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誕生日⑵
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一通り部屋の片付けと掃除が終わって、朝から作っていたロールキャベツは、今煮込んでいるところだ。「ふぅー」と息をつき、動きを止めると居ても立っても居られない程の緊張が襲ってきて、叫び出しそうだ。そんなんで、朝からずっと動き回っていた。
この間の泰輔さんのいいことの話は、先生の誕生日が近いということだった。今の関係を進展させるにはいいきっかけだろって余計な一言も添えられたけど。何をしようか悩んだ末、前からリクエストがあった料理をご馳走することにして、その為に家に呼ぶことにした。
それが今日だ。
そして、今日もう一つ、先生に思いを伝えようとも思っていた。
ピンポーン……
どっきーん!!心臓が飛び跳ね、時計を見ると約束していた時間ぴったりだ。
「い……いらっしゃい」
久しぶりに見る先生の姿に、さらに心臓がうるさく鳴っている。 先生がボクの部屋にいるなんて、変な感じだ。
「はい、これ。京都のお土産」
そう言って、手渡されたのは定番の生八ツ橋とチリメン山椒だった。
「ありがとうございます。えっと……お腹すきましたか?すぐ用意できますけど」
「おぉ。楽しみでお昼食べなかったから、お腹ペコペコだよ。それにしても楽しみだな。何を作ってくれたんだ?」
「ロールキャベツです。じゃあ、準備するんで、先生は座ってゆっくりしててください」
テーブルにロールキャベツとポテトサラダを並べると「すげーな」とビックリされた。何度も味見をして、もう訳がわからなくなってしまったけど、先生に「すごく美味しい」と言ってもらえてホッと胸を撫で下ろす。
だけど、ボクはもう胸がいっぱいでなかなか箸が進まなかった。
「あまり、お腹空いてなかった?オレに合わせてもらっちゃったかな」
「いやいや。味見いっぱいしちゃって。それに……すごく緊張してて」
「オレのために、ありがとな。 最高の誕生日プレゼントだわ」
「真野?そんなに見られちゃ、食べにくいな……」
ボクは、無意識のうちロールキャベツを美味しそうに食べる先生を見つめてしまっていたようだ。苦笑した先生に言われて、我にかえり残っていたロールキャベツを口にかき込んだ。
「ごちそうさま。めちゃくちゃ美味かったよ」
片付ける時、先生には座っていてと言ったけど、強引に手伝ってくれた。ボクの家のキッチンはリビングとひと続きの構造ではなくて、狭いキッチンだけ若干独立している形の細長い小さな部屋のようになっているため、大人2人並ぶと密着する形になり、ドキドキが止まらない。
それでも、先生と並んで作業するのは、こそばゆくも嬉しかった。
「真野。トイレ借りるぞ」
「はい。トイレはこの奥なんです」
キッチンの奥には、洗面所、お風呂、そしてトイレがあった。トイレには、キッチンを経由しないと行けない構造だ。
ボクがキッチンで、コーヒーを入れていると「のわっ」という小さな叫び声と同時に、先生はボクに掴まって態勢を整えている。
「だ、大丈夫ですか……そこ変な段差があるんですよ」
キッチンと洗面所の境目は、扉がついており、そこには3㎝程の段差になっていた。
ドキドキドキドキ…… 至近距離の先生と目が合う。
「あぁ……びっくりした……悪い、悪い」
そう言って、先生が離れようとした時 、キャンプで抱きしめられ、離れて行ったことを思い出していた。あの時、びっくりはしたけどボクは全然嫌ではなかった。
むしろ、もっとこうしていたいとも思っていた。
「わ……悪くなんてないです。ボクは嫌じゃないです」
気づいたら、ボクは先生に抱きついていた。
「真野?」
「ボクは、先生のこと……好きです」
どんな風に告白おうかと色々考えていたのに、勢いで言ってしまった。
