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夢見心地

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「うん。」

「いや、そうじゃなくて!やっぱり何もないです。失礼します。」

「はい、ストップ。」

途中から俺何言ってんだって恥ずかしくなって、慌ててその場を去ろうとすると、旬祢さんとつないでる手をまた握られる。

「いいじゃん、今全部吐き出したら。俺しか聞いてないし。変なこと言ったって誰も笑わない。でも言いたくなかったら言わなくてもいい。ただ、一緒にいるだけでいい。」

そう言いながら旬祢さんはゆっくりと俺を引き寄せ、抱きしめる。

待って、ここ廊下…と思ったら人通りの少ない空き教室が並んだ廊下で、誰もいない。

「今は何も考えなくていい。俺だけを見て、ただ俺に抱かれていればいい。」

聞き心地の良い声が耳から身体にスッと入って来る。言われた通り、身を任せて…
旬祢さんはソッと俺の頬に手を添えると上を向かせて…

「…ッン…」

近付いて来たキレイな顔に見とれていると、そのままキスをしていた。

あれ、これ前にもこんな感じのがあった気が…

この空気が甘く、思考が鈍くなる。唇から伝わるほのかに甘い温もり…何でもいいや。

「ンぅ、しゅ、んッ…さぁ…」

開けた口から入って来る舌は、キスを甘い温もりから熱い痺れへと変えていく。

旬祢さんの熱い舌から伝わる痺れは、身体を巡り……


 キーンコーンカーンコーン


「残念、ここまでだな…フッなんだ物足りないのか?」

予鈴の音が鳴り、旬祢さんの熱が離れる。
昂っていた身体が急に寂しくなって、キュッと旬祢さんの服を掴む。

「そんな可愛いことされたら、離せなくなる。」

初めて、旬祢さんの困ったような余裕のない顔を見た気がする。夢見心地のまま、ボーっと旬祢さんの顔を見ていると……

「ほら、教室戻る。それとも、その先をしてほしいか?」

ニヤリとした顔でそう言われて、さっきまでの自分が何をしていたか…ふと冷静になり我に返る。

「なっ、何もしてほしくありません。帰ります。」

早口にそう言って教室へ戻る。

はぁ、あの人といるとどうも流されるんだよなぁ。頭がボーっとするというか、夢見心地になると言うか…
まぁまた次気をつければいいか。







「はぁ~あれは反則。どうしようもなく可愛い。」


栄人の去った廊下に養護教諭の呟きが一つ。



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