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苦いのは苦手

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「ふぅ~」

会議までにとりあえずの仕事を片付け、一息つく。

「部長、コーヒーを淹れたのでよかったら…」

「あぁ、頂くよ。ありがとう。」

タイミングよくコーヒーを持ってきてくれる部下にお礼を言って受け取る。

部長たるもの、ブラックが飲めなくてどうする。
自分の中で自問自答するも、苦いものが苦手とはこの年になって言い出せる訳もなく…

静かにブラックコーヒーを啜る。

朝から怒涛の処理に追われ、気づいた時にはもうすぐ会議の時間だ。朝から待ちわびた時間に無意識に頬が上がるのを感じる。

「部長、みんなでお昼に行こうと思っているんですが部長も一緒にどうですか?」

「ありがとう。ちょっと会議の用意があるから今日は遠慮しておくよ。誘ってくれたのにすまない。」

「いえ!お忙しいのにすみません!」

いつものごとく適当な理由をつけて断るランチ。不審がられないように数回に一度程度誘いに乗る様にしているが、今日はどうにも取り繕える気がしない。

みんなと食べるランチは楽しいのだが、最近年のせいか若い者と食べに行くと胃もたれするのだ。加えて、年々増してきたお腹周りが理由だ。スーツでは隠れる様にベストを年中着用しており、ガタイが良い程度にしか見えないだろうがプヨプヨになってしまったお腹はシックスパックの面影もない。

思い人どころか、こんなだらしない体形を見られたら部下にまで幻滅されてしまうかもしれない。しかし、40代にもなって激しい運動は身体に応えるためどうにかヘルシーなご飯を心掛けているところだ。

誰も来ないような会議室や資料室を探しては自炊したお弁当を食べる日々を繰り返しているのに一向にお腹がへっこむ気がしない。




「今日はここにしようか…」





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