忘れられない思い

yoyo

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出会い⑵

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   カフェに着くと、そこそこ賑わってはいたが、座れないほどではなかった。店内をキョロキョロ見渡し、女性店員さんの佐藤さんを探す。この間、お互いに名乗っていて確か、月水金はバイトだと言っていた。水曜日の今日はバイトのはずだったけど、姿は見えない。
   注文を聞きにきた、ボクと同じくらいの歳の女性店員さんに聞いてみる。


「佐藤さんは、今日出勤されてますか?」

「え?」

   怪訝そうな顔で見られてしまう。

「あ、えっと、真野といいます。あの、佐藤さんとこの間約束をしていて、その...」


   説明すればするほど何だかあやしい人のようになってしまい、余計焦る。

「もしかして、この間、まことが珈琲溢して本を汚してしまったお客さん……?」

「マコト……あ、そうです。日にちは約束してた訳ではなかったんですけど、仕事で近くまで来たので……」

「今ちょうど休憩中なので、呼んできますね」


   少しするとカフェのエプロンを外した白シャツと黒パンツ姿の佐藤実さとうまことがやってきた。

「こんにちは。すいません、また来て頂いて」

「こんにちは。このお店はお気に入りのお店だから、全然問題ないですよ。もう仕事も終わったし」

「あ、これ。この間の本です」

「うん。でも本当にいいんですよ。そんなに汚れなかったし」


   実際、表紙は光沢がある滑らかな紙質なので、濡れてもすぐに拭き取ると色は染み込まなかった。  若干濡れてふにゃっとしてしまった程度。それに側面は、薄っすらと珈琲色に染まってしまったが、中は全く被害がなかった。

「いいんです。私の気持ちの問題でもあるんで……」

「それなら……はい。ありがたく頂きます。じゃあ、こっちの本ね。それと良かったらこれも、貰い物なんだけど、どうぞ」

   先程まわった書店で貰った、イベントの為に作っていた栞を一緒に渡す。


「あーこれ、シンじゃないですか~」

  実さんは 栞に描かれていた、キャラクターの名前を出す。  精霊シリーズのキャラクターで、映画化に伴い、書店のフェアで作っていた栞だ。そのあと、実さんとは少し本の話をしてカフェを後にした。先生も都築さんもファンタジー系の小説はほとんど読まないから、好きな本の話が出来るのは楽しい。
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