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一人の夜
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アキオが一人でしてるとこをカレルに見つかるほんのりエロ短編です。本番なし。
冒頭に出てきたヤギのトロちゃんがアキオとカレルに引き取られるエピソードは、販売中の電子書籍(紙の本もあります)に収録されています。
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https://inheritance92.booth.pm/items/5621547
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「アキオ、本当に大丈夫? 昨日まであんなに熱が出てたじゃない。カレルが戻って来るまでここにいれば良いのに……」
玄関先で、マリーノを腕に抱いたフロラが心配そうに言った。
「もうすっかり元気だから大丈夫だよ! 畑の様子も見に行きたいし、トロも寂しがってるだろうから」
「そう? でも無理しちゃ駄目よ。あなた身体が弱いんだから」
気遣うように頬を撫でられ、苦笑してしまった。オレは別に虚弱体質じゃない。こっちに来てから風邪をひいたのはこれが初めてなんだから、どっちかって言うと頑丈な方だと思うけど。
「じゃあまたね、マリーノ」
ほっぺをつついてやろうと手を伸ばすと、マリーノはプイと横を向いた。これは拗ねてるな。遊び相手のオレがいなくなるのが嫌なんだろう。でももう五日もここでお世話になってるし、無人のままの家も心配だから、帰らなきゃ。
オレは二人に手を振って、フロラとティトーの家を出た。
外は夏だというのに冷たい風が吹いていた。エラストの夏は短い。その短い夏の間に植物たちはいっせいに伸びて花を咲かせる。毎日のように草を刈っても追いつかない。家々を繋ぐ曲がりくねった小路はと夏草に埋まりかけ、ウチの家の周りも草ボーボーだ。
種を飛ばしそうな草を雑に引っこ抜きながら家畜小屋兼納屋の方へ回ると、一頭の白いヤギが声高に鳴いて出入り口の柵まで跳ねてきた。今年の春に生まれたからまだ子どもなんだけど、身体はもうかなり大きい。名前はトロという。柵を開けて中に入ると、メエメエと鳴いて何度も頭突きされた。
「ごめんごめん! 寂しかったよな!」
オレはトロの側に膝をつき、長い首をかき抱いてゴワゴワする毛を思い切り撫でてやる。まだ伸びきっていない角の間を掻いてやると、トロは甘え声で激しく鳴いてオレの耳を噛んだ。
「あはは! くすぐったいからやめろって! お腹空いてるのか? ほら、お土産」
摘んできた草を差し出すと、美味そうに食べ始める。オレはその間に水桶と飼い葉入れ、寝藁の汚れ具合をチェックしたけれど、ほとんどやることはなかった。水も飼い葉もたっぷり入っているし、フンや尿の汚れも少ない。オレが風邪で倒れたのを聞きつけた誰かがやっておいてくれたのだろう。この村の家畜は、飼い主は一応決まっているけどみんなの共有物だ。みんなで世話して、みんなで増やし、みんなで乳や肉や皮を分ける。飼い主には、繁殖や屠畜を決める権利と、死んだときの処理をする責任があるだけ。全員顔見知りの村だから成り立ってる雑な飼い方だけど、気楽ではある。
草を食べ終えたトロは、床掃除をするオレに頭を擦り付けてきた。相変わらずの甘えん坊だ。服を噛んで引っ張られ、まだほとんど中身の減っていない飼い葉入れの前に連れて行かれて、可愛い顔で見上げられた。どうやら食べるところを見てて欲しいらしい。
「ハイハイ。見ててやるから沢山食べな」
背中を撫でてやると、機嫌よさげに尻尾を振りながら飼い葉を食べ始める。オレはトロが草を噛む音を聞きながら、暗くなっていく外をボンヤリと見た。
夏の夕暮れは長い。葉を茂らせた樫の木の高い梢の先に星が瞬いてる。でも地平の辺りはまだほの明るくて、この薄明かりが夜遅くまで続く。一年で一番良い季節だ。オレにとって、エラストの夏はこれで二度目。
一度目の夏は、森番の当たったカレルと一緒に、高原と西の村の境にある大きな森で過ごした。夏の間に木や草が茂りすぎて森が弱るのを防ぐために、森番は何人かでチームを作って森全体を整備する。ずっと野外にいる体力仕事だから、森番は村の中でもデカくて力の強い人の役割になりがちで、カレルやティトーやイザベルなんかは、ほぼ毎年駆り出されるらしい。
それを聞いたときは驚いた。だってイザベルは若い女性なのに、カレルとおんなじ扱いなんだ!? って。
だけど、イザベルは気が優しくて狩りや戦闘に向かないだけで、力はすごく強いんだってさ。獣態になるとデッカいヘラジカで、本気で頭突きされたら、熊のカレルでも怪我をするくらいらしい。実際カレルは一度彼女をひどく怒らせて、肋を折られたって言ってた。どんな喧嘩をしたのか気になってしつこく聞いたけど、イザベルもカレルも教えてくれなかった。
今年もカレルは森番で、勿論オレも一緒に行くつもりだった。けど、出発前日に運悪く風邪を引いて熱が出てしまったんだ。
カレルはオレが回復するまで森番は休むって言ってくれたけど、オレはただの風邪なんだから気にせず行ってくれって言い張った。だってチームで仕事するのに、エースが抜けたら大変じゃないか。オレはオマケだから参加してもしなくても一緒だし。
でもカレルは絶対側にいると言って聞かない。どっちも引かずに喧嘩になりかけたところに、カレルを迎えに来たティトーが、
「一人にするのが心配なら、アキオはうちで静養すれば良いんじゃないか? フロラが看病してくれるさ」
と助け船を出してくれた。
オレはティトーの申し出を有り難く受けることにした。カレルはしばらく文句を言ってたけど、ティトーが上手いこと言いくるめてくれて、オレはティトーの家に運ばれることになったんだ。
正直、意地を張って一人で寝てなくて良かったと思う。あの後、急に熱が上がって、オレは三日ほどまともに立つこともできなくなったからだ。冷蔵庫も水道もレトルト食品もないエラストで、三日動けないと割と生活が詰む。
フロラが熱心に看病してくれたおかげで、四日目には熱も下がって、五日目の今日はすっかり元気だ。でも夕風に吹かれているとちょっと寒くなってきて、身震いが出た。油断しない方が良いかもしれない。
「トロ、もう満足したかい?」
餌箱から顔を上げたトロは、機嫌よさげに「メェェ」と鳴いて寝藁の上にしゃがみ込む。オレはトロの頭をもう一度撫でてやってから、家の方へと回った。
重い木のドアを開けると、埃っぽく澱んだ空気が全身を包んだ。窓を開けて空気を入れ換え、居間の炉に火を入れる。水瓶の中身を新鮮なものに入れ替えて、鍋にお湯を沸かす。沸かしたお湯を贅沢に使って顔と手足を洗い、気兼ねなく素っ裸になって身体を拭いた。
「はぁ~……スッキリする~!」
