【完結】俺は遠慮します。

輝樹先輩サイド

「やり過ぎたか…」

目の前でキレイな顔の眉間にしわを寄せて眠ってしまった栄人を見て先ほどの自分の行動を少し反省する。

稔から連絡が来たときは肝が冷えた。そして、その姿を見つけたとき安堵したと同時に、もしかしたらもう何かされたのでは、とすぐに不安が襲ってきた。でも、本人の知らない所で確認するのも…と思って栄人が起きるまで待ったは良いが…


あまりにも期待したような、あんな熱の籠った目で見られたら俺の理性なんてブチ切れるに決まってる。俺のをいれなかっただけ、頑張った方だ。


それにしても……


「可愛かったな…」

じれったい刺激に、恥じらいながらもその艶やかな黒に涙を浮かべて懇願する様子は思い出すだけで全身の血が沸騰するようだ。

が、寝ている相手にどうこうする趣味はないため身体を綺麗に拭いて整えてやる。

「そういえば、体育祭…」

そう、ちょうど最後の競技が始まるであろう時間だが自分の暴走のせいで栄人はまた夢の世界へ…

「ちょっと悪いことしたか…？」

少しの罪悪感を覚え、頭を撫でる。

　コンッコンッ

「失礼しまーす。」

「何の用だ。」

「ちょっ、委員長～そんなに睨まないでくださいよ。折角の二人の時間を邪魔したのは申し訳ないですけど、言われてたこと調べてきたんですよ？それに、そんなに怖い顔してるとまた皆に怖がられますよ？」

紡のその言葉にフィッと顔を背けてそっぽを向く。

「何拗ねてるんですか。もう…それで言われてたことですけど、確かに該当する生徒が3人います。聴取しますか？」

「いや、今はまだいい。泳がせておけ。」

「ふーん、よっぽど大切なんですねぇ。じゃ、俺は最後の騎馬戦みてきまーす。」

空気を読んだのか退出した紡。ほんと、一言多いがちゃんとするときはちゃんとするから、怒れないし憎めない。

そして、栄人の顔を一撫でしてまた俺もひと眠りすることにする。

次目が覚めたとき、栄人は目をそらさずに話してくれるだろうか。自業自得ではあるが無視でもされたら、相当ヘコむな…