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悠希先輩⑵
しおりを挟む「私の家は見た通り昔からこの旅館の経営をしていました。父も母も仕事で忙しく、その割に周囲の目を気にしてか教育も厳しかったんです。私はこの家ではいつも気が抜けませんでした。良いように見られないと、砕けた感じはダメだと…だから全寮制の入ったんです。兄がいるんですがなんでもできて頭もよくいつも褒められている様に感じてたんです。私は出来が悪いから、居場所がないように感じていました。息が詰まって…もう子供ではないですし、気にしないようにしてたんですけど、栄人君がそう言うなら今でも…気になっているのかもしれませんね。」
いきなり始まった先輩のお家事情。俺が聞いてもいいのか?と思いつつ黙って聞くことに徹する。
でもさっきの先輩のお母さんを見てると周囲の目を気にしてるというよりは…うん、これは俺から言っても意味がないかぁ、自分で気づかないとだよなぁ。忙しかったのは確かだと思うし、それでも教育を厳しくしてたのはそれ以上に先輩のことが大事だったからだと思う。でも、直球にそれを先輩に言っても意味がないんだよなぁ。それとなく気づく様に伝えること、は難しいよな。
「突然こんな話してすいません。でも、なんか栄人君には私のこと知ってもらいたくて…」
いくら血のつながった家族でも、考えてることは言わないと、何も伝わらないし誤解なんて解けない。
「いえ、話してくださってありがとうございます。でも、俺よりちゃんと話すべき人がいると思います!俺はいつでも聞きますから、だから誤解したままで後悔してほしくないのでお節介かもしれませんが、一度話してみてほしいなって思ったんですけど…」
そこまで言ってあっ、っと思った。少しばかり先輩の表情が曇ったから。
「そう、ですね…でも、そう思うのはちょっと難しいかもしれません。」
先輩はそう言って口を閉ざした。
俺に話してくれる時、勇気がいったはず。でも、俺はご両親と話してほしくて突き放す形になってしまったのだから。
「すいません!俺余計なことを…ちょっと出てきます!」
俺はそのまま部屋を出た。逃げたんだ。もう一歩踏み出しても良かったかもしれない。先輩なら聞いてくれたかもしれない。でも、俺は逃げた。深く関わることから、踏み込むことから逃げたんだ。言いたいことだけ言って、中途半端なことして…先輩に謝らないと、でも今はちょっと無理かなぁ。
そう思って足をひたすら動かしていると中庭みたいなところに着いた。
白い石が敷き詰められているそこは川が流れる様な模様が描かれており、日本庭園を彷彿とさせる。月明かりに照らされ、現実ではないような幻想的な空間に焦っていた心が落ち着く。
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