フロラの所でも顔と手足くらいは拭いてたんだけど、女の人しかいない家で堂々と裸になるのは気が引けて、遠慮がちにしかできなかったんだよね。部屋に鍵なんかないから、歩き回るようになったマリーノがいつ部屋に入ってくるか分かんなかったし。
マリーノは本当に良い子に育ってる。よく笑って、よく食べて、よく眠り、フロラとティトーのことが大好きで、お花とお人形が大好きな女の子だ。具合が悪くて寝てばかりだったオレのことは、自分より下だと思っているようだった。昨日は体調が回復したから、一緒に外に散歩に行こうかと誘ったら「あちおはねんねよ! またおねつでるよ」と怖い顔で睨まれた。不器用に諭すような言葉がマイアリーノとそっくりで、オレは少し泣きそうになってしまった。
着たきりだった下着を履き替えて、汚れた物を洗って炉の前に干し終えたら、もうやることがなくなった。夕飯はフロラの所で食べてきたし、畑を見に行くには時間が遅すぎる。
病み上がりだし早めに寝ようと決めて、オレはパジャマ代わりのシャツだけ引っかけてベッドに潜り込んだ。
寝転がると、炉の火にボンヤリと浮かぶ部屋はひどく寒々しかった。たまにカレルが帰ってこない夜はあるけど、いつもは使った食器や脱いだ服や、明日食べるための食料、すぐに使うからと出しっぱなしの道具類が部屋のあちこちに置いてあって、いなくても気配は強く残ってる。だけど、今夜は全部綺麗に片付けられている。森番は十日に一度くらいしか村に帰らないから、片付けてから家を出るのは当然なんだけど、なんだかそれがひどく寂しかった。
身体の大きいカレルと並ぶと狭く感じるベッドも、一人だと随分広い。毛布に鼻先を埋めるとカレルの匂いがして、不意に涙が出そうになった。
───おかしいよな。何日か会えなかっただけなのに、泣くほど寂しいとか……
でもフロラの所にいるときも、しょっちゅうカレルのことを思い出して寂しくなってた。高熱にうなされてるときに、側にカレルがいてくれたらって何度も思った。
家に帰ってきて不在を実感すると一層寂しい。ペラペラの毛布一枚を抱きしめて、
「……カレル……」
と名前を口に出すと、どうしようもなく恋しくなった。
やっぱり意地を張らずに一緒にいてもらえば良かった。あとどれくらいで帰ってくるかな。前は十日くらいで一旦森から出たから、今回もそうなら残り五日もある。
オレは毛布を抱えたままむくりと起き上がって、部屋をぐるりと見回した。何かカレルの気配をもっと感じられる物がないかなと探すと、壁際に掛かったの冬用の外套が目につく。黒いなめし革に分厚いウールの裏地のついた、フード付きの重たいコートだ。
それを外してベッドに持ち込んで頭から被ると、カレルに抱きしめられてるみたいでちょっと安心した。
髪の匂いの染みついたフードには、毛皮の縁取りがついている。目を閉じで深呼吸して、カレルの香りを嗅ぎながら毛皮を撫でてみたけど、髪を撫でるのとは全然違う感触でガッカリした。
カレルの髪は癖が強くて、いつも毛先が傷んでる。オレはちょっとパサついたその感触が好きだ。顔の皮膚も乾燥気味で、夜には髭がざらつき出す。そのざらついた頬や顎に触れるのが好き。唇や舌で愛撫されるとき、肌に髭が当たるとくすぐったくて気持ちいいんだ。
「ん……」
触れられる感触を思い出して身体を捩ると、剥き出しの脚に外套が当たってヒヤリとした。分厚い皮の生地を脚の間に挟んでいると、だんだん温まって人肌に近づいてくる。生温くなった外套の袖をそっとシャツの裾から腹へともぐりこませると、カレルに触れられてるような気がして、オレはうっとりと目を閉じた。
「ん……ん……」
フードに噛みつきながら、握った袖でいつもカレルにされるみたいに自分の体を撫で回す。本物のカレルの手はもっと熱いけど、分厚く硬い手の平となめし革の感触はかなり似てる。
「ふっ……」
胸に袖を押し付けて揉むようにすると、じんわり気持ち良くて腰がうずいた。もっと触って欲しい。物足りなくて、自分の指で乳首に触れた。
「あっ!」
ピリッとした快感で声が漏れる。
「ンッ、ん、っう……」
先をこね回して摘んでみると、刺激が強すぎて痛かった。カレルはいつもどうしてくれてたっけ? 舐めて濡らしてから触ってたような気がする。
オレは指を口に含んで湿らせてから胸の先にもう一度触れた。
「あ……ん……」
今度は痛くない。でもすぐ乾いて皮膚が引きつれる。一人でする時には胸なんか触らなかったから、上手いやり方が分からない。
───ていうか、オレこっちの世界に来てから一回も一人でしてないよな!?
日本にいたときはバカみたいに一日何回もシコって紙資源を無駄にしてたのに!
衝撃的な事実に気がついてしまった。そりゃまあ、飛ばされてきた当時はちんちんついてなかったからしたくてもできなかったし、取り戻してからはずっとカレルといるから、一人でする必要なかったし……。
オレは外套に包まれた暗闇の中で目を瞬かせた。
……ちょっと、久しぶりに一人でしてみようかな……?
丁度良くカレルいないし、一人でするのも楽しいかも……?
そう思いつくと、ムズムズしてくる。
オレは若干ワクワクしながら下着の中に手を突っ込んだ。相変わらず濃くならない毛の下で、手のひらジャストサイズの性器が立ち上っている。軽く握って上下に動かすと、普通に気持ちよかった。カレルとするのはもちろんすごく良いけど、自分のペースで楽しむのも悪くない。
「ハッ……ハッ……うぅ……」
……おかしい。
しばらくチンコをいじってみても、なかなか出すまで至らない。早くスッキリしてしまいたいのに、なかなかイケない。オカズがないせいかな? でも女の子のこと考えても興奮しない。えっちな事を考えようとして浮かんでくるのはカレルのことばっかりだ。
覆いかぶさってる外套を噛んで気を紛らわせても、カレルとするキスを思い出すばっかりで余計に気が散る。強めに性器の先をいじると、腹の奥がきゅっと切なくなった。
ぶっちゃけ、後ろが物足りない。
オレなんだか後ろめたい気持ちになりつつ、ベッドの横にある小さなテーブルに手を伸ばした。そこにはカレルとする時に使う油が置いてある。小さな容器のフタを開けると、嗅ぎ慣れた薬草と油脂の匂いがした。気持ちいいことと結びついてる香りに、一気に脳が興奮する。
たっぷり指ですくい取って、後ろに塗りつけた。自分でこっちを触ることはあんまりないけど、いつもされるみたいにゆっくり撫で回すように触れていく。
「う……う、ぁ……」
ベッドからずり落ちかけた外套を引っ張り上げて頭から被った。汚したら悪いなとチラッと思ったけど、カレルの香りを手放したくなかった。でも本物が恋しい。
「ふぁ……ンッ!」
気ばかり焦って、ほぐれきってない後ろに中指の先を入れてしまって、違和感で腰がはねた。慌てて指を引き抜いて、なだめるように穴の周りを撫でる。
ヒクヒクしてるくせに入れたら痛いってどういうことだよ、この穴は!
なのに前は元気なままでイライラする。やみくもに後ろを触りながら、前を擦りあげた。
「ハァッ……あっ、あっ……んぅ……」
もうちょっとでイケそうなのに、ギリギリで達しきれない。
なんでだよ! 早いのには自信があったのに!
