、デスカ?」
ボクがリアムに声をかけているのを聞いて、隣にいたテオが間に入ってきた。
「あ、はい!精霊シリーズ、ボクも大好きで、全部読んでます。この映画も見ました。あ、これパンフレットだったんだ。あちらでも上映してるんですね……」
嬉しくなってしまって、早口で捲し立ててしまう。声をかけてくれたテオさんをポカンとさせてしまった。
「真野くん、そんなに早口でだったら、テオでもわからないよ。もう少しゆっくり喋ってやって」
佑輔さんに笑われてしまい、顔が熱くなる。そしてさっきよりもゆっくり2人に話しかけた。
「精霊シリーズ、ボクも好きです。この映画も見ました」
テオは理解したように笑って頷き、まだポカンとしているリアムに通訳してくれる。リアムの顔がパッと明るくなり、ボクの顔をマジマジと見つめ、何かを思い出したようにカバンの中から1冊の文庫本を取り出した。それは、見覚えのある表紙絵の描かれた精霊シリーズの1巻目だった。驚いたことに日本で出版された日本語で書かれてあるものであった。
「ボクもコレ、持ってます。あれ?……でも日本語?」
「あーこいつの父親は日本人なんだよ」
リアムの父親は、リアムが小学生になる前に、勝手に日本に帰国してそれっきりになっているらしい。この本は、父親が好きだったもで、唯一父親が残していったもののようだ。日本語は読めないけど、父親からお話として聞いていて好きになって、英訳されているものは、全て読んでいると教えてくれた。
「だから、今回の帰国はリアムくんの好きな精霊シリーズの聖地巡礼みたいですよ」
「父親を探しに来たとかではなくて?」
「10年も音信不通みたいですし、探すのは難しいみたいです」
あの後、リアムとは仲良くなって次の休みに一瞬に原画展に行くことになった。以前に実と行ったところだ。ボクは何回でも楽しめる人なので、誘われた時快諾した。佑輔さんからは、その時先生も連れてきてと言われていて、それを先生に伝えると「はぁー」大きなため息をつかれてしまった。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
ドMな二階堂先生は踏まれたい
朝陽ヨル
BL
ドS生徒会副会長×ドM教育実習生
R18/鬼畜/年下攻め/敬語攻め/ドM受け/モロ語/愛ある暴力/イラマ/失禁 等 ※エロ重視でほぼ物語性は無いです
ゲイでドMな二階堂は教育実習先で、生徒会副会長の吾妻という理想の塊を発見した。ある日その吾妻に呼ばれて生徒会室へ赴くとーー。
理想のご主人様とドキドキぞくぞくスクールライフ!
『99%興味』のスピンオフ作品です。
ゆるふわメスお兄さんを寝ている間に俺のチンポに完全屈服させる話
さくた
BL
攻め:浩介(こうすけ)
奏音とは大学の先輩後輩関係
受け:奏音(かなと)
同性と付き合うのは浩介が初めて
いつも以上に孕むだのなんだの言いまくってるし攻めのセリフにも♡がつく
溺愛警察官とノンデリイケメンが時々すれ違いながらおバカに一途な恋をする話
こぶじ
BL
顔がいいのが取り柄だが、ゲイバレが怖くていつまでも童貞処女の井上太志は、友人で警察官の鈴木莞爾に片想いをしている。ある日お互い酒が入った状態でいい雰囲気になってしまい、なし崩しでセックスする仲になる。だが、実は莞爾も太志のことを想っており…。
溺愛ハーフ顔骨太男前警察官・莞爾×一途ゲイイケメンアパレル販売員・太志
*受け攻めともに口が悪くて下品です。ちんこだとかエロいだとか連呼します。
*受け攻めともに徹頭徹尾一途です。
*脇役ちらほら出てきますが、特に覚えなくて大丈夫です。
【R18】しごでき部長とわんこ部下の内緒事 。
枯枝るぅ
BL
めちゃくちゃ仕事出来るけどめちゃくちゃ厳しくて、部下達から綺麗な顔して言葉がキツいと恐れられている鬼部長、市橋 彩人(いちはし あやと)には秘密がある。
