忘れられない思い

yoyo

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ハロウィン⑵

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「ただいま」

   部屋に入ると「えー、なんでー」と慌てて真野が玄関まで出てくる。


「お出迎えか?嬉しいな」

「あ、いや……何で早いんですか。今日遅くなるんじゃ……」

「なんだよ~折角早く帰ってこれたのに~」


   早く帰って、驚いて喜んで欲しかったのに、真野は困惑顔で少しガッカリしてしまう。部屋に入るとフワッと甘い香りが漂い、キッチンには今まさに調理していたようでボウルなどが散乱していた。


「クッキー焼いてたんですけど、思った以上に時間かかっちゃって」

   そう言う真野の右手には、まだ包帯が巻かれていて、以前よりは動かしやすくなっていてもまだまだ思うように動かせないのだろう。


「今日、ハロウィンだから……本当はカボチャの料理とか作りたかったんですけど、カボチャは固いから……だからカボチャ型のクッキーにして、全て片付けてスマートに渡したかったのに……」

「あ、職員会議なくなって、だから早く帰って驚かそうと思って……わるい」

「いや……先生に怒ってるわけじゃなくて……上手く出来なかった自分にイラつくというか」

「まさか作ってくれるとは思ってなかったから、逆にビックリさせられたな……でもめちゃくちゃ嬉しいよ」

   そう言うと真野は表情を崩し「片付けなきゃ」とキッチンへ向いてしまった。


   夕食の片付けも終わった頃、コーヒーも入れてカボチャの絵が描かれたクッキーを真野と一緒に食べる。


「うまいな」

「へへっ、良かった」

「あ、そういえばクラスの子たちからも貰ったんだった」


   カバンの中から、先ほどのカボチャ型のクッキーを含めた5つのお菓子をテーブルに置く。中には、綺麗にラッピングされているものもあった。


「お菓子をあげるんじゃなくて、受け取らないとイタズラされるなんて、今の高校生は面白いことやってるんですね。でも、これなんて、別の意味も含まれてそう……」

   一番綺麗にラッピングされて手作りっぽいものを手にとって真野が呟く。


「そんなことないだろ」

   ややふてくされ顔の真野を見ると、何だかニヤついてしまう。


「ハロウィンにかこつけた訳じゃないけど、真野に渡そうと思ってたものがあるんだけど……不貞腐れてるならあげないいよ」

「えっ……」


   オレはカバンから一つの箱を出し、真野の前に置く。


「何ですか?」

「気に入ってもらえればいいけど」


   真野が開けた箱の中には、革製のキーホルダーが入っていて、キーホルダーにはすでに1つ鍵がついている。


「これは……」

「んー、ここの合鍵。今一緒にいるし、お互いに持ってた方が便利かなと」

「……」

「えっとー。気に入らなかった?」

「ちがっ。鍵!貰っちゃっていいの?」

「あーうん」

「あ、ありがとうございます。嬉しい……です」


   プレゼントとして合鍵を渡すのは、少々ベタな感じがしたが、真野が予想以上に喜んでくれて思わずギュッと抱きしめてしまった。
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