いつもカレルにされたらすぐイっちゃうのに……
「あぅぅ~~……カレルぅ……」
ようやく柔らかくなった後ろに中指を忍ばせる。気持ち良いけど、でも長さも太さも全然足りない。
「うぅ……カレルにして欲しいのに……」
ギュッと目を瞑って呟くと、頭まで被っていた外套が急に取り払われた。
「えっ!? うわっ!?」
ビックリして目を開けると、光に目が眩んだ。ベッドサイドのランプが点されていて、その脇に真っ暗な人影が立っている。暗闇に慣れていた目ではそれが誰か見えなくて、オレは恐怖で身を固くした。
「アキオ」
声を聞いて、それがカレルだとわかって一気に気が抜けた。何度も瞬きすると、ようやく光に目が慣れて顔がはっきり見える。おかえりと言う前に、
「何をしてたんだ?」
と不審げに尋ねられて、オレは慌てて下半身に這わせていた手を離して飛び起きた。足元にわだかまっていた毛布を拾おうとして、隣に座ったカレルの手で邪魔されてしまう。
「何をしてた?」
顔を覗き込まれて、恥ずかしさと情けなさで耳まで熱くなった。
「アキオ?」
「……っ! ……っっ! わ、わかってるくせにっ……!」
近づいてくるカレルの顔を手で押しのけようとしたけど、その手でさっきまで触っていた場所のことを思い出してやめた。脂でベタベタの手の代わりに肘で隣の男の胸を押すと、カレルはオレの前腕を捉えて上目遣いでニヤリと笑う。
「オレにして欲しいとか言うのは聞こえたが……」
腕を持ち上げられて肘の内側を噛まれ、ゾクッとしてしまった。
「何をだ? 風邪っぴきの看病か?」
「か、風邪はもう治ったよ」
「じゃあ何をして欲しくて泣いてたんだ?」
カレルは片頬を歪めて笑う。
「泣いてないよっ! クソッ! オレのこといじめて楽しんでるだろ!?」
キッと睨むと、愉快そうに笑って頬にキスされた。
「いじめてなんかないだろう。して欲しいことをしてやろうと思っただけだ。……触れて欲しい?」
低い声で耳に囁かれ、オレはギュッと目を瞑って茹で上がりそうな頭を頷かせた。そのまま俯いていると、頬に温かい息がかかって唇を押し当てられる。伸びた髭がくすぐったい。
「ん」
唇にして欲しくて顔を上げると、チュッと音を立ててキスされた。口を開けて舌を待つ。でも柔らかい感触は一度だけオレの唇を吸ってすぐに離れてしまった。
「……?」
肩透かしを食らって目を開けると、カレルは意地悪に黄緑の目を細めた。
「帰ったばかりで手も洗ってない。着替えてくるから、それまで一人で続きをして待っていてくれ」
そう言ってベッドを離れてしまう。確かにカレルは分厚い生地の上着を着て、その上からケガ防止用の革鎧も着けたまま、ブーツも脱いでいないかった。
オレは一人で盛り上がっていた自分がますます恥ずかしくて、膝を抱えて頭から毛布を被る。けど、その毛布も取り上られて、居間と寝室を区切る衝立の上に引っ掛けられてしまった。そして、カレルは衝立を壁際に寄せる。
「何してんの?」
オレが首を傾げると、カレルは居間のテーブルに尻を引っ掛けて腕あてを外しながら、
「衝立があると見えないだろう?」
と目を眇めた。
「見えないって、何が?」
「お前が一人でするところが」
そう言われて全身の血が沸騰するかと思った。
「バッ……! バッカじゃないの!? し、し、しないよ!」
「なぜ?」
「なぜって……なんで!?」
「先に準備してくれたら助かるだろう」
外した腕あてをポトリとベンチに落として片頬だけで笑う。ひどくやらしくて優しい顔で、見るだけで胸が高鳴った。
───オレが好きなのを知っててそういう顔するのはズルい!
上目遣いに睨むと、カレルはことさらゆっくり皮のベストの合わせ目を解いた。藻掻くように両腕を抜いて、ベストをベンチに投げ出す。
これ、絶対わざとやってる。乗せられるのは癪に障るけど、シャツの裾をズボンのウェストから引っ張り出す手つきに、オレの喉は勝手に干上がってゴクリと音を立てた。
でもカレルはシャツの首元を緩めただけで脱がず、ブーツを脱ぎだす。脱いだブーツを炉の側に並べて置いて、靴下を引っ張って外す。親指の長い幅広の裸足。足首の腱の太さが目立つ。
その次はようやくシャツ。ゆっくりと裾をたくし上げ、頭から脱ぐ。広い胸と引き締まった腹が露わになって、オレは早く触りたくてウズウズする。
「アキオ、見てないで自分で進めてろ」
意地悪に言われて肌が粟立った。
命令されて喜ぶ趣味はないんだけど……ないと思うんだけど、興奮する。自分の性癖が心配だ。
オレは中途半端にずらしてた下着から片足だけ抜いて、シャツの裾を口に咥えて性器に手を伸ばした。触ってなかったのに緩く立ち上がったままだったそれは、触れるとすぐに硬くなる。
「んっ……んん……」
カレルはこっちを向いたまま、オレが沸かしてあった湯を桶に入れて顔を洗い、丁寧に手と足も洗った。そんなの良いから早くこっちに来て欲しいのに、悠長に新しい湯を用意して、濡らした布で髪や体を拭っている。
「フゥ」
首元を拭ったカレルがホッとしたように息を漏らすのに、勝手に体が反応してしまう。
「ふぅっ……うぅ……」
先っちょをいじる指が滑る汁で濡れた。興奮で息が上がって苦しい。ベルトを外すカレルから目が離せない。カレルもこっちを見てる。
「うっ……ンッ……」
片手で竿を握ったまま、もう片手でパンパンになってる玉を撫でて、その後ろに指を滑らせた。両膝を立てて見せつけるみたいに穴の縁をなぞる。チラッと目を上げると、カレルが食い入るようにオレを見ていた。
見せて興奮するなんて色情狂の変態みたいだけど、素っ裸になっておっ立った股間を念入りに布で拭ってるカレルも大概だから、気にしたら負けだ。舐めるような視線に興奮しながら、尻の穴を広げて指を入れた。爪先だけを埋める。つぷっと肉の輪を潜る感触。ゆっくり進めて第二関節の所で止めた。
視線を上げると、カレルが唇を噛んで眉を寄せているのが見えた。ゴクリと音を立てて、喉の骨が大きく動く。
「っ、っ、うぅ……」
興奮はするけど、中が気持ちいいのか良くないのか分からない。いつもどんな風にされてるんだっけ? 軽く目を閉じて、思い出しながら指を動かしてみる。でも見られてる緊張感と、見えない場所を触る恐怖感で上手く快感を拾えない。
「わかんない……カレルがして……」
降参して両腕を伸ばすと、馬鹿みたいな勢いで飛びつかれてシャツを剥ぎ取られ、伸し掛かられた。
「アッ…、アッ! んっ!」
熱くて重い身体に押しつぶされて、それだけで甘く達してしまう。一人でしてた時は強めに擦っても反応が鈍かったのに、自分の身体が現金過ぎて自分でも呆れた。
「ンッ」
唇ごと食べられるみたいなキスで身体中震える。貪り合うと酸欠で頭がぼうっとした。
カレルはオレの顎やその下や首筋を甘噛しながら徐々に下にずれていく。オレは無理な姿勢で首を持ち上げて、カレルの髪に口づけた。汗と森の湿気の濃い匂いがする。
「カレル……カレル……」
傷跡のいっぱい残ってる背中に腕を回すと、伸び上がってきたカレルに口づけられた。
「熱はもうないな? 体調はもういいのか?」
薄暗い中で緑の目がギラギラ輝いてる。
「うん……もう大丈夫。熱は昨日には下がったよ」
弾む息の合間に言うと、カレルはちょっと眉を寄せて疑うように両目を細め、そっとオレの脇腹をなでた。
「んっ、フフ……」
くすぐったくて身体をくねらせると、腰を引き寄せられて昂ったモノ同士をくっつけ合うようにされた。
「んぁっ! これすき……」
正直に言うとご褒美のようにキスされ、脇腹から骨盤の出っ張りを撫で回される。熱くて大きい手のひらの感触が、涙が出るほど気持ちいい。
分厚い肩に何度も歯を立てて腰を押しつけ、「もっと」とねだる。それに応えるようにグシャグシャに濡れた性器に指を絡められた。
「アッ! あっ!あぅっ!イッちゃう……ゥクぅッ!」
こらえる暇もなく精液が吹き出す。喉の奥が狭くなって変な声が漏れた。息がいつまでも収まらなくて、オレはグッタリベッドに身体を投げ出す。もしかしたら、まだちょっと本調子じゃないのかも……。
そう思ったけど、ここで終わるのは嫌だった。ちゃんと最後までしたい。カレルもまだイッてないし。
「カレル……」
目を閉じたまま脚を腰に絡めたら、体を裏返されて覆いかぶさられた。背面全部覆われて、温かいけど苦しい。でもその苦しさが気持ちいい。後ろからされるのは最初は怖かったけど、今はもう嫌じゃない。尻の間に熱いものを押し当てられて、期待で背筋が震えた。
「んぅ~」
ぴったり閉じさせられた脚の間をカレルのモノがゆっくり往復する。出っ張った部分が縁をかすめる度に、入れて欲しくて穴の縁がうごめく。なのに熱はそこを素通りして会陰を擦り、玉の裏に当たって止まった。
「うぅ……ウ、ン……」
カレルのモノは、内ももに引っかかりながら尻の方まで下がっていって、また同じように入り込んできた。それを何度も繰り返される。
───これって素股じゃん!
