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「そんなにお礼を言わなくても…井口さんが頑張ったからだよ。さっ、今日はもうゆっくり休んで明日に備えて。」

「はい!ありがとうございます!お疲れ様です。」

そうして一人、また一人と部下たちが帰って行く中、私は一人目の前の仕事と戦っていた。

「(終わらない、いや反対に終わるのか…?)」

途中、自販機でココアを買って糖分補給をする。
そして買ってから気づく。そうだ、私は伊澤思っている体格の良い私になる様に努力しようとしたんだった…

「(私はダメだな…決心しても一向にしようとしない。46歳独身でだらしないなんて取り柄が何もないじゃないか…)」

自分で考えて勝手に落ち込む。

「はぁ…今日はもう帰ろう。」

ほどほどに切り上げて、帰路に就く。
帰宅ラッシュでもないが絶妙に込み合っている駅のホーム。改札口のところによく見知った人影を見つける。

「(伊澤だ…何をしているんだろう。)」

退勤後にいきなり上司に話しかけられても困るだろう、でも見守るぐらいはいい…よな?
スラっと投げ出された長い脚はスーツに包まれており、そのスタイルの良さが際立っている。

そこにキレイな女性が駆け寄るのが見える。
2人は親しそうに話して飲み屋街へ行ってしまった。

「(今、私は何を見ていたんだろう…伊澤が…女性と…)」

そう…だよ…28歳という働き盛りであのルックスにスタイル、女性が放っておかないよ…

私は何を夢見ていたんだろう。もしかしたら伊澤も…なんて勝手に想像して舞い上がって、いい歳したオジサンをましてや同性で好む人なんていないじゃないか。

「(今日は飲もう。諦めはできないが、見ているだけでいいんだ、今まで通り接するためにも勝手に勘違いしないようにしないと…)」

そう、好きな気持ちをなくせるなら当の昔にしている。出来ないから数年も拗らせているんだ。こんなだらしない見た目と性格で嫌われたくない、幻滅されたくないとか、勝手に良いように見られていると勘違いして…










「(あぁ、恥ずかしい…)」








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