ドクドクドク……この沈黙がやけに長いように感じる。
その時ぎゅっと抱きしめ返された。
「先に言われたな……オレも真野が好きだよ」
顔を上げると、優しく笑う先生がいて、恥ずかしくってまた、下を向くとさっきよりも力強く抱きしめられた。
この間の泰輔さんのいいことの話は、先生の誕生日が近いということだった。今の関係を進展させるにはいいきっかけだろって余計な一言も添えられたけど。何をしようか悩んだ末、前からリクエストがあった料理をご馳走することにして、その為に家に呼ぶことにした。
それが今日だ。
そして、今日もう一つ、先生に思いを伝えようとも思っていた。
ピンポーン……
どっきーん!!心臓が飛び跳ね、時計を見ると約束していた時間ぴったりだ。
「い……いらっしゃい」
久しぶりに見る先生の姿に、さらに心臓がうるさく鳴っている。 先生がボクの部屋にいるなんて、変な感じだ。
「はい、これ。京都のお土産」
そう言って、手渡されたのは定番の生八ツ橋とチリメン山椒だった。
「ありがとうございます。えっと……お腹すきましたか?すぐ用意できますけど」
「おぉ。楽しみでお昼食べなかったから、お腹ペコペコだよ。それにしても楽しみだな。何を作ってくれたんだ?」
「ロールキャベツです。じゃあ、準備するんで、先生は座ってゆっくりしててください」
テーブルにロールキャベツとポテトサラダを並べると「すげーな」とビックリされた。何度も味見をして、もう訳がわからなくなってしまったけど、先生に「すごく美味しい」と言ってもらえてホッと胸を撫で下ろす。
だけど、ボクはもう胸がいっぱいでなかなか箸が進まなかった。
「あまり、お腹空いてなかった?オレに合わせてもらっちゃったかな」
「いやいや。味見いっぱいしちゃって。それに……すごく緊張してて」
「オレのために、ありがとな。 最高の誕生日プレゼントだわ」
「真野?そんなに見られちゃ、食べにくいな……」
ボクは、無意識のうちロールキャベツを美味しそうに食べる先生を見つめてしまっていたようだ。苦笑した先生に言われて、我にかえり残っていたロールキャベツを口にかき込んだ。
「ごちそうさま。めちゃくちゃ美味かったよ」
片付ける時、先生には座っていてと言ったけど、強引に手伝ってくれた。ボクの家のキッチンはリビングとひと続きの構造ではなくて、狭いキッチンだけ若干独立している形の細長い小さな部屋のようになっているため、大人2人並ぶと密着する形になり、ドキドキが止まらない。
それでも、先生と並んで作業するのは、こそばゆくも嬉しかった。
「真野。トイレ借りるぞ」
「はい。トイレはこの奥なんです」
キッチンの奥には、洗面所、お風呂、そしてトイレがあった。トイレには、キッチンを経由しないと行けない構造だ。
ボクがキッチンで、コーヒーを入れていると「のわっ」という小さな叫び声と同時に、先生はボクに掴まって態勢を整えている。
「だ、大丈夫ですか……そこ変な段差があるんですよ」
キッチンと洗面所の境目は、扉がついており、そこには3㎝程の段差になっていた。
ドキドキドキドキ…… 至近距離の先生と目が合う。
「あぁ……びっくりした……悪い、悪い」
そう言って、先生が離れようとした時 、キャンプで抱きしめられ、離れて行ったことを思い出していた。あの時、びっくりはしたけどボクは全然嫌ではなかった。
むしろ、もっとこうしていたいとも思っていた。
「わ……悪くなんてないです。ボクは嫌じゃないです」
気づいたら、ボクは先生に抱きついていた。
「真野?」
「ボクは、先生のこと……好きです」
どんな風に告白おうかと色々考えていたのに、勢いで言ってしまった。
ドクドクドク……この沈黙がやけに長いように感じる。
その時ぎゅっと抱きしめ返された。
「先に言われたな……オレも真野が好きだよ」
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