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6.願い事

6-4. Fly me to the last stage

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「ちょっとだけ、外出てくる」

 気合いを入れるために一度だけ深呼吸し、聞こえないだろうけど声を掛けてテントの外に出た。まだ夜明は遠く、月明かりだけの暗がりの中、石の光だけが眩しい。

 光の示す方へ歩き出そうとして、すぐ側にいた人影にぶつかった。

「イテッ! あれ? オティアン?」

「アイツの様子は……って、何だそれは? 何が光ってる?」

 カレルの様子を見に来たらしいオティアンは、オレの手の中を覗き込んでくる。

「カレルは落ち着いてる。息も楽そうになったし、もう大丈夫だと思う」

「それは良かったが、何なんだ、その光ってるのは?」

「オレの命願石。滅石と揃えれば何でも願いが叶うらしいんだけど、いまいち発動条件が分かんないんだよね」

 オティアンの瞳が訝しげに瞬く。

「カレルが一個だけ滅石を持ってたから、それと反応してるんだ。一個だけで何が叶うかは分からないんだけど、あの黒い騎士たちを元に戻して欲しいと願ってみるつもり。前に願い事が叶った時と同じ光り方だから、光ってる方へ行けば良いと思うんだけど……」

「一人で?」

 オティアンは腕組みを解いてオレの方へ一歩踏み出してきた。オレは咄嗟に石を握った手を背中に隠す。剣呑な光を宿した目で見つめられ、ちょっと怖くなる。オティアンは味方とは言え、勝つためにはオレを利用しようとするヤツだ。油断はできない。

「オレが連れて行ってやろうか?」

 首を傾げて親しげに言うオティアンの目は笑っていない。

「いや……それは悪いし……一人で行くよ……」

「遠慮するなよ。仲間じゃないか」

 オティアンはもう一歩前に踏み出し、オレの腕を掴んで引っ張り、七色に輝く石に手をかけた。

「危ないって!」

 バチン! と激しい火花が上がり、オティアンが背後の木まで跳ね飛ばされた。

「オレ以外が触るとそうなるから!」

 まだパチパチとスパークする石を胸元の袋にしまうと、オティアンは埃をはたきながら立ち上がった。

「成る程ね。良くできてるな……不思議なもんだ」

 汚れを払い終えたオティアンは、おもむろに上半身を覆う革鎧の留め具を外し、それを足元に置く。腰回りのガードも外し、手甲、脛当て、長靴も外してテントの周りに並べ始めた。下に着込んだシャツまで脱いだので、

「何してんの!?」

 と慌てて突っ込むと、ニヤリと一瞬片頬を歪めた。
 オティアンは、シャツとズボンを丁寧に畳んで一纏めにし、短い下着一枚になって、括った髪をほどく。

 月明かりの下でうっすら輝く程に真っ白な身体が、一瞬震えた後、そこには巨大な猛禽の姿があった。頭と腹が白くて、背中は黒い。
 タカ?
 ワシ?
 良く分かんないけど、そういうヤツ。ただサイズが規格外にデカイ。

「マジかよ!?」

 びっくりしすぎて腰を抜かすオレの目の前で、ツルハシみたいな嘴が開く。突かれるんじゃないかと身構えたけど、オティアンだった鳥はさっき脱いでまとめた服を口に咥え、翼を伸ばした。
 端から端まで三メートルはゆうにありそうなそれが大きく羽ばたくと、正面に立っているオレの髪が乱れるくらいの風が起こった。
 巨鳥は数回羽ばたいて空へ舞い上がる。急上昇して暗い空で大きく旋回する鳥を、オレはポカンと口を開けたまま見上げていた。

───エラストの混ざり者は四つ足、ノルポルの方は翼持ち。オティアンが言ってたのは覚えてたけど、マジで鳥なんだ……

 大きく空を回る鳥がどこへ行くのかと見まもっていると、それはスピードを落とさないまま真っ直ぐにオレの方に向かってくる。

「危なっ……!」

 咄嗟に背を向けてテントに逃げ込もうとしたところ、後ろから肩を掴まれてフッと身体が宙に浮いた。

「わーーーっ!? わっ、わっ、わっ!」

 巨鳥は爪でオレを挟んで再び急上昇する。足の先がテントの屋根を擦ったと思った次の瞬間には、もう地上の人間がマッチ棒くらいに見える高度まで上っていた。すごい早さで野営地が遠ざかり、聖都の北の湖が近づいてくる。

「ギャーッ! 怖いっ! 下ろして! 下ろしてーーっ!」

 肩に食い込む爪を叩いて必死で訴えると、

『どっちに行けば良い?』

 と、頭上からオティアンの声がした。

「どっち!? いや地上に降りて! 怖いって!」

『石の光はどこを向いている? 運んでやるから、言ってくれ』

「あ、そのつもりだったんだ……だったら飛ぶ前に教えてよ! えーっと……湖を越えて、もっと北!」

 不安定にぶら下げられた状態で、石を落とさないように握って光が差す方向を確認する。オティアンは無言で更に飛ぶスピードを上げた。

 風圧でまともに目が開けられない中、薄目で光を確認するのは至難の業だった。容赦なく風が全身を打ち付けてきて、あっという間に凍りそうに身体が冷える。掴まれた肩も痛い。最悪の運ばれ心地だ。

 それでも空から行くのは手っ取り早かった。あっという間に湖を越え、暗い森にさしかかる。石の光は森の中程で真下を指した。

「ここ! 下りて!」

 大声で指示すると、オティアンはフッと羽ばたくのを止め、ゆるく旋回しながら目的地へと下降した。大きな翼が枝に引っかからないよう、茂った木々切れ目をめがけて下りていく。ふわっとブーツの足裏が地面に着くと、肩を掴んでいた爪が離され、オレは草地に投げ出された。

「ウギャッ!」

 両手で石を握っていたせいで顔と膝から着地してしまい、変な悲鳴が漏れた。オティアンは優雅に羽を折りたたみ、また身震い一つで人の姿に戻る。用意周到にクチバシに咥えてきた衣服を身につけると、オレの方を振り返って

「さあ、次はどっちへ行く?」

 とダルそうに首を振った。息は上がりきっているし、げっそり疲れて見える。
 断りもなく強引に運ばれたことを罵ってやろうかと思ったけど、顔を見るとそんな気はどこかへ消えてしまった。

「オティアン……大丈夫かよ?」

「気にするな。飛んだ後すぐに戻ると、いつもこうなる。それより、どっちへ行けば良い?」

 手のひらの上で光る石を見せると、オティアンは無言で光が差す方向へと歩き始めた。


 歩き始めてすぐに視界が開け、月明かりに白く浮き上がる神殿風の建物が現れた。一番最初、カレルと脱獄した時に来た神殿だ。
 あの時はマイアリーノの仲間たちがいたけど、今は無人で静まりかえっている。丁寧に掃き清められた階段を上り、神殿の中に入ると、壁に並ぶランプには火が点されていた。奥の祭壇にはまだ瑞々しい切り花と果実が供えられ、銀の燭台ではロウソクが燃えている。

「火が付いてる。誰かいるのか……?」

 足を止めると、オティアンは両目を細めてジッと辺りを見回した。

「いない。音もしない。ロウソクの溶け具合からして、あれは夕方頃に点されたものだろう。夜明には燃え尽きるだろうから、その頃には誰かここに来るかもしれない」

「じゃあ急がなきゃ」

 オレは神殿の奥に向かって足を速める。ここまで来ると、もう光の方向を見るまでもなかった。前に来た時と同じだから。

 小走りに祭壇の奥へ回り、狭い通路を下りていく。握った命願石の光は刻一刻と強くなり、地底湖に辿り着いた時には、ドーム状の空間全部を照らすくらいに眩しくなっていた。

 その地底湖の手前、虹色に揺らめく光の中に一つ人影があった。

 白いベールを頭から被り、身体にぴったり沿った裾の長いドレスを着ている。レースのベールからはピンクブロンドに輝く長い髪が透けて見えている。

「フィオレラ……?」

 オレがこの世界で一番最初に目にした人物、フィオレラ・ガエターナ・フォルナーラ、大聖女、ヒロイン。その人が百合の花のような優雅さでそこに立っていた。

「あなたが来るのを待っていました」

 鈴を振るような声がする。フィオレラは音も立てずに近寄ってきて、真っ白な細い両手を伸ばし、オレの手を取った。甘く清々しい香りが鼻先をくすぐる。
 近寄ると陶器の人形のような繊細に整った顔をしている。細い金茶の眉、青い目を煙らせる長いまつげ、細くて高い鼻に丸くて小さくてサクランボみたいな唇。

「お、オレ? ルチアーノじゃなくて?」

 その名前を口に出すと、お人形みたいな顔が一瞬寂しそうに歪む。あ、生きてる……この人、ちゃんと人間だ……。

「そう、神が待っていたのはあなたです。異世界からの客人」

 フィオレラの口から飛び出した『異世界』という言葉にオレは飛び上がりそうに驚いた。

「なんで知ってるの!? オレがここじゃない世界から来たって……!」

「私は異世界が何のことかは分からない。でも、神の言葉を聞きました。ファタリタを救うために、遠い世界から一人の若い人間が特別な石を持ってここへ来てくれると」

 マジか。オレって最初から予言されてた勇者だったのか?
 いや、その割に最初から扱い悪かったよな!

 思わず眉を寄せると、フィオレラはなだめるようにオレの手を撫でた。

「それが誰かはまでは分からなかったのです。だからルチアーノに探させた。あなたが石を持っていると分かってからは、彼にあなたを守るようお願いしました」

「ルチアーノのヤツ、全然そんな感じじゃなかったですけど?」

「あなたに、自分がこの世界を救えると気付かれてはいけなかったの」

「どうして?」

「『世界を救って欲しい』という曖昧な望みは叶わないから。神は具体的な願いしか叶えられない。あなたはこの世界を知らない。知らない世界は救えない。だから、ありのままこの国を見て欲しかった。もう私たちには、この国の何が悪いかが分からなくなっているのです……」

 フィオレラは深い溜息をついて、オレの手を引っ張って湖の前に立った。そこには以前はなかった祭壇が組まれ、深く大きい足つきの杯に山盛り一杯滅石が積まれている。何だって叶いそうな石の量だ。

「こんなに沢山……オレたちが集めなくても良かったんじゃん」

「滅石のことですか? これは以前の命願祭から今日までになくなった人の魂。神が眠りから覚めて石を浄化するのは十年に一度の祭りの日だけ。それまではずっと大聖堂の奥で保管されています。沢山揃えばその分、神は力を取り戻す。巡礼に集めさせるのはそのためです」

「ジョヴァンナが、滅石は浄化しなくても使える……使うってのも変な言い方だけど、そのままでも子どもはできるって言ってた。大聖堂はしなくて良い浄化の過程を入れて、命の石を金稼ぎの道具にしてるって。それ、本当?」

 オレの問いに、フィオレラは悲しそうに細い首を項垂れさせた。

「そう……否定はできません。命を巡らせるだけなら、浄化は要らない。でもここには神がいるるのです……」

「どういうことだよ。もうこの際だから全部説明してよ」

 そう頼むと、フィオレラは長くなるから、とオレとオティアンを近くに呼び寄せ、ファタリタの秘密を語り始めた。
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