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クリスマス⑹
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借りていた漫画を返す為に、湖城に病室に寄ってもらい、漫画が入った紙袋を渡す。病室はちょうど誰もいなくて気兼ねなく話せる。
「面白かったです。この続きもめちゃくちゃ気になります」
「そうだよね~続きが出たらまた貸すよ。あれ、颯くんスマホ買ったの?」
サイドテーブルに置かれたスマホに気づいた湖城に聞かれる。もともとのスマホは事故の時壊れてしまい、それから特に連絡取りたい相手もいなくずっと持ってなかった。叔母の涼風から「あっても困らないでしょ」と言われて、クリスマスプレゼントとして買ってもらった。
以前から颯にとってスマホは、何かを検索したり、誰かに連絡をとるときだけしか使ってなかったから、今まで無くても特に不都合はなかった。だから前のスマホのバックアップもとっていなくて、なんの情報も入っていないスマホは、さらに置きっ放しの状態だ。
「あーはい。涼風さんにクリスマスプレゼントして貰ったんです。でもバックアップも取ってなかったし、連絡したい人もいないからほとんどここに置きっ放しなんですけどね」
「そっか……あ、これ、俺と同じ機種なんだけどカメラ機能が充実してるから色々写真取ってみるのも面白いかもよ」
「そうなんですかっ。このシリーズいいですよね。この小さめの感じが好きで、前の機種と同じシリーズにしてもらったんですよ。写真はほとんど取らないから知らなかったけど、ちょっと写真機能も見てみようかな」
「うん。わからないことあれば教えるよ。じゃあ、これは貰っていくね」
そう言って湖城が病室から出て行くと、いつもサイドテーブルに置きっ放しになっているスマホを手にとって、カメラのマークをタップしてみた。
クリスマスイブの夕食は、ローストチキンではなく唐揚げとデザートにクリスマスツリーの絵が描かれたプリンのだった。病院でもクリスマスを意識したメニューになるんだなと思いながら食べてると、湖城がピョコっと病室に顔を出して、病室にいる面々に「今日夜勤で入ります」と挨拶して、同じ病室のおじさんに「こんな日に仕事なんてつてないなー」と揶揄われている。最後に颯のところにも来て声をかけてくれた。
今日、湖城が夜勤に入ることは以前聞いていて知ってはいた。もし、夜の見回りも湖城なら夜中の12時一緒にツリーを見れるかなと、日中あのクリスマスツリーの写真を撮りに行ってきていた。写真だとあの噂も効かないかもしれないけど、クリスマスになった瞬間に一緒にツリーが見たいと思ってしまった。必ず湖城が来るとは限らないので、運が良ければ一緒に見れる程度の気持ちだ。見回りのことを聞こうとした時、もう一人の夜勤の看護師も挨拶に来て言葉が止まってしまい、そうこうしているうちに、湖城は病室から出ていってしまった。
「聞いちゃったらつまらないか……」と軽くため息混じりに呟く。
あと30分ほどで日付が変わる頃、読んでいた文庫本を置いてライトを消す。流石にこの時間に大ぴらに起きているのがわかると怒られてしまうので、寝ている態で、湖城が来ることを期待するけど、来たら来たで声をかけられるかとドキドキする。
しばらくするとカタッと病室の扉が開き、人が入ってくる気配がした。だけど、どっちかまだわからない。どうしようかとさっきより心臓が早まる。
カーテンから軽く覗かれる気配と共に、布団に手を当てられ名前を呼ばれた。今度は、素早く被っていた布団を避けて、湖城と目が合うと「へへっつ」と照れたように笑った。
「具合悪い訳じゃないんだよね?」
「え、あ、はい。大丈夫です。湖城さん、あの……えっと……」
「ん?もしかして、またやっちゃった?」
小声で囁かれ在らぬ誤解をされて、否定の声が大きくなってしまった。
「しーっ!ごめん、ごめん。でも、こんな時間に起きてるなんて、眠れない?」
病院の消灯は早い。12時前後でももう殆どの患者が寝ている時間だ。
「いや……湖城さん、今5分だけ大丈夫ですか?」
「うん。それくらいなら。オレもちょっと話したいと思ってたし」
体を起こしてサイドテーブルに置いてあったスマホを手にとる。写真ホルダを開き、いくつか撮ったうちの一番綺麗に写ってツリーの写真を画面にでして、湖城に見せた。
「これって、ここのツリー?」
「はい、直接は見に行けないけど、写真なら一緒に見れるかなと思って……」
驚いていた湖城の顔が急に「ははっ」と表情を崩して笑うと、ズボンのポケットからスマホを取り出し操作し始める。手が止まると今度は颯に向けて画面を見せる。そこには先程、颯のスマホ画面にあったのと同じツリーが写し出されていた。
「これ……」
「颯くん、同じこと考えてるんだもん。びっくりしたよ。もしも起きてたら、一緒に見れるかなと思って」
なにこれ。めちゃくちゃ嬉しい。静かな病室にドキドキの心臓が鳴り止まなくてうるさい。こんなにうるさかったら、みんなを起こしてしまうんじゃないかと思ったけど、そんなことにはならず、たぶん湖城にも聞こえていない。
「一緒に見たほうがいいんだよね」と2人で1つの写真が見れるように湖城はベッド脇に腰を下ろし、颯に密着する形になる。画面の上に表示されている時計が丁度、12時になるのが見える。