「カレルっ!」
オレはもどかしくて後ろを振り返ったけど、
「楽にしてろ。今日は最後までしないから」
と眉間にシワを寄せた歪んだ顔で微笑まれて、その顔があんまり色っぽくてカッコイイので息が詰まってしまった。
「やだ……いれてほしい……」
尻を上げると、宥めるように押さえつけられて、
「病み上がりは大人しくしとけ」
と耳元に囁かれる。
「んっ! んぅ……」
耳たぶに舌を這わされながら腰を打ち付けられ、半端な興奮でまた息が上がった。
カレルは散々オレの股をこすった挙げ句、尻の間に勢いよくぶち撒けて果てた。
「はっ……はっ……」
「ぅん、…ふぁ……ぐぇっ……」
押し潰す勢いで体重をかけられてカエルみたいな声を出してしまい、カレルはちょっと笑いながらオレの上から退いた。耳に何度も口づけながら、オレの尻の割れ目を手で雑に拭う。……拭ってんのかな? 塗りつけてるような気もするけど。
ぐったりして首だけ後ろに向けると、満足そうな顔のカレルと目があった。
「……これでおしまい?」
「そんな顔をしてもダメだぞ。熱が下がったばかりなんだから」
額にキスされてオレはムッと口をとがらせる。
「平気だって。昨日にはもう下がってたんだから……」
「ダメだ。いつもより汗がひどい。回復しきってない証拠だ」
カレルはそう言ってベッドを離れ、新しい布を濡らしてオレの体を拭き始めた。オレはうつぶせになったまま、自分の額を触ってみる。熱くはないけど、確かに汗がひどい。カレルの言う通り、完全回復ではないんだろう。でも丁寧に尻を拭かれていると、もっとしたくて勝手に腰が揺れてしまった。
「こら! 誘惑しないでくれ」
カレルはペシペシとオレの尻を叩き、
「後は自分でしろ」
と手に濡れ布巾を握らせる。
「はあい」
渋々起き上がると、「良い子だ」とご褒美のようなキスをされた。
体を拭いて、水を飲むついでに炉の火に灰をかぶせて始末してからベッドに戻ると、カレルは先に横になっていた。空けてくれてあった隙間に潜り込むと、軽く抱き寄せられる。
「森番は?」
「……あした戻る」
耳元に囁くと眠そうな声で答えが返ってきた。
「途中で戻ってきたの? わざわざ?」
「アキオが心配だったから……」
モニャモニャと言ってまた眠ってしまう。疲れてるみたいだ。もしかしたら割と無理して戻ってきたのかもしれない。
「ありがとう。やっぱり寂しかったから、戻ってくれて嬉しい」
胸元に顎を乗せると、カレルは目を閉じたまま笑った。
……で、そのまま眠ってしまえれば良かったんだけど、オレは中々眠れなかった。
出すものは一回出したけど、腹の奥がムズムズして落ち着かない。
「ん~~………」
横向きでこっち向いて眠ってるカレルに抱きついてみても、背中を向けてみても、どっちにせよ熱が気になる。脚を絡めて二の腕を甘噛みすると、
「う~~ん」
と唸って首に腕を巻き付けられた。苦しい。重い腕を持ち上げて雑にどかしても、カレルは全く起きる気配がない。
多分ここで無理に起こして「して」って言っても、抱いてはもらえない。過去に色々あったので、体調不良に関しては非~~常~~に厳しいのだ。
でもこのままでは収まらないオレは、力の抜けきったカレルの手をそ~っと自分の尻に導いた。カレルは元々体温高めだけど、眠っているせいでさらに熱くなっている。手の甲に自分の手の平を重ねて指を絡め、そ~っとそ~っと手を下着の中に滑り込ませる。口から心臓が飛び出しそうにドキドキした。良くないことなのは分かってるけど、止まらない。
穴はさっき自分でいじったし、周りは散々擦られてほぐれてる。塗った油もまだ残ってる。
カレルの指に自分の指を添えて、ゆっくり押し込んでみた。
「ンッ!」
一瞬違和感はあるけど痛くはない。でも第一関節より先は入らない。手だけ引っ張っても姿勢に無理がある。
「ンッ、うん……っ、んっ」
駄目だ、やっぱり良いところには届かない。
オレが諦めて手を離しかけた時、急に腕に力が入ってカレルの指が深いところまで食い込んだ。
「~~~~~ッ……!ッ、ッ!」
「駄目だと言ったろうが」
眠たげなかすれ声を耳に吹き込まれて、一気に体に火が付いた。
「あっ……やッ……ごめ……あっ!」
「……五日後には帰ってくるから、それまで大人しくしててくれ」
中を押し上げられながら耳に口づけられる。オレはカレルの身体にぴったりくっついて、もっととねだった。
「アッ! うんっ! あぁっ! やァッ!」
でも指は中の良い所を数度強く押したあと、あっけなく出ていってしまう。離れようとする手を捕まえると、カレルは耐えるように眉を寄せて、
「いつの間にそんなにいやらしくなったんだ?」
とオレの耳を噛んだ。
「……ここに来てからだよッ! 一人でイケなくなったのも、ケツがムズムズするのも、全部カレルのせいじゃん! 責任取れよっ!」
ガジガジ手のひらをかじってやると、カレルは困ったような嬉しいような、やに下がったような、なんとも言えない変な顔をした。
「そうか……オレのせいか」
「そうだよ! 体力回復しとくから、次はちゃんと抱けよ!」
足先でスネを蹴ると、
「ぜひしっかり休養しておいてくれ。寝かせないから」
と苦しいくらいに抱きしめられて、オレはカレルの胸元を歯形がつくまで噛んだ。
冒頭に出てきたヤギのトロちゃんがアキオとカレルに引き取られるエピソードは、販売中の電子書籍(紙の本もあります)に収録されています。
https://amzn.asia/d/0eEFfQmm
https://inheritance92.booth.pm/items/5621547
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「アキオ、本当に大丈夫? 昨日まであんなに熱が出てたじゃない。カレルが戻って来るまでここにいれば良いのに……」
玄関先で、マリーノを腕に抱いたフロラが心配そうに言った。
「もうすっかり元気だから大丈夫だよ! 畑の様子も見に行きたいし、トロも寂しがってるだろうから」
「そう? でも無理しちゃ駄目よ。あなた身体が弱いんだから」
気遣うように頬を撫でられ、苦笑してしまった。オレは別に虚弱体質じゃない。こっちに来てから風邪をひいたのはこれが初めてなんだから、どっちかって言うと頑丈な方だと思うけど。
「じゃあまたね、マリーノ」
ほっぺをつついてやろうと手を伸ばすと、マリーノはプイと横を向いた。これは拗ねてるな。遊び相手のオレがいなくなるのが嫌なんだろう。でももう五日もここでお世話になってるし、無人のままの家も心配だから、帰らなきゃ。
オレは二人に手を振って、フロラとティトーの家を出た。
外は夏だというのに冷たい風が吹いていた。エラストの夏は短い。その短い夏の間に植物たちはいっせいに伸びて花を咲かせる。毎日のように草を刈っても追いつかない。家々を繋ぐ曲がりくねった小路はと夏草に埋まりかけ、ウチの家の周りも草ボーボーだ。
種を飛ばしそうな草を雑に引っこ抜きながら家畜小屋兼納屋の方へ回ると、一頭の白いヤギが声高に鳴いて出入り口の柵まで跳ねてきた。今年の春に生まれたからまだ子どもなんだけど、身体はもうかなり大きい。名前はトロという。柵を開けて中に入ると、メエメエと鳴いて何度も頭突きされた。
「ごめんごめん! 寂しかったよな!」
オレはトロの側に膝をつき、長い首をかき抱いてゴワゴワする毛を思い切り撫でてやる。まだ伸びきっていない角の間を掻いてやると、トロは甘え声で激しく鳴いてオレの耳を噛んだ。
「あはは! くすぐったいからやめろって! お腹空いてるのか? ほら、お土産」
摘んできた草を差し出すと、美味そうに食べ始める。オレはその間に水桶と飼い葉入れ、寝藁の汚れ具合をチェックしたけれど、ほとんどやることはなかった。水も飼い葉もたっぷり入っているし、フンや尿の汚れも少ない。オレが風邪で倒れたのを聞きつけた誰かがやっておいてくれたのだろう。この村の家畜は、飼い主は一応決まっているけどみんなの共有物だ。みんなで世話して、みんなで増やし、みんなで乳や肉や皮を分ける。飼い主には、繁殖や屠畜を決める権利と、死んだときの処理をする責任があるだけ。全員顔見知りの村だから成り立ってる雑な飼い方だけど、気楽ではある。
草を食べ終えたトロは、床掃除をするオレに頭を擦り付けてきた。相変わらずの甘えん坊だ。服を噛んで引っ張られ、まだほとんど中身の減っていない飼い葉入れの前に連れて行かれて、可愛い顔で見上げられた。どうやら食べるところを見てて欲しいらしい。
「ハイハイ。見ててやるから沢山食べな」
背中を撫でてやると、機嫌よさげに尻尾を振りながら飼い葉を食べ始める。オレはトロが草を噛む音を聞きながら、暗くなっていく外をボンヤリと見た。
夏の夕暮れは長い。葉を茂らせた樫の木の高い梢の先に星が瞬いてる。でも地平の辺りはまだほの明るくて、この薄明かりが夜遅くまで続く。一年で一番良い季節だ。オレにとって、エラストの夏はこれで二度目。
一度目の夏は、森番の当たったカレルと一緒に、高原と西の村の境にある大きな森で過ごした。夏の間に木や草が茂りすぎて森が弱るのを防ぐために、森番は何人かでチームを作って森全体を整備する。ずっと野外にいる体力仕事だから、森番は村の中でもデカくて力の強い人の役割になりがちで、カレルやティトーやイザベルなんかは、ほぼ毎年駆り出されるらしい。
それを聞いたときは驚いた。だってイザベルは若い女性なのに、カレルとおんなじ扱いなんだ!? って。
だけど、イザベルは気が優しくて狩りや戦闘に向かないだけで、力はすごく強いんだってさ。獣態になるとデッカいヘラジカで、本気で頭突きされたら、熊のカレルでも怪我をするくらいらしい。実際カレルは一度彼女をひどく怒らせて、肋を折られたって言ってた。どんな喧嘩をしたのか気になってしつこく聞いたけど、イザベルもカレルも教えてくれなかった。
今年もカレルは森番で、勿論オレも一緒に行くつもりだった。けど、出発前日に運悪く風邪を引いて熱が出てしまったんだ。
カレルはオレが回復するまで森番は休むって言ってくれたけど、オレはただの風邪なんだから気にせず行ってくれって言い張った。だってチームで仕事するのに、エースが抜けたら大変じゃないか。オレはオマケだから参加してもしなくても一緒だし。
でもカレルは絶対側にいると言って聞かない。どっちも引かずに喧嘩になりかけたところに、カレルを迎えに来たティトーが、
「一人にするのが心配なら、アキオはうちで静養すれば良いんじゃないか? フロラが看病してくれるさ」
と助け船を出してくれた。
オレはティトーの申し出を有り難く受けることにした。カレルはしばらく文句を言ってたけど、ティトーが上手いこと言いくるめてくれて、オレはティトーの家に運ばれることになったんだ。
正直、意地を張って一人で寝てなくて良かったと思う。あの後、急に熱が上がって、オレは三日ほどまともに立つこともできなくなったからだ。冷蔵庫も水道もレトルト食品もないエラストで、三日動けないと割と生活が詰む。
フロラが熱心に看病してくれたおかげで、四日目には熱も下がって、五日目の今日はすっかり元気だ。でも夕風に吹かれているとちょっと寒くなってきて、身震いが出た。油断しない方が良いかもしれない。
「トロ、もう満足したかい?」
餌箱から顔を上げたトロは、機嫌よさげに「メェェ」と鳴いて寝藁の上にしゃがみ込む。オレはトロの頭をもう一度撫でてやってから、家の方へと回った。
重い木のドアを開けると、埃っぽく澱んだ空気が全身を包んだ。窓を開けて空気を入れ換え、居間の炉に火を入れる。水瓶の中身を新鮮なものに入れ替えて、鍋にお湯を沸かす。沸かしたお湯を贅沢に使って顔と手足を洗い、気兼ねなく素っ裸になって身体を拭いた。
「はぁ~……スッキリする~!」
フロラの所でも顔と手足くらいは拭いてたんだけど、女の人しかいない家で堂々と裸になるのは気が引けて、遠慮がちにしかできなかったんだよね。部屋に鍵なんかないから、歩き回るようになったマリーノがいつ部屋に入ってくるか分かんなかったし。
マリーノは本当に良い子に育ってる。よく笑って、よく食べて、よく眠り、フロラとティトーのことが大好きで、お花とお人形が大好きな女の子だ。具合が悪くて寝てばかりだったオレのことは、自分より下だと思っているようだった。昨日は体調が回復したから、一緒に外に散歩に行こうかと誘ったら「あちおはねんねよ! またおねつでるよ」と怖い顔で睨まれた。不器用に諭すような言葉がマイアリーノとそっくりで、オレは少し泣きそうになってしまった。
着たきりだった下着を履き替えて、汚れた物を洗って炉の前に干し終えたら、もうやることがなくなった。夕飯はフロラの所で食べてきたし、畑を見に行くには時間が遅すぎる。
病み上がりだし早めに寝ようと決めて、オレはパジャマ代わりのシャツだけ引っかけてベッドに潜り込んだ。
寝転がると、炉の火にボンヤリと浮かぶ部屋はひどく寒々しかった。たまにカレルが帰ってこない夜はあるけど、いつもは使った食器や脱いだ服や、明日食べるための食料、すぐに使うからと出しっぱなしの道具類が部屋のあちこちに置いてあって、いなくても気配は強く残ってる。だけど、今夜は全部綺麗に片付けられている。森番は十日に一度くらいしか村に帰らないから、片付けてから家を出るのは当然なんだけど、なんだかそれがひどく寂しかった。
身体の大きいカレルと並ぶと狭く感じるベッドも、一人だと随分広い。毛布に鼻先を埋めるとカレルの匂いがして、不意に涙が出そうになった。
───おかしいよな。何日か会えなかっただけなのに、泣くほど寂しいとか……
でもフロラの所にいるときも、しょっちゅうカレルのことを思い出して寂しくなってた。高熱にうなされてるときに、側にカレルがいてくれたらって何度も思った。
家に帰ってきて不在を実感すると一層寂しい。ペラペラの毛布一枚を抱きしめて、
「……カレル……」
と名前を口に出すと、どうしようもなく恋しくなった。
やっぱり意地を張らずに一緒にいてもらえば良かった。あとどれくらいで帰ってくるかな。前は十日くらいで一旦森から出たから、今回もそうなら残り五日もある。
オレは毛布を抱えたままむくりと起き上がって、部屋をぐるりと見回した。何かカレルの気配をもっと感じられる物がないかなと探すと、壁際に掛かったの冬用の外套が目につく。黒いなめし革に分厚いウールの裏地のついた、フード付きの重たいコートだ。
それを外してベッドに持ち込んで頭から被ると、カレルに抱きしめられてるみたいでちょっと安心した。
髪の匂いの染みついたフードには、毛皮の縁取りがついている。目を閉じで深呼吸して、カレルの香りを嗅ぎながら毛皮を撫でてみたけど、髪を撫でるのとは全然違う感触でガッカリした。
カレルの髪は癖が強くて、いつも毛先が傷んでる。オレはちょっとパサついたその感触が好きだ。顔の皮膚も乾燥気味で、夜には髭がざらつき出す。そのざらついた頬や顎に触れるのが好き。唇や舌で愛撫されるとき、肌に髭が当たるとくすぐったくて気持ちいいんだ。
「ん……」
触れられる感触を思い出して身体を捩ると、剥き出しの脚に外套が当たってヒヤリとした。分厚い皮の生地を脚の間に挟んでいると、だんだん温まって人肌に近づいてくる。生温くなった外套の袖をそっとシャツの裾から腹へともぐりこませると、カレルに触れられてるような気がして、オレはうっとりと目を閉じた。
「ん……ん……」
フードに噛みつきながら、握った袖でいつもカレルにされるみたいに自分の体を撫で回す。本物のカレルの手はもっと熱いけど、分厚く硬い手の平となめし革の感触はかなり似てる。
「ふっ……」
胸に袖を押し付けて揉むようにすると、じんわり気持ち良くて腰がうずいた。もっと触って欲しい。物足りなくて、自分の指で乳首に触れた。
「あっ!」
ピリッとした快感で声が漏れる。
「ンッ、ん、っう……」
先をこね回して摘んでみると、刺激が強すぎて痛かった。カレルはいつもどうしてくれてたっけ? 舐めて濡らしてから触ってたような気がする。
オレは指を口に含んで湿らせてから胸の先にもう一度触れた。
「あ……ん……」
今度は痛くない。でもすぐ乾いて皮膚が引きつれる。一人でする時には胸なんか触らなかったから、上手いやり方が分からない。
───ていうか、オレこっちの世界に来てから一回も一人でしてないよな!?
日本にいたときはバカみたいに一日何回もシコって紙資源を無駄にしてたのに!
衝撃的な事実に気がついてしまった。そりゃまあ、飛ばされてきた当時はちんちんついてなかったからしたくてもできなかったし、取り戻してからはずっとカレルといるから、一人でする必要なかったし……。
オレは外套に包まれた暗闇の中で目を瞬かせた。
……ちょっと、久しぶりに一人でしてみようかな……?
丁度良くカレルいないし、一人でするのも楽しいかも……?
そう思いつくと、ムズムズしてくる。
オレは若干ワクワクしながら下着の中に手を突っ込んだ。相変わらず濃くならない毛の下で、手のひらジャストサイズの性器が立ち上っている。軽く握って上下に動かすと、普通に気持ちよかった。カレルとするのはもちろんすごく良いけど、自分のペースで楽しむのも悪くない。
「ハッ……ハッ……うぅ……」
……おかしい。
しばらくチンコをいじってみても、なかなか出すまで至らない。早くスッキリしてしまいたいのに、なかなかイケない。オカズがないせいかな? でも女の子のこと考えても興奮しない。えっちな事を考えようとして浮かんでくるのはカレルのことばっかりだ。
覆いかぶさってる外套を噛んで気を紛らわせても、カレルとするキスを思い出すばっかりで余計に気が散る。強めに性器の先をいじると、腹の奥がきゅっと切なくなった。
ぶっちゃけ、後ろが物足りない。
オレなんだか後ろめたい気持ちになりつつ、ベッドの横にある小さなテーブルに手を伸ばした。そこにはカレルとする時に使う油が置いてある。小さな容器のフタを開けると、嗅ぎ慣れた薬草と油脂の匂いがした。気持ちいいことと結びついてる香りに、一気に脳が興奮する。
たっぷり指ですくい取って、後ろに塗りつけた。自分でこっちを触ることはあんまりないけど、いつもされるみたいにゆっくり撫で回すように触れていく。
「う……う、ぁ……」
ベッドからずり落ちかけた外套を引っ張り上げて頭から被った。汚したら悪いなとチラッと思ったけど、カレルの香りを手放したくなかった。でも本物が恋しい。
「ふぁ……ンッ!」
気ばかり焦って、ほぐれきってない後ろに中指の先を入れてしまって、違和感で腰がはねた。慌てて指を引き抜いて、なだめるように穴の周りを撫でる。
ヒクヒクしてるくせに入れたら痛いってどういうことだよ、この穴は!
なのに前は元気なままでイライラする。やみくもに後ろを触りながら、前を擦りあげた。
「ハァッ……あっ、あっ……んぅ……」
もうちょっとでイケそうなのに、ギリギリで達しきれない。
なんでだよ! 早いのには自信があったのに!
いつもカレルにされたらすぐイっちゃうのに……
「あぅぅ~~……カレルぅ……」
ようやく柔らかくなった後ろに中指を忍ばせる。気持ち良いけど、でも長さも太さも全然足りない。
「うぅ……カレルにして欲しいのに……」
ギュッと目を瞑って呟くと、頭まで被っていた外套が急に取り払われた。
「えっ!? うわっ!?」
ビックリして目を開けると、光に目が眩んだ。ベッドサイドのランプが点されていて、その脇に真っ暗な人影が立っている。暗闇に慣れていた目ではそれが誰か見えなくて、オレは恐怖で身を固くした。
「アキオ」
声を聞いて、それがカレルだとわかって一気に気が抜けた。何度も瞬きすると、ようやく光に目が慣れて顔がはっきり見える。おかえりと言う前に、
「何をしてたんだ?」
と不審げに尋ねられて、オレは慌てて下半身に這わせていた手を離して飛び起きた。足元にわだかまっていた毛布を拾おうとして、隣に座ったカレルの手で邪魔されてしまう。
「何をしてた?」
顔を覗き込まれて、恥ずかしさと情けなさで耳まで熱くなった。
「アキオ?」
「……っ! ……っっ! わ、わかってるくせにっ……!」
近づいてくるカレルの顔を手で押しのけようとしたけど、その手でさっきまで触っていた場所のことを思い出してやめた。脂でベタベタの手の代わりに肘で隣の男の胸を押すと、カレルはオレの前腕を捉えて上目遣いでニヤリと笑う。
「オレにして欲しいとか言うのは聞こえたが……」
腕を持ち上げられて肘の内側を噛まれ、ゾクッとしてしまった。
「何をだ? 風邪っぴきの看病か?」
「か、風邪はもう治ったよ」
「じゃあ何をして欲しくて泣いてたんだ?」
カレルは片頬を歪めて笑う。
「泣いてないよっ! クソッ! オレのこといじめて楽しんでるだろ!?」
キッと睨むと、愉快そうに笑って頬にキスされた。
「いじめてなんかないだろう。して欲しいことをしてやろうと思っただけだ。……触れて欲しい?」
低い声で耳に囁かれ、オレはギュッと目を瞑って茹で上がりそうな頭を頷かせた。そのまま俯いていると、頬に温かい息がかかって唇を押し当てられる。伸びた髭がくすぐったい。
「ん」
唇にして欲しくて顔を上げると、チュッと音を立ててキスされた。口を開けて舌を待つ。でも柔らかい感触は一度だけオレの唇を吸ってすぐに離れてしまった。
「……?」
肩透かしを食らって目を開けると、カレルは意地悪に黄緑の目を細めた。
「帰ったばかりで手も洗ってない。着替えてくるから、それまで一人で続きをして待っていてくれ」
そう言ってベッドを離れてしまう。確かにカレルは分厚い生地の上着を着て、その上からケガ防止用の革鎧も着けたまま、ブーツも脱いでいないかった。
オレは一人で盛り上がっていた自分がますます恥ずかしくて、膝を抱えて頭から毛布を被る。けど、その毛布も取り上られて、居間と寝室を区切る衝立の上に引っ掛けられてしまった。そして、カレルは衝立を壁際に寄せる。
「何してんの?」
オレが首を傾げると、カレルは居間のテーブルに尻を引っ掛けて腕あてを外しながら、
「衝立があると見えないだろう?」
と目を眇めた。
「見えないって、何が?」
「お前が一人でするところが」
そう言われて全身の血が沸騰するかと思った。
「バッ……! バッカじゃないの!? し、し、しないよ!」
「なぜ?」
「なぜって……なんで!?」
「先に準備してくれたら助かるだろう」
外した腕あてをポトリとベンチに落として片頬だけで笑う。ひどくやらしくて優しい顔で、見るだけで胸が高鳴った。
───オレが好きなのを知っててそういう顔するのはズルい!
上目遣いに睨むと、カレルはことさらゆっくり皮のベストの合わせ目を解いた。藻掻くように両腕を抜いて、ベストをベンチに投げ出す。
これ、絶対わざとやってる。乗せられるのは癪に障るけど、シャツの裾をズボンのウェストから引っ張り出す手つきに、オレの喉は勝手に干上がってゴクリと音を立てた。
でもカレルはシャツの首元を緩めただけで脱がず、ブーツを脱ぎだす。脱いだブーツを炉の側に並べて置いて、靴下を引っ張って外す。親指の長い幅広の裸足。足首の腱の太さが目立つ。
その次はようやくシャツ。ゆっくりと裾をたくし上げ、頭から脱ぐ。広い胸と引き締まった腹が露わになって、オレは早く触りたくてウズウズする。
「アキオ、見てないで自分で進めてろ」
意地悪に言われて肌が粟立った。
命令されて喜ぶ趣味はないんだけど……ないと思うんだけど、興奮する。自分の性癖が心配だ。
オレは中途半端にずらしてた下着から片足だけ抜いて、シャツの裾を口に咥えて性器に手を伸ばした。触ってなかったのに緩く立ち上がったままだったそれは、触れるとすぐに硬くなる。
「んっ……んん……」
カレルはこっちを向いたまま、オレが沸かしてあった湯を桶に入れて顔を洗い、丁寧に手と足も洗った。そんなの良いから早くこっちに来て欲しいのに、悠長に新しい湯を用意して、濡らした布で髪や体を拭っている。
「フゥ」
首元を拭ったカレルがホッとしたように息を漏らすのに、勝手に体が反応してしまう。
「ふぅっ……うぅ……」
先っちょをいじる指が滑る汁で濡れた。興奮で息が上がって苦しい。ベルトを外すカレルから目が離せない。カレルもこっちを見てる。
「うっ……ンッ……」
片手で竿を握ったまま、もう片手でパンパンになってる玉を撫でて、その後ろに指を滑らせた。両膝を立てて見せつけるみたいに穴の縁をなぞる。チラッと目を上げると、カレルが食い入るようにオレを見ていた。
見せて興奮するなんて色情狂の変態みたいだけど、素っ裸になっておっ立った股間を念入りに布で拭ってるカレルも大概だから、気にしたら負けだ。舐めるような視線に興奮しながら、尻の穴を広げて指を入れた。爪先だけを埋める。つぷっと肉の輪を潜る感触。ゆっくり進めて第二関節の所で止めた。
視線を上げると、カレルが唇を噛んで眉を寄せているのが見えた。ゴクリと音を立てて、喉の骨が大きく動く。
「っ、っ、うぅ……」
興奮はするけど、中が気持ちいいのか良くないのか分からない。いつもどんな風にされてるんだっけ? 軽く目を閉じて、思い出しながら指を動かしてみる。でも見られてる緊張感と、見えない場所を触る恐怖感で上手く快感を拾えない。
「わかんない……カレルがして……」
降参して両腕を伸ばすと、馬鹿みたいな勢いで飛びつかれてシャツを剥ぎ取られ、伸し掛かられた。
「アッ…、アッ! んっ!」
熱くて重い身体に押しつぶされて、それだけで甘く達してしまう。一人でしてた時は強めに擦っても反応が鈍かったのに、自分の身体が現金過ぎて自分でも呆れた。
「ンッ」
唇ごと食べられるみたいなキスで身体中震える。貪り合うと酸欠で頭がぼうっとした。
カレルはオレの顎やその下や首筋を甘噛しながら徐々に下にずれていく。オレは無理な姿勢で首を持ち上げて、カレルの髪に口づけた。汗と森の湿気の濃い匂いがする。
「カレル……カレル……」
傷跡のいっぱい残ってる背中に腕を回すと、伸び上がってきたカレルに口づけられた。
「熱はもうないな? 体調はもういいのか?」
薄暗い中で緑の目がギラギラ輝いてる。
「うん……もう大丈夫。熱は昨日には下がったよ」
弾む息の合間に言うと、カレルはちょっと眉を寄せて疑うように両目を細め、そっとオレの脇腹をなでた。
「んっ、フフ……」
くすぐったくて身体をくねらせると、腰を引き寄せられて昂ったモノ同士をくっつけ合うようにされた。
「んぁっ! これすき……」
正直に言うとご褒美のようにキスされ、脇腹から骨盤の出っ張りを撫で回される。熱くて大きい手のひらの感触が、涙が出るほど気持ちいい。
分厚い肩に何度も歯を立てて腰を押しつけ、「もっと」とねだる。それに応えるようにグシャグシャに濡れた性器に指を絡められた。
「アッ! あっ!あぅっ!イッちゃう……ゥクぅッ!」
こらえる暇もなく精液が吹き出す。喉の奥が狭くなって変な声が漏れた。息がいつまでも収まらなくて、オレはグッタリベッドに身体を投げ出す。もしかしたら、まだちょっと本調子じゃないのかも……。
そう思ったけど、ここで終わるのは嫌だった。ちゃんと最後までしたい。カレルもまだイッてないし。
「カレル……」
目を閉じたまま脚を腰に絡めたら、体を裏返されて覆いかぶさられた。背面全部覆われて、温かいけど苦しい。でもその苦しさが気持ちいい。後ろからされるのは最初は怖かったけど、今はもう嫌じゃない。尻の間に熱いものを押し当てられて、期待で背筋が震えた。
「んぅ~」
ぴったり閉じさせられた脚の間をカレルのモノがゆっくり往復する。出っ張った部分が縁をかすめる度に、入れて欲しくて穴の縁がうごめく。なのに熱はそこを素通りして会陰を擦り、玉の裏に当たって止まった。
「うぅ……ウ、ン……」
カレルのモノは、内ももに引っかかりながら尻の方まで下がっていって、また同じように入り込んできた。それを何度も繰り返される。
───これって素股じゃん!
