上 下
101 / 149

一方その頃

しおりを挟む



あれから何時間たっただろうか。さっき目を覚ました俺は寒い山の中一人で身動きが取れなくなっていた。
単純に足や腕が痛くて動けないのだ。捻ったのか打ち身かは分からないがとにかく無理やり動かして悪化するのも避けたいところ。誰かが助けに来てくれるとこを信じて待つしか…
でも思ったよりもこの時期の山は寒く、この夜を体操服とジャージだけで過ごすのは少し厳しそうだ。…どうしよう。

「ん~…考えてても仕方ないか!物理的に動けないんだし待つしかない!」

楽観的に考えておかないと、最悪の事態を考えてしまって怖くなる。

「…んふ、俺男の子だもんね!だから大丈夫!」

…それより、どうしてあの生徒があんなことをしたのか…それが気になって仕方がない。だって、仮にも進学校と言われる生徒で自分の未来を潰すようなことをするか?バレないと高を括っていても、リスキーだとちょっと考えたら分かるでしょ。何がここまでの行動力の原動力になっているのか…生徒会の妄信的な信者だと言われればそれまでだけど、制裁やいじめにしては度が過ぎるだろ。一歩間違えたら…「死」だったかもしれないのだ。子どものいじめでも制裁でも許されることではない。

関わりがない生徒だが顔は覚えた。実行犯の他に2人いるはずだ。声を聴けば分かるし、犯人捜しは問題ないだろう。俺がこの状況から脱することができればの話だけど。罰則、仕返しの話はなしだ。今は俺がこの状況を過ごすためにどうするかを考えよう。

まぁ、何もせず、考えず、ただジッとしているのが一番体力温存できるだろうけど俺だよ?色々考えちゃうよなぁ。
寒いけど、寝ても大丈夫だよな?ここ雪山じゃないし凍死とかしないよな?

「うん、よし。お休みなさい…」

そうして俺は呑気に昼寝を貪り始めた。










俺が惰眠を貪っているとは知らず大事になりつつある残された側。

「おぉ、来たか。お前たちが一番乗りだ。」

「先生いきなりなんですがメンバーの一人とはぐれました。恐らく崖から何者かに落とされたみたいです。至急捜索を開始してください。必要であればうちの家からも人員を出します。」

呑気にお出迎えをした教師に真顔で詰め寄る会長。緊急事態でなければ中々シュールなのだが…

「それは本当か!?」

内容が内容なだけに、今行っているレクリエーションは中止し、生徒は一か所に集められた。

学園が手配した捜索チームを使って栄人の捜索を開始している。大まかな場所を特定するため会長を含めた四人のみ行動している。会計はあの後、人影の後ろを追って捕獲することに成功している。

「ねぇ、君。ちょっといい~?」

「はい、なんでしょうか?」

追いつかれた生徒は物怖じすることなく堂々と受け答えをする。

「他の班のメンバーはどうしたの?」

「あぁ、はぐれてしまって…」

「そっか…大変だったね。ところでどうしてあんなところにいたの?」

「あんなところ…?がどこかは分かりませんが、迷ってしまって…」

「そっかぁ、じゃあ早く班の人が見つかると良いね~」

大体の学園の生徒を覚えている生徒会メンバーにとって一度見た生徒の顔を覚えること容易いことだ。

話しかけられた生徒は多少の疑いを掛けられていることに気づくかもしれないが、すぐに開放したことで疑いが晴れたと勘違いをして浮かれているだろう。

そこをどん底に落とすのが生徒会の仕事だ。すでに生徒会全体では栄人のことを共有済み。学園側の捜索に時間がかかるようなら、各々の実家の力を借りて捜索する手筈は整っている。






栄人の言葉を借りるなら…さすが王道生徒会と言ったところだろう。





しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

私の事を調べないで!

さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と 桜華の白龍としての姿をもつ 咲夜 バレないように過ごすが 転校生が来てから騒がしくなり みんなが私の事を調べだして… 表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓ https://picrew.me/image_maker/625951

真冬の痛悔

白鳩 唯斗
BL
 闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。  ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。  主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。  むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。

BlueRose

雨衣
BL
学園の人気者が集まる生徒会 しかし、その会計である直紘は前髪が長くメガネをかけており、あまり目立つとは言えない容姿をしていた。 その直紘には色々なウワサがあり…? アンチ王道気味です。 加筆&修正しました。 話思いついたら追加します。

灰かぶり君

渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。 お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。 「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」 「……禿げる」 テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに? ※重複投稿作品※

王道学園なのに、王道じゃない!!

主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。 レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ‪‪.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…

愉快な生活

白鳩 唯斗
BL
王道学園で風紀副委員長を務める主人公のお話。

王道くんと、俺。

葉津緒
BL
偽チャラ男な腐男子の、王道観察物語。 天然タラシな美形腐男子くん(偽チャラ男)が、攻めのふりをしながら『王道転入生総受け生BL』を楽しく観察。 ※あくまでも本人の願望です。 現実では無自覚に周囲を翻弄中♪ BLコメディ 王道/脇役/美形/腐男子/偽チャラ男 start→2010 修正→2018 更新再開→2023

処理中です...