「メリークリスマス」隣でそう言われた気がしたけど、もういっぱい、いっぱいで湖城の方を向くことができなかった。
「面白かったです。この続きもめちゃくちゃ気になります」
「そうだよね~続きが出たらまた貸すよ。あれ、颯くんスマホ買ったの?」
サイドテーブルに置かれたスマホに気づいた湖城に聞かれる。もともとのスマホは事故の時壊れてしまい、それから特に連絡取りたい相手もいなくずっと持ってなかった。叔母の涼風から「あっても困らないでしょ」と言われて、クリスマスプレゼントとして買ってもらった。
以前から颯にとってスマホは、何かを検索したり、誰かに連絡をとるときだけしか使ってなかったから、今まで無くても特に不都合はなかった。だから前のスマホのバックアップもとっていなくて、なんの情報も入っていないスマホは、さらに置きっ放しの状態だ。
「あーはい。涼風さんにクリスマスプレゼントして貰ったんです。でもバックアップも取ってなかったし、連絡したい人もいないからほとんどここに置きっ放しなんですけどね」
「そっか……あ、これ、俺と同じ機種なんだけどカメラ機能が充実してるから色々写真取ってみるのも面白いかもよ」
「そうなんですかっ。このシリーズいいですよね。この小さめの感じが好きで、前の機種と同じシリーズにしてもらったんですよ。写真はほとんど取らないから知らなかったけど、ちょっと写真機能も見てみようかな」
「うん。わからないことあれば教えるよ。じゃあ、これは貰っていくね」
そう言って湖城が病室から出て行くと、いつもサイドテーブルに置きっ放しになっているスマホを手にとって、カメラのマークをタップしてみた。
クリスマスイブの夕食は、ローストチキンではなく唐揚げとデザートにクリスマスツリーの絵が描かれたプリンのだった。病院でもクリスマスを意識したメニューになるんだなと思いながら食べてると、湖城がピョコっと病室に顔を出して、病室にいる面々に「今日夜勤で入ります」と挨拶して、同じ病室のおじさんに「こんな日に仕事なんてつてないなー」と揶揄われている。最後に颯のところにも来て声をかけてくれた。
今日、湖城が夜勤に入ることは以前聞いていて知ってはいた。もし、夜の見回りも湖城なら夜中の12時一緒にツリーを見れるかなと、日中あのクリスマスツリーの写真を撮りに行ってきていた。写真だとあの噂も効かないかもしれないけど、クリスマスになった瞬間に一緒にツリーが見たいと思ってしまった。必ず湖城が来るとは限らないので、運が良ければ一緒に見れる程度の気持ちだ。見回りのことを聞こうとした時、もう一人の夜勤の看護師も挨拶に来て言葉が止まってしまい、そうこうしているうちに、湖城は病室から出ていってしまった。
「聞いちゃったらつまらないか……」と軽くため息混じりに呟く。
あと30分ほどで日付が変わる頃、読んでいた文庫本を置いてライトを消す。流石にこの時間に大ぴらに起きているのがわかると怒られてしまうので、寝ている態で、湖城が来ることを期待するけど、来たら来たで声をかけられるかとドキドキする。
しばらくするとカタッと病室の扉が開き、人が入ってくる気配がした。だけど、どっちかまだわからない。どうしようかとさっきより心臓が早まる。
カーテンから軽く覗かれる気配と共に、布団に手を当てられ名前を呼ばれた。今度は、素早く被っていた布団を避けて、湖城と目が合うと「へへっつ」と照れたように笑った。
「具合悪い訳じゃないんだよね?」
「え、あ、はい。大丈夫です。湖城さん、あの……えっと……」
「ん?もしかして、またやっちゃった?」
小声で囁かれ在らぬ誤解をされて、否定の声が大きくなってしまった。
「しーっ!ごめん、ごめん。でも、こんな時間に起きてるなんて、眠れない?」
病院の消灯は早い。12時前後でももう殆どの患者が寝ている時間だ。
「いや……湖城さん、今5分だけ大丈夫ですか?」
「うん。それくらいなら。オレもちょっと話したいと思ってたし」
体を起こしてサイドテーブルに置いてあったスマホを手にとる。写真ホルダを開き、いくつか撮ったうちの一番綺麗に写ってツリーの写真を画面にでして、湖城に見せた。
「これって、ここのツリー?」
「はい、直接は見に行けないけど、写真なら一緒に見れるかなと思って……」
驚いていた湖城の顔が急に「ははっ」と表情を崩して笑うと、ズボンのポケットからスマホを取り出し操作し始める。手が止まると今度は颯に向けて画面を見せる。そこには先程、颯のスマホ画面にあったのと同じツリーが写し出されていた。
「これ……」
「颯くん、同じこと考えてるんだもん。びっくりしたよ。もしも起きてたら、一緒に見れるかなと思って」
なにこれ。めちゃくちゃ嬉しい。静かな病室にドキドキの心臓が鳴り止まなくてうるさい。こんなにうるさかったら、みんなを起こしてしまうんじゃないかと思ったけど、そんなことにはならず、たぶん湖城にも聞こえていない。
「一緒に見たほうがいいんだよね」と2人で1つの写真が見れるように湖城はベッド脇に腰を下ろし、颯に密着する形になる。画面の上に表示されている時計が丁度、12時になるのが見える。
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