仕事が出来ないわけではないけど物凄く出来るわけでもない、至って普通な、だけど神経がやたらと図太くいつもヘラヘラしている部下、神崎 柊真(かんざき とうま)にも秘密がある。
秘密がある2人の秘密の関係のお話。
年下ワンコ(実はドS)×年上俺様(実はドM)のコミカルなエロです。
でもちょっと属性弱いかもしれない…
R18には※印つけます。
[R-18] 奴隷のレッスン:騎士団所属の末っ子王子は、イケメン奴隷に身も心も奪われる
山葉らわん
BL
【縦読み推奨】
■ 第一章(第1話〜第9話)
アラディーム国の第七王子であるノモクは、騎士団長ローエの招きを受けて保養地オシヤクを訪れた。ノモクは滞在先であるローエの館で、男奴隷エシフと出会う。
滞在初日の夜、エシフが「夜のデザート」と称し、女奴隷とともにノモクの部屋を訪れる。しかし純潔を重んじるノモクは、「初体験の手ほどき」を断り、エシフたちを部屋から追い返してしまう。
■ 第二章(第1話〜第10話)
ノモクが「夜のデザート」を断ったことで、エシフは司祭ゼーゲンの立合いのもと、ローエから拷問を受けることになってしまう。
拷問のあと、ノモクは司祭ゼーゲンにエシフを自分の部屋に運ぶように依頼した。それは、持参した薬草でエシフを治療してあげるためだった。しかしノモクは、その意図を悟られないように、エシフの前で「拷問の仕方を覚えたい」と嘘をついてしまう。
■ 第三章(第1話〜第11話)
ノモクは乳母の教えに従い、薬草をエシフの傷口に塗り、口吻をしていたが、途中でエシフが目を覚ましてしまう。奴隷ごっこがしたいのなら、とエシフはノモクに口交を強要する。
■ 第四章(第1話〜第9話)
ノモクは、修道僧エークから地下の拷問部屋へと誘われる。そこではギーフとナコシュのふたりが、女奴隷たちを相手に淫らな戯れに興じていた。エークは、驚くノモクに拷問の手引き書を渡し、エシフをうまく拷問に掛ければ勇敢な騎士として認めてもらえるだろうと助言する。
◾️第五章(第1話〜第10話)
「わたしは奴隷です。あなたを悦ばせるためなら……」
こう云ってエシフは、ノモクと交わる。
◾️第六章(第1話〜第10話)
ノモクはエシフから新しい名「イェロード」を与えられ、またエシフの本当の名が「シュード」であることを知らされる。
さらにイェロード(=ノモク)は、滞在先であるローエの館の秘密を目の当たりにすることになる。
◾️第七章(第1話〜第12話)
現在、まとめ中。
◾️第八章(第1話〜)
現在、執筆中。
【地雷について】
「第一章第4話」と「第四章第3話」に男女の絡みシーンが出てきます(後者には「小スカ」もあり)。過度な描写にならないよう心掛けていますが、地雷だという読者さまは読み飛ばしてください(※をつけています)。
「第二章第10話」に拷問シーンが出てきます。過度な描写にならないよう心掛けていますが、地雷だという読者さまは読み飛ばしてください(※をつけています)。
【完結】ゲーム配信してる俺のリスナーが俺よりゲームが上手くて毎回駄目だししてきます
及川奈津生
BL
ゲーム配信者のマキは、自身の顔とノリの良さを発揮したそこそこ人気のあるストリーマーだ。あるとき自分のファンと偶然マッチングして「よく見てます。光栄です、頑張ります」と殊勝なことを言われるものの、このファン、謙虚過ぎるだけでめちゃくちゃゲームが上手い。強いし、言葉遣いも丁寧だし、声もいいし、何より本当にめちゃくちゃ自分のファンっぽい。「ねぇ、またやらない?固定メンバー欲しくてさ」ってナンパして、度々このファンを配信に呼ぶようになる。
ところが、謙虚で丁寧なのは最初だけだった。
鬼教官と化したファンに散々しごかれて、仲が悪かった二人が一緒にゲームしてるうちに打ち解けて仲良くなる話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる