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8月8日(日)【15】ASJ
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「えっ、あのASJ? もうできてたんだ。いいなあ。わたしも行きたい」
「キヨの家族に誘われたんです。ぼくもエリカさんについてきて欲しいです」
「キヨくんって、耕地くんだよね? わたしも会いたいな。いいのかな。シフト無いし本当にいっちゃうよ」
「いいですよ。キヨの母さんたちはデートしたいでしょうし、キヨをぼくと遊ばせて二人の時間を作りたいから誘われたんだと思います」
ラジオ体操の帰り道。子供のようにウキウキするエリカさんをみて、ぼくは無責任に誘ってしまう。「キヨもエリカさんみたいにきれいな人がきてくれたら嬉しいと思います」と追加しておく。
けっきょく、ぼくの付き添いとしてエリカさんは参加することになった。
彼女との待ち合わせは13時。場所はASJ入口付近の地球儀前。「お邪魔そうであれば一人で楽しむから気にしないで」と遠慮していた。
入場料はエリカさん自身で出す。「彼氏はいないけどお金だけはあるからね」といってぼくのぶんも出すと言われたが、お断りした。
キヨの相手役として間接的にサクさんから指名されたようなものだし、キヨ母の前で気前のいい顔もしたいだろうし、やはりあちらに出していただくのが正解だと思った。
実際、ASJのキャラクターには一つも興味が無かったし、乗り物酔いするので、未知のアトラクションに対しても少し不安だった。ただ子供の礼儀として、キヨのクラスで唯一の友達として、おおげさに「楽しいです」という演技はするつもりでいる。
「ぼくたちはたぶん11時頃にはASJに入ると思うので、13時に入口に迎えにいきますね」
「りょうかーい。あきふみくん、誘ってくれてありがとうね」
エリカさんは、ぼくの頭を両腕で抱きしめた。おっぱいが顔面にあたった。
〇
11時。キヨとキヨ母、サクさん、ぼくの4人はASJに到着。日曜日ということもあり、ものすごい人だ。
行きしなの電車で近所のお姉さんがくることを伝えると、サクさんは「むしろ歓迎」という声色で「オッケイ」と受け入れてくれた。
サクさんはキヨの母よりも若く見えたが、同級生だという。キヨと違ってやさしそうで話も面白かったので、ぼくの警戒心はきゆうにおわった。
人気アトラクションに並んでしまうと待ち時間だけで13時を過ぎてしまいそうだったので、待ち時間の少ない、座ってみるショータイプのアトラクションへ。
大きな身振りと大げさな表現、それに見合うスタントアクションで非日常を味わう。
そのあと、普段の2倍の雰囲気と物価を味わえるレストランで昼食を食べた。
キヨは終始いい子だった。
ぼくはキヨよりもサクさんと話した。
サクさんに「今度一緒に野球観戦にいかないか」と誘われ、おもわず「いきたいです」と言いそうになった。彼はふしぎな魅力をまとっている。キヨが野球を好きになった謎も解明された。
彼との会話中ずっと、キヨ母はまぶたと口角を引っ張りあげて、サクさんとぼくを交互に見つめていた。
みたことのある、世界で一人だけに夢中の目。
12時50分。ぼくとキヨは大人カップルと別れ、地球儀モニュメントの下で待っていた。
ゲートから入ってきた女性が一人、こちらへ小走りで近づいてくる。小走りは早々に歩きへと切り替えられ、こちらに大きく手を振っている。
「ごめん待った?」
「いえ、全然待ってません」
びっくりした。
マスクとサングラスを外すと、化粧をしたエリカさんが顔をだした。人工的な甘い香りがする。
「よかった。おどろいた? これ日焼け対策ね」
むしろこれから日差しが強くなるのではと思ったが、顔が見えるほうがよい。
エリカさんはキヨの顔を見て、ぼくの顔を見る。
キヨは一言もしゃべらない。無理もない。木造アパートにこんなお姉さんが暮らしていることを予想していなかったのだろう。キヨの女子大生風の部屋の方がまだイメージしやすい。
「えっと、こちらが耕地キヨフミ。それで、こちらが小山内エリカさん」
「はじめまして。本日はよろしくお願いいたします」
今日の朝から、キヨはずっといいこだ。
「キヨフミくんでいいのかな? お呼ばれしてないのに勝手にきちゃってごめんなさい。迷惑でなければ、よろしくお願い致します」
「――いえ。全く迷惑じゃないです」
こんなにも子供らしい顔をするんだなと思った。
