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一方その頃
しおりを挟むあれから何時間たっただろうか。さっき目を覚ました俺は寒い山の中一人で身動きが取れなくなっていた。
単純に足や腕が痛くて動けないのだ。捻ったのか打ち身かは分からないがとにかく無理やり動かして悪化するのも避けたいところ。誰かが助けに来てくれるとこを信じて待つしか…
でも思ったよりもこの時期の山は寒く、この夜を体操服とジャージだけで過ごすのは少し厳しそうだ。…どうしよう。
「ん~…考えてても仕方ないか!物理的に動けないんだし待つしかない!」
楽観的に考えておかないと、最悪の事態を考えてしまって怖くなる。
「…んふ、俺男の子だもんね!だから大丈夫!」
…それより、どうしてあの生徒があんなことをしたのか…それが気になって仕方がない。だって、仮にも進学校と言われる生徒で自分の未来を潰すようなことをするか?バレないと高を括っていても、リスキーだとちょっと考えたら分かるでしょ。何がここまでの行動力の原動力になっているのか…生徒会の妄信的な信者だと言われればそれまでだけど、制裁やいじめにしては度が過ぎるだろ。一歩間違えたら…「死」だったかもしれないのだ。子どものいじめでも制裁でも許されることではない。
関わりがない生徒だが顔は覚えた。実行犯の他に2人いるはずだ。声を聴けば分かるし、犯人捜しは問題ないだろう。俺がこの状況から脱することができればの話だけど。罰則、仕返しの話はなしだ。今は俺がこの状況を過ごすためにどうするかを考えよう。
まぁ、何もせず、考えず、ただジッとしているのが一番体力温存できるだろうけど俺だよ?色々考えちゃうよなぁ。
寒いけど、寝ても大丈夫だよな?ここ雪山じゃないし凍死とかしないよな?
「うん、よし。お休みなさい…」
そうして俺は呑気に昼寝を貪り始めた。
俺が惰眠を貪っているとは知らず大事になりつつある残された側。
「おぉ、来たか。お前たちが一番乗りだ。」
「先生いきなりなんですがメンバーの一人とはぐれました。恐らく崖から何者かに落とされたみたいです。至急捜索を開始してください。必要であればうちの家からも人員を出します。」
呑気にお出迎えをした教師に真顔で詰め寄る会長。緊急事態でなければ中々シュールなのだが…
「それは本当か!?」
内容が内容なだけに、今行っているレクリエーションは中止し、生徒は一か所に集められた。
学園が手配した捜索チームを使って栄人の捜索を開始している。大まかな場所を特定するため会長を含めた四人のみ行動している。会計はあの後、人影の後ろを追って捕獲することに成功している。
「ねぇ、君。ちょっといい~?」
「はい、なんでしょうか?」
追いつかれた生徒は物怖じすることなく堂々と受け答えをする。
「他の班のメンバーはどうしたの?」
「あぁ、はぐれてしまって…」
「そっか…大変だったね。ところでどうしてあんなところにいたの?」
「あんなところ…?がどこかは分かりませんが、迷ってしまって…」
「そっかぁ、じゃあ早く班の人が見つかると良いね~」
大体の学園の生徒を覚えている生徒会メンバーにとって一度見た生徒の顔を覚えること容易いことだ。
話しかけられた生徒は多少の疑いを掛けられていることに気づくかもしれないが、すぐに開放したことで疑いが晴れたと勘違いをして浮かれているだろう。
そこをどん底に落とすのが生徒会の仕事だ。すでに生徒会全体では栄人のことを共有済み。学園側の捜索に時間がかかるようなら、各々の実家の力を借りて捜索する手筈は整っている。
栄人の言葉を借りるなら…さすが王道生徒会と言ったところだろう。
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