「カレルっ!」
オレはもどかしくて後ろを振り返ったけど、
「楽にしてろ。今日は最後までしないから」
と眉間にシワを寄せた歪んだ顔で微笑まれて、その顔があんまり色っぽくてカッコイイので息が詰まってしまった。
「やだ……いれてほしい……」
尻を上げると、宥めるように押さえつけられて、
「病み上がりは大人しくしとけ」
と耳元に囁かれる。
「んっ! んぅ……」
耳たぶに舌を這わされながら腰を打ち付けられ、半端な興奮でまた息が上がった。
カレルは散々オレの股をこすった挙げ句、尻の間に勢いよくぶち撒けて果てた。
「はっ……はっ……」
「ぅん、…ふぁ……ぐぇっ……」
押し潰す勢いで体重をかけられてカエルみたいな声を出してしまい、カレルはちょっと笑いながらオレの上から退いた。耳に何度も口づけながら、オレの尻の割れ目を手で雑に拭う。……拭ってんのかな? 塗りつけてるような気もするけど。
ぐったりして首だけ後ろに向けると、満足そうな顔のカレルと目があった。
「……これでおしまい?」
「そんな顔をしてもダメだぞ。熱が下がったばかりなんだから」
額にキスされてオレはムッと口をとがらせる。
「平気だって。昨日にはもう下がってたんだから……」
「ダメだ。いつもより汗がひどい。回復しきってない証拠だ」
カレルはそう言ってベッドを離れ、新しい布を濡らしてオレの体を拭き始めた。オレはうつぶせになったまま、自分の額を触ってみる。熱くはないけど、確かに汗がひどい。カレルの言う通り、完全回復ではないんだろう。でも丁寧に尻を拭かれていると、もっとしたくて勝手に腰が揺れてしまった。
「こら! 誘惑しないでくれ」
カレルはペシペシとオレの尻を叩き、
「後は自分でしろ」
と手に濡れ布巾を握らせる。
「はあい」
渋々起き上がると、「良い子だ」とご褒美のようなキスをされた。
体を拭いて、水を飲むついでに炉の火に灰をかぶせて始末してからベッドに戻ると、カレルは先に横になっていた。空けてくれてあった隙間に潜り込むと、軽く抱き寄せられる。
「森番は?」
「……あした戻る」
耳元に囁くと眠そうな声で答えが返ってきた。
「途中で戻ってきたの? わざわざ?」
「アキオが心配だったから……」
モニャモニャと言ってまた眠ってしまう。疲れてるみたいだ。もしかしたら割と無理して戻ってきたのかもしれない。
「ありがとう。やっぱり寂しかったから、戻ってくれて嬉しい」
胸元に顎を乗せると、カレルは目を閉じたまま笑った。
……で、そのまま眠ってしまえれば良かったんだけど、オレは中々眠れなかった。
出すものは一回出したけど、腹の奥がムズムズして落ち着かない。
「ん~~………」
横向きでこっち向いて眠ってるカレルに抱きついてみても、背中を向けてみても、どっちにせよ熱が気になる。脚を絡めて二の腕を甘噛みすると、
「う~~ん」
と唸って首に腕を巻き付けられた。苦しい。重い腕を持ち上げて雑にどかしても、カレルは全く起きる気配がない。
多分ここで無理に起こして「して」って言っても、抱いてはもらえない。過去に色々あったので、体調不良に関しては非~~常~~に厳しいのだ。
でもこのままでは収まらないオレは、力の抜けきったカレルの手をそ~っと自分の尻に導いた。カレルは元々体温高めだけど、眠っているせいでさらに熱くなっている。手の甲に自分の手の平を重ねて指を絡め、そ~っとそ~っと手を下着の中に滑り込ませる。口から心臓が飛び出しそうにドキドキした。良くないことなのは分かってるけど、止まらない。
穴はさっき自分でいじったし、周りは散々擦られてほぐれてる。塗った油もまだ残ってる。
カレルの指に自分の指を添えて、ゆっくり押し込んでみた。
「ンッ!」
一瞬違和感はあるけど痛くはない。でも第一関節より先は入らない。手だけ引っ張っても姿勢に無理がある。
「ンッ、うん……っ、んっ」
駄目だ、やっぱり良いところには届かない。
オレが諦めて手を離しかけた時、急に腕に力が入ってカレルの指が深いところまで食い込んだ。
「~~~~~ッ……!ッ、ッ!」
「駄目だと言ったろうが」
眠たげなかすれ声を耳に吹き込まれて、一気に体に火が付いた。
「あっ……やッ……ごめ……あっ!」
「……五日後には帰ってくるから、それまで大人しくしててくれ」
中を押し上げられながら耳に口づけられる。オレはカレルの身体にぴったりくっついて、もっととねだった。
「アッ! うんっ! あぁっ! やァッ!」
でも指は中の良い所を数度強く押したあと、あっけなく出ていってしまう。離れようとする手を捕まえると、カレルは耐えるように眉を寄せて、
「いつの間にそんなにいやらしくなったんだ?」
とオレの耳を噛んだ。
「……ここに来てからだよッ! 一人でイケなくなったのも、ケツがムズムズするのも、全部カレルのせいじゃん! 責任取れよっ!」
ガジガジ手のひらをかじってやると、カレルは困ったような嬉しいような、やに下がったような、なんとも言えない変な顔をした。
「そうか……オレのせいか」
「そうだよ! 体力回復しとくから、次はちゃんと抱けよ!」
足先でスネを蹴ると、
「ぜひしっかり休養しておいてくれ。寝かせないから」
と苦しいくらいに抱きしめられて、オレはカレルの胸元を歯形がつくまで噛んだ。
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エロゲモブのアキオの物語、完結おめでとうございます。
アキオとカレルは最初の出会いで既に二人で船に乗っていたので、もう結婚してるようなもんじゃないか!!などと勝手に思っていました。
ネタバレ避けたいので詳細は控えますが、このお話大好きです!
村の人たちも生き生きしているし、世界観も好きでした。またいつか機会があれば、新しい生活の描写が見られたらなと思います。
カレルとアキオの素敵なお話を、最後まで読ませて下さってありがとうございました。
最後までお付き合い頂いてありがとうございました!気に入って頂けて嬉しいです😊
最初から結婚してるようなもんww私もそう思いながら書いてましたww
またこの二人の短いのはポツポツ書くと思います。
感想ありがとうございました!