「それじゃあさっそくいきましょう」といって、エリカさんはぼくとキヨをマニキュアつきの両手に従えた。
「キヨの家族に誘われたんです。ぼくもエリカさんについてきて欲しいです」
「キヨくんって、耕地くんだよね? わたしも会いたいな。いいのかな。シフト無いし本当にいっちゃうよ」
「いいですよ。キヨの母さんたちはデートしたいでしょうし、キヨをぼくと遊ばせて二人の時間を作りたいから誘われたんだと思います」
ラジオ体操の帰り道。子供のようにウキウキするエリカさんをみて、ぼくは無責任に誘ってしまう。「キヨもエリカさんみたいにきれいな人がきてくれたら嬉しいと思います」と追加しておく。
けっきょく、ぼくの付き添いとしてエリカさんは参加することになった。
彼女との待ち合わせは13時。場所はASJ入口付近の地球儀前。「お邪魔そうであれば一人で楽しむから気にしないで」と遠慮していた。
入場料はエリカさん自身で出す。「彼氏はいないけどお金だけはあるからね」といってぼくのぶんも出すと言われたが、お断りした。
キヨの相手役として間接的にサクさんから指名されたようなものだし、キヨ母の前で気前のいい顔もしたいだろうし、やはりあちらに出していただくのが正解だと思った。
実際、ASJのキャラクターには一つも興味が無かったし、乗り物酔いするので、未知のアトラクションに対しても少し不安だった。ただ子供の礼儀として、キヨのクラスで唯一の友達として、おおげさに「楽しいです」という演技はするつもりでいる。
「ぼくたちはたぶん11時頃にはASJに入ると思うので、13時に入口に迎えにいきますね」
「りょうかーい。あきふみくん、誘ってくれてありがとうね」
エリカさんは、ぼくの頭を両腕で抱きしめた。おっぱいが顔面にあたった。
〇
11時。キヨとキヨ母、サクさん、ぼくの4人はASJに到着。日曜日ということもあり、ものすごい人だ。
行きしなの電車で近所のお姉さんがくることを伝えると、サクさんは「むしろ歓迎」という声色で「オッケイ」と受け入れてくれた。
サクさんはキヨの母よりも若く見えたが、同級生だという。キヨと違ってやさしそうで話も面白かったので、ぼくの警戒心はきゆうにおわった。
人気アトラクションに並んでしまうと待ち時間だけで13時を過ぎてしまいそうだったので、待ち時間の少ない、座ってみるショータイプのアトラクションへ。
大きな身振りと大げさな表現、それに見合うスタントアクションで非日常を味わう。
そのあと、普段の2倍の雰囲気と物価を味わえるレストランで昼食を食べた。
キヨは終始いい子だった。
ぼくはキヨよりもサクさんと話した。
サクさんに「今度一緒に野球観戦にいかないか」と誘われ、おもわず「いきたいです」と言いそうになった。彼はふしぎな魅力をまとっている。キヨが野球を好きになった謎も解明された。
彼との会話中ずっと、キヨ母はまぶたと口角を引っ張りあげて、サクさんとぼくを交互に見つめていた。
みたことのある、世界で一人だけに夢中の目。
12時50分。ぼくとキヨは大人カップルと別れ、地球儀モニュメントの下で待っていた。
ゲートから入ってきた女性が一人、こちらへ小走りで近づいてくる。小走りは早々に歩きへと切り替えられ、こちらに大きく手を振っている。
「ごめん待った?」
「いえ、全然待ってません」
びっくりした。
マスクとサングラスを外すと、化粧をしたエリカさんが顔をだした。人工的な甘い香りがする。
「よかった。おどろいた? これ日焼け対策ね」
むしろこれから日差しが強くなるのではと思ったが、顔が見えるほうがよい。
エリカさんはキヨの顔を見て、ぼくの顔を見る。
キヨは一言もしゃべらない。無理もない。木造アパートにこんなお姉さんが暮らしていることを予想していなかったのだろう。キヨの女子大生風の部屋の方がまだイメージしやすい。
「えっと、こちらが耕地キヨフミ。それで、こちらが小山内エリカさん」
「はじめまして。本日はよろしくお願いいたします」
今日の朝から、キヨはずっといいこだ。
「キヨフミくんでいいのかな? お呼ばれしてないのに勝手にきちゃってごめんなさい。迷惑でなければ、よろしくお願い致します」
「――いえ。全く迷惑じゃないです」
こんなにも子供らしい顔をするんだなと思った。
「それじゃあさっそくいきましょう」といって、エリカさんはぼくとキヨをマニキュアつきの両手に従えた。
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