【完結】俺は遠慮します。

体育祭⑶

「最終戦、初め！」

少しの不安が残る中始まった最終戦。やっぱり気のせいではなく、ガッツリ尻を揉まれています。現場からは以上です。…じゃなくて！尻だけじゃなく、たくさんの手が俺の身体にまとわりついてる。

キモチワルイ。気持ち悪いのに胸をかするとビクッとなる自分の身体が憎ましい。

「無理やりはいただけないなぁ。」

爽やかな声が聞こえたと思うと、まとわりついていた手が無くなる。え、何が起きた？そう思って周りを見ると、地面にひれ伏している纏わりついてたであろう男たちと、その実行犯であろう尊の姿が。

なんで、尊？お前、こういうの見るの好きじゃん。それに、そんなヒーローキャラじゃないじゃん。

「やっぱり、気持ちい顔をしてる受けの顔がいいんだよ。俺無理やりは地雷なんだよなぁ。」

珍しく気が立っているような様子で、お礼を言いたいけど話しかけずらい。

人が減ったからか、すぐに棒を引いた俺たちの赤組はそのまま勝利を収めた。
が、俺は初めて見るさっきの尊の様子が頭から離れない。それにまだ助けて貰ったお礼を言えてないし。
ちょっと気分転換に飲み物を買いに行こうと思い、その場にいた徹に声を掛けてから自販機のところまで行く。
すると、自販機の前には尊の姿が。

「み、尊！さっきは、その…ありがとう、な。」

なんか今更律儀にお礼を言うのが照れるというか、さっきの尊を見た後だと、どう接したらいいのか分からなくなったというか…たどたどしくもお礼を伝える。

「あっ！栄人じゃん！全然いいよ～お礼ついでに副会長さんと何があったかもっと詳しく教えてくれたらなぁ、なんて！あの時は旬祢さんのことだけだったしなぁ。」

鼻息荒くそう聞いてくるのはいつも通りの尊。さっき俺が見たのは錯覚か？

「やだよ。ふっ、まぁ気が向いたらな？」

「栄人がそう言うなんて！めっずらしー！心境の変化かにゃ？」

うん、このキモイ絡みはいつもの尊だ。

「ちげぇよ、ほら飲み物買ったしもう行くぞ。」

この日初めて見た友達の姿は、俺の頭に焼き付いている。いつもの性格も、いつもとは違った性格もいつかは両方を気兼ねなく見せてくれたらと思った。